長引くコロナ禍で休業する店舗も現れているが、そんな中で空き店舗や営業時間外の店舗と、店を開きたい人をマッチングするサービスの利用者が増えているという。

出典:プレスリリース
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株式会社ムジャキフーズは、使っていない店舗を有効活用したい人と、店を持ちたい人を繋ぐマッチングサイト「店タク(てんたく)」を昨年12月にスタート。4月30日に、この登録者が1000人を超えたと発表したのだ。

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「店タク」では、流行りのゴーストレストランをやりたい人や趣味で作っているアクセサリーを売りたい人など「店をやりたい人」を「店カツさん」と呼び、逆に休業状態や営業時間外の店舗・ガレージなどの場を提供したい「店を託したい人」を「店タクさん」として、両者を引き合わせるWebサービスを展開している。

そして5月13日時点の登録者数は、「店カツさん」が1140人、「店タクさん」が146人となった。

出典:公式サイト
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利用方法は、サイト上で店カツさん(店をやりたい人)が、希望に合う店タクさん(店を託したい人)を探し、貸し借りの条件や日程をメッセージで送るなどしてすり合わせ、双方が同意すれば、簡易同意書を作って開店のはこびとなる。

そして公式サイトにはなんと「最短明日オープン」と書かれており、今のところ実例はないが十分実現可能だという。

気になる物件の使用料などは店を貸す側が決めることになるが、このサービス自体は仲介手数料もなく借りる側も貸す側も完全無料で使うことができるという。また、店舗をゼロから作るわけではなく業務委託契約になるため、例えば飲食店に必要な「食品衛生責任者」「防火管理者」などの資格は貸す側の店主が持っていればOKになる場合もあるそうだ。

逆に、一般的な不動産取引で交わされる「賃貸借契約」は推奨しないと、公式サイトに明記している。

コロナ禍で苦戦する店側、新たな収入源探しやチャレンジをしたい人の双方に魅力的なサービスに思えるが、それにしても手数料ゼロでいったいどうやって利益を出しているのだろうか?
またコロナ禍の営業は大変だと思うが、すでにマッチングもしているのだろうか? 運営しているムジャキフーズの担当者に聞いてみた。
 

無料だから、いろんな人が集まりチャンスが生まれる

――「店タク」をはじめたきっかけは?

きっかけは弊社が飲食業を行っていることからの発想です。活用できていない場所と眠っている腕がコラボレーションして新たな店舗(価値)が生まれると考えました。

一般的な開業方式として思い浮かべる個人やFCでの開業ではなく、「業務委託」であればもっとスムーズに開業を実現できると考え、それにより地域や業界が活性化することにもつながると考えたことがきっかけです。

店を開きたい人の夢を絶やさないようにしたい、また閉店などの変化は決して悪いことではなく「一つの選択肢」であり卑屈になる事は無いということも伝えたいと考えております。


――仲介料も手数料も無料となると、どうやって利益を出しているの?

企業としての本体事業がありますので、今はサイトの利用は無料にしています。将来的には会員制にしたり、また他社様に広告を掲載していただけるようになればと考えております。

今は無料にすることでどんな状況の人であってもコミュニティに集まりやすくなり、その活かし方を見出すチャンスを得やすくなります。まずはコミュニティという「公園」や「町」のような場を運営して、そこに集まりやすくする事が必要と考えました。


――利用者はどんな人が多い?

カテゴリー別の登録者をそれぞれランキング付けしますと下記の通りです。

店カツ(店をやりたい人)希望業種ランキング
1位 飲食・カフェ・バー:65%
2位 美容・サロン:13%
3位 小売:15%
4位 スクール・セミナー:4%
5位 健康・ヨガ:3%

店タク(店を託したい人)希望業種ランキング
1位 飲食・カフェ・バー:61%
2位 美容・サロン:28%
3位 小売:6%
4位 スクール・セミナー:4%
5位 健康・ヨガ:1%


――では、店舗と借主の間にトラブルが起きたらどうなる?

「店タク」はマッチングの場を提供しており、その両者の間にムジャキフーズは介入しません

トラブルにならないことを前提としてご案内し理解頂いておりますが、店舗開業の経験がない方、場所を利用してもらう側も少ない知識の方に対しては、弊社が蓄積している業務委託契約での最低限の契約アドバイスはお問い合わせの都度対応させて頂いております。


――賃貸借契約を推奨しないのはなぜ?

賃貸借契約は権利の主張を基にあらゆるトラブルを想定して締結されるのでガチガチの約定になっており、それが時には良いコラボを進めるための障害になることもあると考えております「店タク」は人と人との優しいつながりを目的とし、互いにトラブルを起こさない努力をする関係として広めたいので簡易的な同意書で進めています。


――これからの「店タク」の展望は?

「すみませんで済めば警察はいらない」じゃなくて「すみませんで済む」ような関係を「店タク」の中でたくさん作れることを目指しています。
 

なお「店タク」で生まれたマッチング数は、報告システムがないため正確には分からないとしながらも、担当者はこれまでに数十人いるのではと推測していた。

またコロナ禍に始まったサービスだが、店を開きたい登録者も今年2月頃からは平均して1日に10人ほどいるとのことだ。テレワークで自由な時間が増えた人や副業を探している人は、一度検討してみても良いかもしれない。
 

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。