生活情報ファイル。今回は「サステイナブルフード」。
国連が掲げる持続可能な開発目標SDGsを機に、耳にすることが増えてきたサステイナブルという言葉。今、食生活の分野でも注目されている。

建設会社が食品開発?

最初は海藻を使ったバター。中に練り込まれた海藻が、いま サステイナブルと話題になっている。

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開発したのは、宮城・南三陸町の「阿部伊組」。まるで建設会社のような社名だが…

梅島三環子 アナウンサー:
建設会社がバターを作ったということなんですか?

阿部伊組取締役 阿部将己さん:
はい。そうなんです

梅島三環子 アナウンサー:
なんでですか!?

阿部伊組取締役 阿部将己さん:
ずっと南三陸町で土木工事を中心にやっていたんですけれども、震災の復旧工事も終えて、今後、新しい事業を展開していかなきゃいけないというところで着手しました

建設会社が行う食品開発とは?その秘密は海岸近くの、この施設にあった。

阿部伊組取締役 阿部将己さん:
こちらが、今私たちが取り組んでいる海藻マツモを育てている「陸上養殖」の施設になります。海水を目の前の海から組み上げて、その中で育てることができています

通常は岩場で育つ海藻の「マツモ」を陸上で養殖。海岸近くという立地と、建設のノウハウを生かしている。

阿部伊組取締役 阿部将己さん:
環境が今、変化しておりまして、海水温が高くなっています。それで収穫量が減っているという現状があるんですね。ただこの陸上養殖によって、海水温をコントロールできますので、年間通して安定的に海藻が作れるというところが、サステイナビリティのひとつになっているかなと思っています

さらにもうひとつ、重要なポイント。

阿部伊組取締役 阿部将己さん:
海の仕事になりますと、肉体労働で体力がないと難しい仕事が多いですが、例えば、障害を持った方でも高齢者の方でも、簡単に海藻を触ることができますので、多くの人が簡単に水産物を作れるっていうところをひとつ目指しています

梅島三環子 アナウンサー:
そしたら雇用も増えるかもしれないですね

阿部伊組取締役 阿部将己さん:
三陸のひとつの産業になればいいなと思っています

自然にも地域にも優しい、まさにサステイナブルを目指して開発された「海藻バター」。どんな味なのか、試食させていただいた。

梅島三環子 アナウンサー:
ほんのり磯の香りがしますね。バターのうま味を引き立てているような感じもしますよね

阿部伊組取締役 阿部将己さん:
後半、海藻まつもの上品な磯の香りが来るような、そんなフレーバーのバターになっています。香りを設計するのが非常に苦労したところです

梅島三環子 アナウンサー:
バターって設計するんですね

現在は品切れ状態の「海藻バター」。今後は、水槽の数を増やすなど事業拡大を目指しているそう。

水産資源の保護を目指した「ツナ」

続いてのサステイナブルフードは、宮城・塩釜市で作られている。
水産会社「阿部亀商店」が製造するツナは、「水産資源の保護」を目指した商品。

阿部亀商店専務 阿部健さん:
宮城県の気仙沼産の一本釣りにこだわったビンナガマグロを使用してまして、資源を一網打尽にしないということで、水産資源の管理に貢献する食品ですね

漁獲されたマグロは冷凍せず、新鮮なまま加工。塩以外の調味料や添加物は、一切使用していない。
おすすめの食べ方はサラダ。素材の味を楽しむため、オリーブオイルのみをかけて、いただく。

梅島三環子 アナウンサー:
いただきます。食べごたえがあるツナですね。これかなり!魚の味が濃いというか、脂がのっていますよね

阿部亀商店専務 阿部健さん:
一度も冷凍していないことで、魚本来の味が出せると思います。高タンパクで低脂質なので、とてもおすすめです

サラダ以外にも、ツナの味を生かしたパスタや和え物などアレンジは多彩。

阿部亀商店専務 阿部健さん:
実はいま、養殖のギンザケを使った製品も製造開始するところで、今年の秋には本格的な販売が開始されるので、ラインナップを作っていけたらいいなと思っています

梅島三環子 アナウンサー:
ここで加工することで、三陸の魚のおいしさを、そのまま出せるんでしょうかね

阿部亀商店専務 阿部健さん:
そうですね。世界各地いろんなところで楽しんでいただきたいなと思います

「食のサステイナブル」専門家が分析

さまざまな動きが見られる、サステイナブルな取り組み。専門家はどう見ている?
海洋生物の持続可能な漁業に詳しい、東北大学の片山教授に聞いた。

まずは、マツモの海藻バター。

東北大学 片山知史 教授:
マツモと言われても、私たち普段なかなか食べる機会がないものだと思います。そういうものを、ちょっと姿を変えて生態系の一部を利用していくという意味で、非常にサステイナブルだというふうに思います

続いて、ツナは?

東北大学 片山知史 教授:
鮮度であるとか、良いところを使うということで評価されて付加価値がついて、そして収益性が上がっていくというふうに期待できます

そして、片山教授はこうした動きが地域に与える影響を評価する。

東北大学 片山知史 教授:
地元の産品を地元の人たちが、少しずつ作って評価を高めていくと、経済にも地域社会にも良い影響を与える。まさに持続的な基幹産業ということで、期待できるというふうに思っています

(仙台放送)

仙台放送
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