菅首相掲げる1日100万回接種も実現可能、“郡山モデル”を加藤官房長官に提言

「感染防止の切り札」として全国でのワクチン接種の加速に懸命となっている菅政権。ワクチンの供給に一定のメドが立ち、目下の課題はいかに接種回数を全国で伸ばしていくかだ。ただ、大都市圏では自衛隊が運営する大規模接種センターが本格始動したものの、菅首相が掲げる“高齢者接種の7月末まで完了”や“全国1日100万回接種”といった目標の達成は依然不透明だ。

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こうした中、5月28日午後、首相官邸に現れたのは自民党の根本匠元厚労相だ。根本氏は、地元である福島県・郡山市におけるワクチン接種体制を“郡山モデル”と称し、全国のモデルケースになりうるとして加藤官房長官に提言したのだ。提言を受け取った加藤長官は「モデル的な取り組み、非常に大事だ」と応じ、接種が順調に進んでいる好事例を全国に横展開することが接種数を増やしていく上でも必要だとの認識を示したという。

根本匠元厚労相・5月28日

「司令塔」と「6人の実行チーム」の連携でワクチン迅速接種

では、その郡山モデルとはどのようなものか。郡山モデルでは、市内の各診療所・医院から「医師1人、看護師3人、事務2人」の6人のワンチームを、集団接種会場へ当番制で派遣する。そして会場では、それぞれのポジションでの作業時間を厳密に決めたマニュアルのもと、1人30分以内(経過観察含めて)で接種を終了させていく。さらにこの経験を、それぞれの診療所・医院における個別接種にも反映させるという二段構えで、集団と個別の両方の接種現場で円滑な接種を実現させているという。

ポイントは接種の現場における受付から予診、接種、経過観察といった一連の「オペレーション」をいかにスムーズに循環させられるかという部分に注力した結果として実現した体制ということだ。

また、保健所長を明確な司令塔として定めたうえで、県や市の医師会長、あるいは現場担当の病院長といった各責任者が緊密に連携しバックアップすることで、様々なシチュエーションへの迅速な対応が可能としている。根本氏は「地域の医療資源を最大限どう活用するかという観点でいうところの指令塔、バックアップ体制の構築。これが大事だ」と述べている。

このモデルを駆使して、人口約33万人の中核都市である郡山市は、ワクチン接種券配布当初こそ予約が殺到し電話がつながりにくい状態が生じたものの、現在は比較的順調に接種が進んでいて、1日平均4000回(集団接種1000回、個別接種3000回)のワクチン接種が可能な体制を整えているという。そして根本氏は、この1日4000回という接種回数について、「全国ベースに引き延ばせば(1日)160万回だ」と述べ、仮に全国の自治体が“郡山モデル”と同じペースで接種を行えば、菅首相が目標に掲げた“全国1日100万回接種”も優に実現できると強調した。

さらに郡山市では、高齢者接種を終えた後の一般接種も見据え、学校の夏季休暇を利用し、小中高校で教職員や生徒(現状16歳以上)も含めた一般への集団接種を検討しているという。

“郡山モデル”普及のカギは自治体と医師会の絆の深さ

では、この郡山モデルを全国に広げていくにはどうすればよいか。根本氏は、スムーズな接種に重要なのは地域ごとの「知恵と工夫」、そして医療従事者をはじめとする接種関係者の「使命感と絆」であると強調していて、この「絆」の1つに“各自治体と地元医師会との連携”がある。

開業医を中心とした地元医師会との連携の重要さは、これまでも全国で接種を迅速化していく重要な要素として多くの場面で指摘されてきた。事実、総務省や厚労省、そして日本医師会がそれぞれの自治体や地元医師会へ連携を呼びかける通知を出している。

しかし一方で、「開業医の中には、まだまだコロナと関わりたくないと思っている人が少なくない。そこを説得できるほど自治体と信頼関係が築けていないのが現状」(自民党厚労族)と、自治体と医師会の間の溝の深さを指摘する声も挙がる。

それだけに根本氏が「うち(郡山市)は連携が非常にいい」と述べる通り郡山市では医師会の“全員参加型の理念”のもとでの体制がとれていることが大きく、郡山モデルに広げるには、各自治体と地元医師会の緊密な連携による医療従事者のワクチン行政への積極的な参画が鍵になると言えそうだ。

自治体と医師会における日ごろの付き合いの良し悪しで、“郡山モデル”が実現できるできない、国民の命に関わるワクチン行政が進む進まない、などということがあってはならないことは当然である。改めて国民目線の行動を求めたい。

(フジテレビ政治部 福井慶仁)