地産地消の取り組み

小売りの大手が続々と食の分野への戦略を強化。無印良品の横浜市の店舗で、その狙いを取材した。

売り場面積5000平方メートルを超え、テニスコート20面分の広い店内には、おなじみの無印良品の商品がゆったりと並べられている。

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今回リニューアルされた「無印良品 港南台バーズ」(横浜市)が特に力を入れたのが"食"。関東初となる新業態、大型の食品専門売り場をスタートする。

無印良品・港南台バーズ 三品正洋店長:
こちらに展開している商品は、港南台の地元の農家からご出品いただいているものです。店舗から車で10分くらいの農家で、朝採れた野菜をそのまま納品していただいています

カレーなどのレトルトや冷凍食品が注目を集める無印良品だが、店内には地元・神奈川県の農家などから仕入れた新鮮なニンジンや葉物野菜、地元の港で水揚げされた魚などが並び、地産地消に取り組んでいる。

キッチンカウンターからライブ配信

また店内にオープンキッチンを併設し、生産者、管理栄養士など食のプロが実際の食材を使って料理の様子をライブ配信する無印良品初のサービスもスタート。

配信は毎日、インスタグラムや専用アプリで行う予定で、新型コロナウイルスの影響で増加する"おうちごはん"を提案し、来店につなげたい狙いだ。

無印良品では2020年9月から半年間の売り上げで、衣類や生活雑貨が伸び悩む中、食品は大幅に増加した。今後も食の分野を広げていく考えだという。

無印良品・港南台バーズ 三品店長:
食は生活の真ん中にあるものであると…毎日ご利用いただける店を目指しているので、食品が大きく広がっている。今後はスーパーマーケットの催事でクロスオーバーのような商品の売り込みなどもどんどんやっていきたい

IKEAは初の"量り売り"

食に力を入れる動きはほかの小売りでも。家具大手「IKEA」がスタートするのは、日本のIKEAで初めての総菜などの量り売り。

サーモンのマリネやラザニアなど、8つのメニューを自分に合った量で購入することができる。

ほかにもドリンクやベーカリーの販売も行うが、全てテイクアウトのみの提供。コロナで高まる持ち帰り需要を意識したという。

小売りで相次ぐ食分野の拡大。巣ごもり消費を意識した戦略は追い風となるのだろうか?

胃袋争奪戦が激化

三田友梨佳キャスター:
マーケティングアナリストの渡辺広明さんに聞きます。小売り大手が続々と食の分野に力を入れているようですが、この動きどうご覧になりますか?

マーケティングアナリスト・渡辺広明氏:
コロナ禍の小売業は販売する商品の垣根がなくなりつつあります。衣食住のうち、食に関するものは買い上げ頻度が週に2~3回と多くて、衝動買いも誘引しやすいので従来食を扱っていないような小売業も力を入れ始めています。例えば、ドラッグストアはすでに食品売り上げ構成比が50%を超えているチェーン店が複数ありますし、ネットスーパーはネット通販大手とスーパーが協業して宅配を始めたり、先ほどのIKEA、ニトリの家具店が中食や外食に参入するなど、胃袋の争奪戦が激しく厳しくレッドオーシャンの市場環境になっています

三田キャスター:
無印良品などは特に力を入れている印象ですね?

渡辺広明氏:
無印良品は国内の売り上げの食品の構成比率が今は16%なんですが、2030年に向け30%という高い目標を掲げているので新しいチャレンジを行っているんですね。カレーなどのレトルト商品やお菓子はすでに人気がありますが、ローソンの一部の店舗で食品売り場を拡大して実験検証をしていたり、今回の港南台の店舗のように地産地消だったり、キッチンカウンターで食品アドバイザーや栄養管理士のカウンセリング、ライブ配信など新しい取り組みを次から次へとスタートしています

三田キャスター:
チャレンジの一方で課題はどんなことがありますか?

渡辺広明氏:
青果と肉はクイーンズ伊勢丹、鮮魚は中島水産という小売業と組んで苦手分野を克服する売り場作りをしています。無印良品はローソンを含めて小売業の他社と協業することに活路を見出していますが、パートナー企業に無印の良さや世界観を理解してもらって新しいシナジーを生み出さない限りは、築き上げたブランドの価値を失う諸刃の剣になってしまう可能性もあります。無印は、「自然と」「無名で」「シンプルに」「地球大」というコンセプトがありますが、その世界観を持った新しい総合スーパーがどう進化していくのか楽しみでもあります

三田キャスター:
コロナ禍をどう戦うか、そしてこういった戦略がどう支持されるのか今後の動向が注目されます

(「Live News α」5月13日放送分)