「今でも門くぐると気が引き締まる」…父から受け継いだ国宝・犬山城の桜の管理
愛知県の桜の名所・犬山城に、20年以上そのソメイヨシノを守り続ける50歳の庭師がいる。急逝した父に代わり、国宝の庭の管理を任されたこの男性は、父の遺志を受け継ぎ、美しい桜を守り続けている。
3月中旬の犬山城。本丸のソメイヨシノに登り作業をする庭師は、佐橋克伯さん（50）。花が咲く前に最後の手入れを始めた。木の表面の割れから菌が入り、桜が病気にならないよう丁寧にコケを取り除いていく。
大正時代まで、本丸には桜ではなく松が植わっていた。そこに、戦後、約30本のソメイヨシノが植えられ、昭和の中ごろからその桜の管理を任されたのが、佐橋さんの父だった。
佐橋さん:
仕事に対しては妥協を許さない人で、とにかく植物、木と会話をしろと
佐橋さんの父親は、主に日本庭園を手がけていて、佐橋さんは大学卒業と同時に教えを乞うた。ところが60歳で急逝。弟子入りしてからわずか5年後のことだった。
26歳で家業を受け継いだ佐橋さんは、父の教えと大学で学んだ庭園デザインを元に、がむしゃらに24年間走り続け、今では文化財の庭も手がけるまでに。
中でも、犬山城の桜は父から受け継いだ大切な仕事だ。佐橋さんは「父も愛した犬山城の門をくぐると気が引き締まる」と話す。
できる限り長生きできるよう老木を手入れ…ソメイヨシノと重なる60歳で他界した父の姿
佐橋さんが最も手をかけているのが、鉄門を潜った所にある、推定樹齢60年以上の老木だ。ソメイヨシノの寿命は、60～80年といわれている。この老木は城内でもっとも大きく人目につくが、至るところに傷みが見られ、その分手入れにも時間が掛かりる。
佐橋さんは限られた養分が生きている芽に行き渡るように、枯れてしまった芽を次々に剪定していく。使命は木を美しい状態で長く保つこと。一つ一つの芽を見極める。
佐橋さん:
老木なので、どうしても毎年枯れていく枝があるので。いたわりながら…、でも頑張って生きていますね
環境次第では60年で枯れてしまうソメイヨシノ。重なるのは60歳で他界した父の姿だ。佐橋さんは「人間で言うなら寿命間近なので、できる限り長生きを」と老木を労わる。
犬山城の桜に魅せられたカメラマン「今年こそベストショットを」
親子二代で守り続ける桜。その美しさに魅せられた人がいた。犬山で生まれ育ったプロのカメラマン、大島隆義さんだ。
地元のシンボル犬山城に魅せられ、年間10回以上通い、四季折々の風景を収めてきた。中でも好きな季節が桜の時季。
プロカメラマンの大島隆義さん:
去年（2020年）はコロナで入れなかった。ネットで桜の状況を見ていたんですけど、指をくわえながら…
2020年は桜がちょうど見頃を迎えた頃、新型コロナ感染拡大防止のため犬山城は閉鎖され、関係者以外の立ち入りは禁止に。佐橋さんが手塩にかけた桜を見ることができなかった。
庭師イチオシのスポットは「犬山城を借景に咲き誇るソメイヨシノの老木」
桜の管理をする佐橋さんに、イチオシのビュースポットを教えてもらった。
佐橋さん:
一番のポジション。日本最古の犬山城と老木の味が美しい塩梅
犬山城を借景に咲き誇るソメイヨシノの老木。佐橋さんは、「犬山城と年老いてもなお見事に花を咲かせる桜。この2つの宝を見に来てほしい」と話す。
（東海テレビ）
