年を重ねて「最近、体力の衰えを感じるようになった」と思っている人はいるだろう。

実際、SNSなどでは「身体が急に衰える」「ほんとに身体のがたが来る」などの投稿もあり、特に“25歳で体力衰え”を実感したというコメントが多いのだ。

なお“免疫力”は、20代をピークに低下することが分かっている。大塚製薬株式会社によると、免疫細胞の一種であり、ウイルス感染細胞やがん細胞を破壊する役割を担っているNK細胞の活性が低下するためだという。

データ:現代科学;1984;164,40-45(提供:大塚製薬)
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「免疫力が20代をピークに低下」ということであれば、もしかしたら「25歳で体力が衰える」ことにも関係があるのだろうか? そもそも「免疫力」とは何なのか?

 大塚製薬の研究員に話を聞いた。

加齢に伴い衰えるというのは、当てはまると思いますが…

ーーそもそも、免疫力はどういう存在?

専門書の一つ 医系免疫学改訂15版には、「免疫は、微生物の感染防御・異物の無害化と除去・他の個体の細胞の拒絶・変異細胞、老廃組織の除去などにかかわっている。」と記載されています。

免疫力とは細菌・ウイルスなどの病原体やがんから体を守る防御能力のことを言います。目に見えない細菌やウイルスが多数存在し、これらが体内に入ってくることで風邪などの感染症にかかり、体調が悪くなると考えられています。

つまり、病原体やがん細胞などの異物から体を守る仕組みが「免疫」です。目や鼻、喉、腸といった粘膜組織、そして体内でも免疫システムが24時間働き、病原体による感染やがん細胞の増殖を防いでいるということです。

提供:大塚製薬

ーーなぜ20代をピークに免疫力は低下する?

NK細胞活性が低下したり、免疫細胞の教育機関である胸腺が加齢とともに萎縮して新しい免疫細胞の供給が減少したりなど複数要因があります。


ーー免疫力低下には、他にも原因がある?

現代人の生活では、免疫の仕組みが正しく働かない要因が増えています。例えば、睡眠不足です。日本人の平均睡眠時間は減少傾向にあります。睡眠の乱れによって体に活性酸素が過剰に増加。活性酸素が、がん細胞の増殖など悪い影響を引き起こすと考えられているのです。

また、ストレスや食事の偏りも、免疫力を低下させます。

さらに、生活環境でも免疫を低下させる要因が急増しています。パソコンやネット環境の発達で座り仕事が多くなり、運動不足、血液やリンパの流れを悪化させ、免疫細胞の機能低下に繋がると考えられます。

(画像はイメージ)

ーー「25歳を超えると◯◯」と関係ある?

加齢に伴い衰えるというのは、当てはまると思いますが、一律に25歳から急に体力が落ちるということは無いと思われます。

低下が始まる年齢やその低下する早さも個人差があるためです。なぜそう言われているかについてはわからないのですが、おそらく、免疫細胞の教育器官である胸腺が加齢とともに萎縮するあるいは、NK細胞活性が(20代をピークに)30代以降で低下するなどの研究結果を基に言われていると想像します。

日常の心がけで免疫力アップ

ーーでは、免疫力の低下で体にはどんな変化がある?

例えば風邪をひきやすくなり、風邪をひいた場合に治りにくいなどです。

免疫力低下で風邪が引きやすくなることも(画像はイメージ)

ーー低下を防ぐ方法はある?

完全に防ぐことはできないと思われますが、その低下の程度を緩慢にすることは可能と考えます。適度な運動、笑い、体を温める、楽観的思考、バランスの取れた適度な栄養、睡眠、休養など、日常のちょっとした心がけで、免疫力を高められるかもしれません。


また、大塚製薬によると、免疫力を低下させる要素、低下しているサインがあるそうだ。免疫力チェック項目が複数該当する人は何らかの免疫力アップ対策を始める事が必要だ。

【免疫力のチェック】
・お腹や手足が冷えている、低体温だ
・野菜や果物はあまり食べない
・日常的に激しい運動をする(アスリート)
・妊娠している
・慢性的な睡眠不足
・座り仕事が多く、運動不足
・ダイエット中で、食事を減らしている
・栄養過多、バランスが悪い食事
・喫煙している
・大きなストレスや悲しみをずっと抱えている
・生活リズムが乱れている
・毎年、風邪をひきやすい
・便秘や下痢をすることが多い
・口内炎口唇ヘルペスがよく出る
・笑う機会が少ない
・口や目が乾く

ライフスタイルの変化が影響

「免疫力」の低下が直接の原因ではないようだが、「25歳で感じる体力の衰え」を感じる人が多いのはなぜなのだろうか? 早稲田大学スポーツ科学学術院の川上泰雄教授に話を聞いた。

ーー「25歳」を超えると体力の低下を感じるのはなぜ?

体力には、筋力・持久性・免疫などの「身体的要素」、意欲・ストレスに対する抵抗力などの「精神的要素」があります。しかし、いまどきは「社会的要素」なども考えるべきかもしれません。

例えば、体格も体力のひとつです。25歳くらいになると、高校・大学卒業後など仕事が安定して、慣れてくる人が多いでしょう。大学時代に運動をしていたり、痩せていたりしていても、25歳くらいになると体型が変わり出す人もいるでしょう。生活パターンが変わり栄養過多になると脂肪も増えるなど、こうしたことが「動くのがしんどい」「面倒くさい」といった実感とリンクするのだと思います。

体力は、生活習慣の変化や、成熟後生じる加齢によって変化します。この変化は体力の要素によってタイミングも変化速度も様々です。「体力」には力強さ、粘り強さ、しなやかさもあり、多面的です。なので、25歳という単純な区切りで体力低下を考えるには個人差も大きいです。

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ーー体力低下を防ぐ方法はある?

生活習慣の見直しに尽きます。


ーー体力低下をチェックする方法を教えて

体力として何を見るかによります。例えば筋力であれば、椅子の座り立ちをできるだけ速く10回やるときの時間である程度評価できるでしょう。

【椅子の座り立ちテスト評価】※出典:福永哲夫・東京大学研究室/貯筋運動プロジェクト
・女性(25〜29歳)
〜7秒:速い
8〜9秒:普通
10〜秒:遅い

・男性(25〜29歳)
〜6秒:速い
7〜9秒:普通
10〜秒:遅い

他には、歩く速度にも気がつかないうちに足の運びが小さく、遅くなっていくといった筋力の程度がよく反映されます。


また、川上教授は「コロナ禍で運動の機会が一層減っていると思います。それが、体力の衰えの『実感』を間違いなく加速させているでしょう。これは極めて深刻だと私は思っています」とコロナによる体力の低下を心配している。これを機に、自身の生活習慣の見直しをしてほしい。

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