菅首相ニューズウイークUS版の表紙に

菅首相がニューズウイークUS版の表紙を飾った。そのタイトルは「アメリカの筆頭同盟国に 日本は中国の影の中でアメリカと特別な関係を築く」というものだ。

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この破格の扱いは、米バイデン大統領が就任後初の対面での首脳会談の相手に菅首相を選んだことが大きなきっかけとなった。米大統領が数ある同盟国の中で真っ先に日本の首相を選び会談に臨んだことは、強固な日米同盟を世界に発信する大きなメッセージになることは言うまでもない。また東、南シナ海で中国が海洋進出を強める厳しい地域情勢を受けて世界の中で日本、そして菅首相が果たすべき役割の大きさを表しているとも言える。

直近では安倍前首相も

ニューズウイークはUS版以外に、日本語版、かつてはパシフィック版があり、日米外交筋によると、いずれも日本の首相が表紙を飾った例があるが、US版の表紙を日本の首相が飾ることは異例だという。このため今回はUS版に絞り、表紙を飾った歴代の日本の首相を見ていきたい。

やはり、と思う方も多いかもしれない。直近でニューズウイークUS版の表紙を飾っていたのは安倍前首相だ。ただ実はこれは、2006年の第1次安倍政権発足直前のものだ。

そのタイトルは「ワイルドカード」。「アジアはどれだけ安倍晋三を心配すべきだろうか」というメッセージも添えられている。ワイルドカードには“何をするかわからない人物“という意味が込められ、小泉元首相からバトンを引きついだ安倍氏の動向を図りかねていた当初の空気感が読み取れる。その後、安倍前首相は日本語版やパシフィック版で複数回表紙を飾っている。

1980年には大平正芳元首相

この安倍前首相よりも前にUS版の表紙になったとみられる例は、1980年に遡る。

表紙を飾ったのは大平正芳元首相だ。1980年6月のタイトルは「誰が日本を主導する?」大平氏が衆院選挙中に首相在任のまま死去したことを受けたものだ。

1977年には福田赳夫元首相

そしてその大平元首相の前に表紙を飾ったのが、福田赳夫元首相だ。
この時の表紙のタイトルは「日本の転換」。

1977年1月に現職首相として掲載された。従前の首相とは違い、東南アジア外交を重視する「福田ドクトリン」の発表や日中平和友好条約の調印などにみられるように、「全方位外交」に舵を切ったことをクローズアップしたものと思われる。

日中平和友好条約の調印・1978年 批准書を交換し抱き合う福田赳夫氏と鄧小平氏

今回、菅首相が現職の首相としてUS版ニューズウイークの表紙を飾ったのは、この福田首相以来実に44年ぶりとみられる。

田中角栄元首相は2度表紙に

一方、US版で2度表紙を飾った元首相もいる。それが田中角栄元首相だ。

1972年(昭和47年)「日本の新たな顔」

田中元首相は1972年に当時戦後最年少で首相に就任した際に加え、首相退任後の1976年8月には、ロッキード事件で逮捕されたことを受け、「日本のウォーターゲート事件」というタイトルで表紙を飾っている。

1972年 日中国交正常化に関する共同声明に署名する田中角栄元首相

こうしてみると世界が注目する“時の顔”として日本の首相が表紙を飾っていることを伺わせる。

日本の政府高官は米バイデン新政権の初の対面での会談相手に菅首相が選ばれたことや来月には日本の首相としては7年ぶりとなるアジア安全保障会議(シンガポール)にメインスピーカーとして呼ばれ基調講演を行うことが予定されていることなどを踏まえ「実は外交の世界で菅首相はスター的存在だ」と話す。

その菅首相は上記のアジア安全保障会議のほかにイギリスで来月に開催されるG7=主要7カ国首脳会議にも出席予定で、対面での本格外交をスタートさせる。

一方内政面では、菅首相はうかうかしていられない。感染者増に伴う新型コロナ対策に追われ報道各社の世論調査では支持率が低迷し、総選挙で国民の審判がくだされる日も刻一刻と迫っている。

解散・総選挙を巡っては“表紙の先輩“である安倍前首相が今月5日に出演したBSフジのプライムニュースで「総裁選挙は去年やったばかりで、1年後にまた総裁を代えるのか、これはやはり自民党員としては常識をもって考えるべきだ、当然、菅総理が継続して総理の職を続けられるべきだろうと思う」と菅首相の再選を支持する考えを表明した。

菅首相はこれまでデジタル庁の創設や不妊治療の保険適用、携帯料金の引き下げ、公立小学校の35人学級、後期高齢者(年収220万円以上)の医療費窓口負担の2割への引き上げ、福島第一原発から出る処理水の海洋放出決定など前政権から積み残されてきた政策課題も進めてきた。しかしながら新型コロナ対策への評価は低迷し、国民からの十分な支持が得られていないのも事実だ。

世界の顔としてデビューした菅首相は日本の顔として一層の存在感を発揮できるのか。正念場を迎えている。

(フジテレビ政治部 千田淳一)