「子どもを産み育てやすい国だと思うか」と問われ、日本では約6割の人が「そう思わない」と回答―。内閣府が5年ごとに実施している少子化社会に関する国際意識調査の結果は子ども子育て政策に力を入れる政府にとってショッキングなものだった。幼保無償化、男性の育児休暇推進、不妊治療の保険適用、そして待機児童解消と、政府が様々な子ども子育て支援政策を打ち出しているにも関わらず、なぜ日本は子どもを産み育てにくいのか。その背景を探った。

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日本人の6割「子どもを産み育てやすい国だと思わない」

少子化は日本だけでなく、先進国の共通課題だ。内閣府は少子化の背景を分析するために5年おきに国際意識調査を実施してきており、2020年度は日本、フランス、ドイツ、スウェーデンの4か国の20歳から49歳を対象に調査を行った。

少子化が世界の共通課題と述べたが、実は今回の調査対象であるスウェーデンやフランスは合計特殊出生率が一時1.5台まで落ち込んだにも関わらず、2000年代後半までに2.0まで改善している。そんなスウェーデンとフランスでは今回の調査で「子どもを産み育てやすい国だと思うか」という項目に対して、それぞれ97%(スウェーデン)、82%(フランス)が「そう思う」と回答した。

一方で、日本においては「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」は38.3%と圧倒的に低く、子どもを産み育てやすいと「思わない」人が約6割に上る結果となった。

保育以外の子育て支援ニーズの高まり

依然として少子化が深刻な日本と、改善を見せる諸外国との差は一体何なのか。スウェーデンなどと比べ、日本が大きく後れをとっているのが、「地域が子育てに協力的で、社会全体が子育てに理解があるか」と「経済的負担の少なさ」という点だ。

近年の日本では、「地域での子育て支援」のニーズは、女性の就業率上昇による共働き世帯の増加に伴い高まっているのだが、政府はこれまで待機児童解消など保育所の整備の方に力を入れてきた面がある。そのため、保育所や学童保育の数が増えてきたのに対し、幼稚園での延長保育や地域子育て支援拠点事業(子育て広場)、病児保育など、地域の子育て支援サービスの供給は、ニーズに追い付いていない部分が大きい。

先の国際意識調査で、「日本は子どもを産み育てやすい国だと思う」と答えた人にその理由を尋ねた回答(複数回答)を見ても、「各種の保育サービスが充実しているから」と答えた人は2015年に27.1%だったのが2020年には37.9%と増えている。しかし「地域で子育てを助けてもらえるから」と答えた人は13.7%から5.5%に減少、「子供を育てることに社会全体がやさしく理解があるから」と答えた人は11.4%から8.6%に減少と、元々低い数字がさらに低下しているのだ。

こうした子育て世代のニーズと政府の施策の間のずれについて、内閣府関係者は「日本人は5年前の調査時と比べて、共働き家庭が増えたことで夫婦どちらか以外の助けが必要になってきた。そんな中で地域や親の育児協力を得られず、自分たちだけで育てなければならないと思うようになってきている」と話す。そして「女性の就業率はそろそろ頭打ちで、待機児童解消のメドも立ったので、今後は保育以外の子育て支援を充実させ、子育て世帯に知ってもらう取り組みに力を入れる」と語った。

この地域での子育て支援に力を入れている自治体の例としては、民間の調査で、共働きで子育てしやすい街ランキング1位になった千葉県の松戸市がある。松戸市では、自治体独自に「子育てアプリ」を活用し、予防接種のスケジュールアラートや、地域のイベント情報などのコミュニケーションツールとして、子育て世帯に情報発信を行っている。

日本の少子化予算は少なすぎる

そして、先の国際調査の中でも深刻さが露わになっているのが、子育て世帯が感じる「経済的負担」だ。日本が子供を産み育てやすい国だと答えた人に聞いたその理由について「子育ての経済的負担が少ないから」と答えた人は4.8%にすぎず、5年前の6.6%よりも減少している。スウェーデンの19.2%、フランスの9.0%と比べても余りに寂しい数字だ。「教育費の支援、軽減があるから」と答えた人こそ、幼児教育無償化スタートの効果か39.0%と5年前より約10ポイント増加しドイツに肩を並べたが、スウェーデンの84.1%、フランスの51.1%には及ばない。

経済的負担の軽減策として大きいのはやはり児童手当などの給付だ。海外の子どもへの手当を見てみると、フランスは子ども2人以上の家庭に対して20歳未満まで手当が支給され続ける。またスウェーデンではなんと子ども1人目から5人目まで子どもの数が増えるほど段階的に加算されていく仕組みになっている。しかし、日本の児童手当の支給は中学生までで金額も低く、多子世帯への加算もない。

これについて内閣府関係者は「世帯所得と子どもの数の関係は顕著だ。中・低所得者の多子世帯への児童手当の充実が必要」と話す。この通常国会で審議中の子ども子育て法案にも、子どもの数に応じた児童手当の効果的な支給の「検討」が盛り込まれているが、具体化はまだ先になりそうだ。

そしてこの法案の柱の1つが、待機児童解消の財源を確保するため、児童手当の高所得者向けの特例給付を廃止することだが、海外を見るとドイツやスウェーデンに所得制限はなく、フランスやイギリスは所得によって手当の減額があるが、今回の法案のような所得制限で支給ゼロにする措置はないようだ。

こうした日本の児童手当の貧弱さの根本には、少子化対策・子育て支援予算自体の少なさがある。少子化が改善されている国は、少子化対策予算が十分に確保されているから児童手当も充実しているということだ。

日本の少子化対策予算については、2度にわたる消費税の増税によって拡張が試みられたが、その効果は子育て世代には十分届いておらず、かえって増税の経済的負担を感じている可能性もこの調査では浮き彫りになっている。

内閣府関係者も「消費増税までして、少子化対策予算を拡大したにも関わらず、出生数が上がらず、子育てしやすいとも感じられない日本の状況は極めて深刻だ子育て世代のニーズに合った的を外さない施策が必要」と今後の方針を語る。今国会では児童手当の特例給付廃止という手当縮小の方向に舵が切られているが、今後は子どもの数に応じた児童手当の増額など、手当をより充実させる方向への転換が望まれる。

コロナで待ったなしの少子化 歯止めをかける本気の対策を

コロナ禍の今、日本の少子化対策はまさに待ったなしの状況にある。世界各国でもコロナで少子化が加速しているが、日本でも2021年1月の出生数はなんと前年同月比で約1万人も減っており、政府内でも少子化の深刻さに「いまどうにかしないと取り返しがつかないことになる」という声が聞かれる。

政府は、今回の調査を真摯に受け止め、諸外国の対策に学びながら少子化の流れを反転させ、5年後の調査で多くの子育て世代に「日本は子どもを産み育てやすい」と答えてもらえるような改革を行っていけるかどうかが、まさに今問われている。

(フジテレビ政治部・池田百花)