がん患者の実情を漫画で発信

日本人の死因として最も多い「がん」。
最近では、猛威を振るう新型コロナによるがん検診の受診控えが深刻な課題となっている。
自らの闘病体験をもとに、アニメでその重要性を全国に発信しようと取り組んでいる男性がいる。

病院を舞台に、ユニークな動物が数多く登場する漫画「キャンサーパンサー」。
主人公のクロヒョウが、がんを患いながらも病気に対する理解を深め、闘病生活を送る様子が日記のように描かれている。

がんの闘病体験が描かれた「キャンサーパンサー」
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この漫画を手がけたのは、富山・魚津市に住むミヤサカカズヒデさん(53)だ。

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん

クリエイターユニット「The BERICH」として地元を拠点に活動し、これまで多くのアニメ作品を制作してきた。

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん:
僕が動物占いでクロヒョウなので、パンサーです。これは僕です。がんになったから漫画を描こうと思ったんです

ミヤサカさんの実体験をつづった漫画「キャンサーパンサー」

実はこの漫画は、2020年8月に口腔(こうくう)がんが発覚したミヤサカさんの実体験をつづったものだった。

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん:
落ちこむのは一番楽、人間って。「ダメだ」と言っていればいいだけだから。でも、それって面白くない

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん:
そうしたら、どうジタバタしようかなと思う。俺は、運がいいことにクリエイティブなことをしてきたから、これをネタにすればいいと思って。医者側から描いた漫画やドラマはたくさんあるが、患者側の漫画はない。「これや」と思ってしまった

がん患者の実情を発信しようと、2020年の夏以降にSNSに投稿した漫画は、これまでに100話以上。
がんという深刻なテーマを扱いつつも、内容はコメディを得意とするミヤサカさんならではの視点で、コミカルに描かれている。

漫画「キャンサーパンサー」

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん:
最初の病院でPET検査があって、がん細胞がどこに集まっているかを調べる。注射を打つ先生から「この薬は10万円する」と言われて。いくら払うんだろう、俺3万ぐらいしか持ってねえなと思っていたら、「保険効きますけどね」って。なんじゃそりゃと思うやん。お金はそんなにかからないということも知った

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん

手術は無事成功も…不安の日々

2021年4月、ミヤサカさんは大学の附属病院を訪れていた。口腔がんの手術から半年がたち、その経過をみるためだ。

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん:
(体の)コンディションは、すごくいい。最初にがんと診断された時も、コンディションは良かった。コンディションが悪くないまま、がんと言われたからビビる

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん

当時、5年生存率は50%から70%と宣告されたミヤサカさん。2020年10月に、あご周りの細胞と骨を取り除き、代わりに右脚の腓骨(ひこつ)を移植する手術を行った。
手術は無事に成功したものの、左あごから鎖骨にかけて現在もまひが残っている。

手術は無事成功

医師:
口をいーってしてみて。どう?

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん:
まだ若干つっぱっているというか、動かない感じはある

医師:
下に引っ張る力が弱いよね

がんは、完治と言われるまでに少なくとも術後5年を要する病だ。再発や転移がないか、定期的に病院に通い、検査を受け続ける必要がある。

医師:
経過はいいと思います

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん:
それだけで安心しました

ミヤサカさんは、この日の心境を後日、漫画の中でつづっていた。

転移や再発の怖さは、日に日に増すばかり

漫画「キャンサーパンサー」

これって手術が過去になればなるほど恐怖倍増するのかな?

漫画「キャンサーパンサー」

受診率アップへ…全国でのテレビ放送目指す

がん患者としての経験をより多くの人に広めることはできないか。
ミヤサカさんは、これまでに描き上げた漫画をもとに、アニメの制作に乗り出していた。

「キャンサーパンサー」のアニメを制作

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん:
なかなか、いいがに(よく)できてるやん

制作するアニメは、全部で13本。1話ごとにテーマを決め、医師の監修のもと、がんに対する正しい知識を盛り込むことにした。
目指すのは、全国でのテレビ放送。そして、がん検診の受診率アップだ。

がんをテーマにしたアニメの制作は、がんと闘い社会復帰を果たしたミヤサカさんが、クリエイターとして生きていくための希望でもある。

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん:
ちょうど年齢に合ったものを手に入れたような感じがする。一番共感性を持てるのではないかと思った。テーマはがんで、自分が患ったのもがんだけど、自分の仕事としては、すごく前向きにしか考えられない

The BERICH・ミヤサカカズヒデさん:
漫画にして発信して、アニメにしてクラファン(クラウドファンディング)して、みんなに認知してもらおうと。そういう道筋ができた

この「キャンサーパンサープロジェクト」は、全国のテレビ局での放送に向け、クラウドファンディングを始めている(「GoodMorning」にて7月7日まで)。
がんを知り、予防し、健康に生きるための取り組みに支援の輪が広がることを期待したい。

(富山テレビ)