自然界には姿形を周囲の環境に溶け込ませることで、外敵から身を守る生き物もいる。そんな擬態力の高すぎる生き物が撮影され、注目を集めている。

凄すぎる…!!
間近で見ても枝片にしか見えない。
そして顔がめっちゃ可愛い

このコメントともに、動画を投稿したのはTwitterユーザーのmaru(@tuna_suma)さん。指に何かの“物体”が乗っている様子で、これだけだとそこら辺にある木の枝にしか見えない。

木の枝にしか見えないが…(提供:maruさん)
木の枝にしか見えないが…(提供:maruさん)
この記事の画像(6枚)

しかし、maruさんが指を動かしても指先にくっついたまま。そして、よくみると小さな足が…。そう、これは物体ではなく生きている昆虫なのだ。

驚くべきはその擬態っぷり。色彩は木の枝そのものだし、表面にはヒビや節のようなものも見られる。その一方でよく見るとつぶらな瞳で、愛らしい外見もしているではないか。

実はつぶらな瞳の昆虫。それにしても大人しい(提供:maruさん)
実はつぶらな瞳の昆虫。それにしても大人しい(提供:maruさん)

投稿のリプライ欄では「すごい!そしてカワイイ」「初めて見ました!マジで擬態が凄いですね!」などと驚きの反応が寄せられ、いいねも1万7000以上集めている。(7月2日現在)

この昆虫は「ツマキシャチホコ」(チョウ目シャチホコガ科)という、ガの一種。maruさんによると、動画は東京・小平市で撮影したもので、大人しく指に止まっていたという。

そして、気になるのがその生態だろう。チョウ類・ガ類の学術団体である「日本鱗翅学会」に聞いた。

餌となる木の近くで見つかることが多い

ーーツマキシャチホコはどんな昆虫?

幼虫の時は、ブナ科のミズナラ、コナラ、クヌギ、カシワ、アベマキ、クリなどを食べます。成虫は開張(羽を広げた左右の大きさ)で雄が50~60ミリ、雌が62ミリ程度です。

頭部先端(触角は含みません)から腹部腹端までの長さは、雄雌ともに20ミリ~25ミリ程度ですが、個体差や計測時の腹部の環節の伸び方で異なるので、目安としてお考え下さい。本種の正確な寿命はわかりませんが、一般的な昆虫の成虫の寿命は2週間から1カ月程度と言われています。


ーー主な生息地と出現場所を教えて。

上記した植物の生育する、平地から標高1000mくらいまでの山地に生息しています。国内では、北海道、本州、四国、九州、対馬に分布します。食樹であるクリやコナラなどを含む落葉広葉樹林で発見されることが多いと思います。

餌となる木の近くで見つかるという(画像はイメージ)
餌となる木の近くで見つかるという(画像はイメージ)

ーー名前の由来はどこから来ている?

前翅頂端部の黄色紋が目立つことが由来です。「つま」には端という意味があります。その「つま」が黄色であること、すなわち「つまき」であるシャチホコガという意味です。

赤丸で囲んだ部分が「ツマキシャチホコ」の由来(画像はmaruさんの提供画像を加工したもの)
赤丸で囲んだ部分が「ツマキシャチホコ」の由来(画像はmaruさんの提供画像を加工したもの)

擬態は鳥などから種を存続するためか

ーー枝に擬態しているのはなぜ?

なぜかは誰もわかりません。現行の動物が今の姿形であることは、たとえばダーウィンの自然淘汰説は有名ですが、いわゆる進化論は諸説あり結論は出ていません。


ーー可能性として考えられる要因はある?

結果的に環境に同化している色や形の種が、鳥などの外敵に発見されにくいので、種を存続してきたという考え方がわかりやすいかと思います。


ーー動画では大人しいが、これは普通のこと?

昆虫類は変温動物なので、行動の活発さは気温に左右されること、加えてツマキシャチホコに代表されるいわゆる夜行性の蛾類は、一定の明るさの条件や暗くなってからの経過時間などで活性が変化します。ツマキシャチホコなどのシャチホコガ科の種は、夜遅くなってから電灯などの明かりに飛来することが多いことが知られています。

夜は外灯の周りを飛ぶこともあるという(画像はイメージ)
夜は外灯の周りを飛ぶこともあるという(画像はイメージ)

幼虫の頃は普通の毛虫

ーー環境で色や模様は変わったりはする?

色調は変化することがあります。濃くなったり、薄くなったりで、蛹(さなぎ)の期間に低温にさらされると濃色になることがあります。斑紋(模様)は大きく変わりません。


ーー幼虫の時はどんな姿形をしているの?

ネットで検索すれば、いくつも画像が出てくると思いますが、いわゆる毛虫です。


ーーこうした昆虫と、植物を見分けるポイントは?

一度認識すれば、見分けることができます(知らなければ、認識できないということです)。知識があれば、あとは識別能力の問題です。


擬態の理由は昆虫自身にしかわからないとのことだったが、その生態は興味深い。あなたの近くにも、このような擬態した生き物がいるかもしれない。

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プライムオンライン編集部
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