7月に入り、学校の水泳の授業も本格化。2020年は新型コロナウイルスの影響で、水泳の授業を中止した学校も多く、2021年は2年ぶりに子どもたちの歓声がプールに響いていることだろう。

ところが今、学校から少しずつプールが消えているという。

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学校から歩いて移動 スポーツクラブで水泳授業

東京・多摩市の北諏訪小学校。校舎から出てきたのは、2年生の子どもたち86人。

これから水泳の授業なのだが、子どもたちは担任の先生と一緒に学校の外へ出ていく。向かった先は、学校から歩いて数分のところにあるビルだった。

子どもたちが水泳の授業を受けていたのは、近くのスポーツクラブ。北諏訪小学校では、2021年から水泳の授業を外部委託しているという。

86人の子どもたちは9つのグループに分かれ、それぞれのレベルに応じて丁寧な指導を受けていた。

スポーツクラブは水泳を教えるプロ。そのプロのノウハウと設備を活用するので、授業の内容が充実しており、子供たちの表情も生き生きとしている。

生徒:
いっぱい友達と話して、潜ったりして楽しい。

生徒:
できないこととかを色々教えてくれるし。苦手だったけど、ここに来てから好きになりました。

北諏訪小学校 木下雅雄校長:
見学者の数が、去年までに比べ5分の1以下に減りました。暑さとか寒さの心理的な負担が減って、子どもたちが楽しく良い表情になったと思います。

天候・維持費・先生の負担軽減

なぜ今、水泳の授業の外部委託が増えているのか?理由は3つある。

1つ目は「熱中症とゲリラ雷雨」

近年、夏は猛烈な暑さに襲われる日も多く、水泳の授業でも熱中症のリスクがある。日陰のないプールサイドでは紫外線も強烈。

さらに、ゲリラ豪雨やゲリラ雷雨が頻発するとなると水泳の授業を中止せざるを得ず、なかなか授業時間を確保できない。

これらの問題に対して、水泳の授業を外部委託をすると、暑さや天候に左右されない屋内のプールを利用できるため、授業時間をしっかり確保できるという。

2つ目の理由は「プールにかかるお金」

今回、取材した多摩市によると、プールを維持・管理する費用は、水道代を含めて1年間1校あたり約150万円。一方、外部委託をすると費用は約300万円と倍かかる。

しかし、プールが老朽化などした場合の改修費や修繕費などを考えると、外部委託をしても採算が取れるという。
取材した別の自治体の担当者は「プールはとにかくお金がかかる」と話していた。

そして、3つ目の理由は「先生の負担軽減」

先生は毎日すごく忙しいとされているが、その中でも水泳の授業は子どもたちの安全が関わってくるため、どんな授業よりも気を使うという。

さらに、プールの管理や水質・水位チェックも毎日しなければならない。こういう面も含めると、水泳の授業というのは先生の負担がとても大きいという。

これらの理由から、水泳の授業の外部委託というのが増えているという。

全国の約7000校でプールが消えている

フジテレビ社会部 平松秀敏デスク:
取材した多摩市では、2021年は試しに3校だけ外部委託を進めているんですが、3年後をめどに全26小学校すべてに拡大させていきたいという狙いがあるんです。

フジテレビ社会部 平松秀敏デスク:
一方で、この流れが今始まったことかというと、実はそんなことないんですよ。例えば、神奈川・海老名市は10年前から市内19校、すべての小中学校でプールを廃止して、水泳の授業を校外での授業に切り替えたといいます。

フジテレビ社会部 平松秀敏デスク:
お金がすごくかかるからということなんですが、この「プールの廃止」。維持・管理費の問題に加えて、少子化に伴う学校の統廃合が進んでいることも影響しているというんです。

どれくらい消えているのか?データによると、1996年度は約2万8000校が小中学校にプールがあったんですが、2018年度は約2万1000校まで減っているんです。つまり、7000校も全国で学校からプールが消えているということですね。

フジテレビ社会部 平松秀敏デスク:
このプールの廃止や水泳授業の外部委託の流れについて、専門家の意見を聞いてきました。鳴門教育大学の松井敦典教授によると、「プールが維持できないのであれば外部委託も仕方がない。しかし、学校が教えるべきプール教育というのは、命に関わる安全教育。自分の身を守るという教育なので、それならば国はしっかりと外部委託向けの指針を示してほしい」という。

加藤綾子キャスター:
このプールとかスポーツだけではなく、他の授業とかも専門分野の方が来てくれるっていうのはいいことなのではないでしょうか?

元大阪府知事 橋下徹氏:
絶対にやるべきです。これはお金の話になるんですけれども、プールの維持管理費は約150万かかるとなっていましたが、先生の負担や人件費を考えれば、外部委託してもほとんど替わらないくらいの費用でできるでしょうから、これは文科省がしっかりお金をつけてあげてほしいですね。

(「イット!」7月12日放送分より)