コロナ禍で支えあうシングルマザーたちに注目する。

長野県が「ひとり親世帯」への新型コロナウイルスの影響を調査したところ、半数近い47.6%は月収が10万円未満だった。割合は「コロナ前」の2倍以上に増えた。「無収入」も1割に達し、家計の悪化が如実に表れている。

そうした中、夜の飲食店を営むシングルマザーの経営者が新たな挑戦を始めた。
苦境が続く中、同じ境遇の従業員を守ろうと、ワッフル店の経営に乗り出した。

スタッフ10人が辞めた…コロナ禍の“夜の店”の苦悩

生地を型に流し込んで、焼くこと3分。ワッフルが焼き上がった。
チョコレートをつけたら、カラフルにトッピングする。

かわいいワッフルの完成
かわいいワッフルの完成
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高校生:
かわいいです、インスタ映え

諏訪地域で営業を始めたワッフルの移動販売店。始めたのは、いわゆるガールズバーなど夜の営業をメインとする店を営んできた田口絵美里さん(34)。

T&Jグループ代表・田口絵美里さん:
(他の店の)営業がだいぶ厳しくなってきているので、自分たちの方から外に出向いていく職種をやってみたいということでして

ワッフルの販売は、夜の営業の落ち込みを挽回するだけでなく、自身と同じ「シングルマザー」の雇用を守ることにもつながると、田口さんは信じて奮闘している。

諏訪市末広のガールズバー「JERRY」。
新型コロナの影響で、店内は閑散としている。

諏訪市末広のガールズバー「JERRY」
諏訪市末広のガールズバー「JERRY」

T&Jグループ代表・田口絵美里さん:
(売り上げはコロナ前の)3分の1から半減に近いと思います

田口さんは、市内でガールズバーなど8店舗を経営してきた。
しかし、昨年来のコロナ禍で苦境が続き、女性スタッフを中心に10人程が離れていった。

T&Jグループ代表・田口絵美里さん:
本当は辞めないで続けてほしいけれど、彼女たちも家庭や生活がありますから。昼に転職する子がいたり…。やっぱり切ないですね

田口さんが抱える女性スタッフはシングルマザーが多く、小林紅葉さんもその1人。3歳の娘がいる。

小林紅葉さん:
とにかく収入が減っちゃうので、そこが一番。生活が成り立たなくなっちゃうので

所得の落ち込んだひとり親世帯に支給される、子ども1人につき5万円の「臨時特別給付金」。小林さんも受給し、助けられたという。

小林紅葉さん:
受けてはいますね、給付金みたいなやつ。(娘の)服とか。すぐ大きくなっちゃうので、すごく助かります

娘のために、従業員のために「今が踏ん張り時」

辞めていったスタッフ、店にとどまったスタッフ。
田口さんは両方の心情がよくわかる。
田口さんも2歳の娘を育てるシングルマザー。夜は母親に預けて仕事をしてきた。

T&Jグループ代表・田口絵美里さん:
めちゃくちゃかわいいですよ。大変な毎日を頑張らせてもらえる存在かなって、かけがえないですよね

店の売り上げ減少で田口さんの収入も大幅に減り、出費を抑える生活が続いている。

T&Jグループ代表・田口絵美里さん:
自分が代表なので、去年の半年くらいは給料をもらっていなかったと思いますし、今は(コロナ前の)半分くらいだと思います、毎月

娘のために、そして従業員のために。田口さんは新たな展開を模索してきた。

T&Jグループ代表・田口絵美里さん:
ここで負けていたら(娘を)18歳まで育てられなくなっちゃうので、今が踏ん張り時ですよね

娘のために、従業員のために
娘のために、従業員のために

“夢を運ぶ”ユニコーンワッフルの移動販売を開始

状況を打開するため5月から始めたのが、キッチンカーを使ったワッフルの移動販売。

T&Jグループ代表・田口絵美里さん:
今までいろいろ飲食店やっているんですけど、スイーツって挑戦したことがなくて。自分も子どもいますので、明るく楽しいことができたらいいなっていうのがきっかけですね

JR上諏訪駅近くの駐車場などにキッチンカーを置き、ユニコーンの角のような形から「ユニコーンワッフル」と名付けて販売している(税込み500円)。

ユニコーンの角の形
ユニコーンの角の形

T&Jグループ代表・田口絵美里さん:
ユニコーンって名前を付けたんですけど、「夢を運ぶ」って言われている生き物なんですよね。今、コロナでみんな沈んだ気持ちになると思うけど、明るくなっていただけたらなと

高校生:
これください

小林紅葉さん:
学割やってるので、400円です

この日は、ガールズバーで働く小林さんもワッフルの販売に回った。

小林紅葉さん:
(ガールズバーが)休業になったりすることがあるので、(働かせてもらって)とても助かっていますね

T&Jグループ代表・田口絵美里さん:
店に出せるスタッフの人数を削減しなきゃいけない部分もありまして、こっちの方を手伝ってもらったりして、収入につなげていけたらなっていう気持ちですね

営業は不定期だが、カラフルな見た目が若い女性たちに人気で、多いときでは1日50本が売れたこともあったという。

カラフルなワッフルがSNSで“映える”
カラフルなワッフルがSNSで“映える”

専門学校生:
なんか、原宿!みたいな(笑)

高校生:
おいしいです。周りがイチゴチョコで中がワッフル

コロナ禍を乗り切ろうと踏ん張る飲食業界。
諏訪には、シングルマザーたちの支え合いがあった。

小林紅葉さん:
(仕事で)なかなか娘と長い時間そばにいてあげられなかったりするので、そういうのを(田口さんに)よく相談しますね。心の支えになってもらっているので、心強いです

T&Jグループ代表・田口絵美里さん:
頼るところがない子がわりかし多い業種かなと思いますので、母親代わりになってあげられることだったりとか、悩みや相談っていうのは、常に聞くようにしている。
みんな、寝る間も惜しんで働いているくらい、シングルの子たちは頑張っていると思いますので、私で力になれること、一緒になって頑張っていけることを、協力できたらと思います

(長野放送)

長野放送
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