西日本豪雨から3年。当時27人の命が失われた大災害で、わたしたちは多くのことを学んだ。
被災から得た教訓を風化させないよう、愛媛・西予市野村町で語り部活動を始めた市民の取り組みを取材した。

市民が語り部に…見えてきた「避難に関する課題」とは

「語り部018のむら」の古賀テル子さん
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語り部018のむら・古賀テル子さん:
ダムの関係で安心・安全。洪水は起きないであろう。ギリギリまで避難しない方もいました

肱川の氾濫で5人が亡くなった西予市野村町で、豪雨災害の語り部を始めた古賀テル子さん(77)。

聞き手と実際にまちを歩きながら当時の記憶を語り継ぐということで、古賀さんと同じく、語り部のシーバース玲名さんの2人とともに肱川沿いを歩いた。
少しでもリアルに当時の状況を伝えるため、古賀さんたちは、半年間にわたって地域の住民らに聞き取りを行ってきた。
この中から、「避難に関する課題」が浮かび上がってきた。

語り部018のむら・古賀テル子さん:
こちらは野村の町の中心、わたしたちは「四つ角」と呼んでいますが、ちょうどわたしの後ろが佐藤文具店。赤い線まで水が来たので、2階に皆さん避難しました。これを「垂直避難」といいます。まっすぐ上に逃げる、高いところへ逃げること。2階がもし漬かったら、屋根の上に逃げるとか、上に上に逃げていく

当時は上流のダムが緊急放流したため、あっという間に川が氾濫して、住宅地に流れ込み、避難所に行けなかった多くの人が、自宅の2階や屋根の上に避難した。

語り部018のむら・古賀テル子さん:
(高齢の)お母さんを(自宅に)残した方、そういう方たちが避難が遅れました

語り部018のむら・シーバース玲名さん:
建物の中に寝たきりの方がいる場合は、建物の外から出られない方も多いので、垂直避難の判断をされる方も多かったです。

(Q.要支援者がいる場合は、事前に手助けをしてもらえる人を見つけておくことも大切?)
語り部018のむら・シーバース玲名さん:

もしくは、ちょっとでもおかしいなと思ったら早い段階で逃げる

語り部018のむら・古賀テル子さん:
ハザードマップもしっかりできているから、こんな状態だったら逃げようと、家族同士で決めておかないといけない

「連携を強めておけばよかった」の声も…避難者はわずか8%

語り部018のむら・古賀さんの友人

語り部ガイドの途中、古賀さんの友人・井神玲子さんと出会った。
井神さんは、豪雨のあの日、知り合いの1人暮らしの高齢者を助けようと、まず川の近くに住むその人の自宅に向かったという。

井神玲子さん:
その方が逃げたと聞いて、一瞬にして逃げなきゃと思ったので、車まで戻って来て(自宅へ)逃げたけど。バイパス行って、もう1つ大橋を渡る、その大橋を渡る危険までは頭になかったです

井神さんが再び川の近くに差しかかった時には、すでに橋の上にも川の水があふれていて、高齢者を助けるどころか、逆に自分の避難経路が閉ざされる寸前だった。

井神玲子さん:
わたしは介護のケアマネージャーをしているので、高齢者のことが気になりました。自分が関わっている人だけでも連携を強めておけばよかった。それから(高齢者が)逃げたあとに何か印をしてくれていたら、逃げていることがすぐわかった

井神さんの知り合いは、無事 避難所に避難していたが、当日午後3時の時点で、西予市で避難指示が出されていた約1万4000人のうち、実際に避難したのは、わずか8%の854人にとどまる。

県防災危機管理課・岡田文夫課長:
避難指示が災害時に出されても、避難所に避難する人は多くないというのが現状。避難していないのか、もしかしたら自宅も含めて安全な場所に実は避難している実態があるかもしれない

どう呼びかければ避難するのか…アンケートで実態把握

愛媛県は、住民の避難行動の実態を把握しようと、7月から県内22の地区でアンケート調査を始めた。自治体がどう呼びかければ住民が適切に避難するのか分析し、的確な指示につなげるのが狙い。

県防災危機管理課・岡田文夫課長:
(西日本豪雨では)行政からの伝達も十分だったか、多方面でいろんな課題があるので、それぞれの当事者が主体性を持って対処していくことが大事

野村ダム

また、当時緊急放流を行った野村ダムでは、放流情報を通知してから住民が避難するのに十分な時間を確保するため、新たな取り組みを始めた。

肱川ダム統合管理事務所・清水宰所長:
ダムからの情報は、下流などに警報所などサイレンもありますが、雨が降って聞こえにくいというような声も聞いています。西予市の防災行政無線を通じて情報を伝えることが重要

西予市では現在、約7割の世帯が、自宅に防災行政無線の受信機を設置していて、2021年3月から、大雨が降った際にダムの水位や放流情報などをこまめに放送する取り組みを始めた。

肱川ダム統合管理事務所・清水宰所長:
ダムの各段階ごとの情報が的確に住民に伝わって、住民の命を守る行動につなげていっていただきたい

「語り部018のむら」…名前の由来は?

豪雨災害から3年、古賀さんはこう語る。

語り部018のむら・古賀テル子さん:
世間話の中でもいいから、あの時大変だったねって。「もし今度、ああいうことが起きたらどうする?」、「どのようにどこに逃げる?」(という話し合いを)わたしを始め、高齢者や1人暮らしの方も多いので、助け合うってことも必要。どんなことがあっても命を守ってくださいって、わたしたちは、最後は言っています

最後に、ずっと気になっていた語り部グループの名前の由来について聞いた。

語り部018のむら・古賀テル子さん:
あえて(豪雨が)起きた「2018年」から、その「2」を取った。それは、由来を聞いてもらい、2018年の災害、大変だったことをもう1回、何回も思い出してもらおうと

未曽有の豪雨災害が起きた「2018年」を決して忘れない。
その名前に込められた強い思い。

(テレビ愛媛)