2021年5月末、教員による生徒へのわいせつ行為をなくすための新しい法律が、可決・成立した。
鹿児島県内でも2021年、教員が生徒を盗撮する事案も発生しているが、この法律でこうした事案が防げるのか。

処分歴・処分理由をデータベース化

まず新しい法律の内容をみてみる。
これまでは、わいせつ行為などで懲戒免職となっても、3年経てば免許の再交付が受けられるため、過去の行為を隠して再び同じような行為が繰り返されるケースがあった。 

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今回できた法律は、こうした教員に免許を再交付するかどうかの判断を、各都道府県の教育委員会に与えるとしている。

また処分歴についても、氏名や処分理由をデータベース化して、各自治体が共有できるよう新たに定められた。
処分歴については、本人からの申告がなくてもデータベースで全国の市町村がすぐわかるようになる。

ーーこれで、教員によるわいせつ行為がなくなるとみていいのでしょうか?

鹿児島テレビ・教育担当 野平美奈子記者:
そうとは言えない部分もあります

性犯罪が専門の志學館大学・淵脇千寿保准教授はこのように話した。 

刑法や性犯罪が専門 志學館大学・淵脇千寿保准教授:
あくまで再犯者に対する免許の採用の不許可しかできない。つまり、初犯者に対しては防げない

指導の一環でわいせつ行為…「やめて」と言えない

さらに淵脇准教授は、教員と子どもという関係性に問題の根深さを指摘する。

刑法や性犯罪が専門 志學館大学・淵脇千寿保准教授:
地位的に優位である教員たちが行う行為に対して、子どもたちは疑問を抱きづらい。
「自分のやっていることはフレンドリーな指導なんだ」と勘違いして、エスカレートした結果、性暴力に至ってしまう。
子どもは、「先生が言ってきたから、いい反応をしないと」と思って、多少嫌でも受け入れてしまう。そこの認知のズレですね

なかなか表面化しづらい現実が周りに実際にあるよう。
鹿児島市内で話を聞いた。

20代女性:
男女別のプールの実習のときに、女子の監督が必ず男性の先生で、指導の一環として触ってきたりすることが多かった。誰も「やめて」と言えなかったので我慢していた

20代女性:
友達が部活の顧問の先生と一緒に出かけたり、個人的に誘われたりした。(当時は)誰にも言えなくて、ずっと悩んでいた。ハグをされたと聞いた

10代女性:
授業中に、女子のスカートの中の写真を撮っていた先生がいた。生徒が気付いて問題になったが、学校内で解決してしまって、そのあと何事もなかったように働いていたことがあった

メールでのやりとり禁止など対策作り

鹿児島県教育委員会が把握している、過去5年間の教員によるわいせつ事案をまとめた。
2017年度、「女性の身体を触る」で懲戒免職。
そして「女性のスカートの中を盗撮」で停職6カ月。
2019年度は「公然わいせつ」で懲戒免職。
2020年度には「児童買春や児童ポルノなど」で懲戒免職となり、裁判で有罪判決を受けている。
2021年2月には、教員が「女子生徒のスカートの中を盗撮」し懲戒免職となっている。

ーーこうした事案が繰り返されないために、学校現場ではどんな対策がなされているんでしょうか?

鹿児島テレビ・教育担当 野平美奈子記者:
他県の教育委員会では、教員に対して、直接子どもたちとメールでのやりとりを禁止したり、個人のスマートフォンを児童生徒の活動場所に持っていかないとするガイドラインを定めたりと、ここ数年で新たなルールを作ったところもある

一方、鹿児島県教育委員会では、新たな法律を踏まえて具体的な方針を今後示したいとしている。

「性犯罪は魂の殺人」

専門家は改めて、性犯罪を未然に防ぐことの重要性を強調する。

刑法や性犯罪が専門 志學館大学・淵脇千寿保准教授:
性犯罪は、起こってからの対処では遅い。「魂の殺人」ともいわれていますからね。
特に子どもに対する性犯罪・性暴力は、人格形成に大きな影響を及ぼす。学校内で周りの先生方が、雰囲気などを機敏に察知して、(教員に対して)声をかけることによって、性犯罪の予防にもつながる。教員のメンタルケアなどを考えることで、子どもたちを守ることにもつながる

性被害というのは、人を長く苦しめ続けるということを忘れてはいけない。
鹿児島市にある性暴力被害者サポートネットワークかごしま「FLOWER」に寄せられた相談件数は、2020年度は535件で、この数は5年間で3倍になっている。

「FLOWER」の相談窓口は、県や警察、それに病院とも提携していて、専用ダイヤル099-239-8787、相談は無料となっている。
1人で悩まず、寄り添ってくれる場所があることも知っていてほしい。

(鹿児島テレビ)

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