宮城県内の技術者が、プロ野球12球団本拠地の外野フェンスの模型を設計。この模型から、ある野球の楽しさが見えてきた。

プロ12球団の外野フェンス一括比較できる模型が完成

2021年12月。宮城県村田町のプラスエンジニアリング仙台事業所。作業機器用カスタムパーツなどの精密機械部品を作っている。この会社の入社3年目、岡崎克也さん(25)が模型を作った。

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記者:
これは何ですか?

岡崎克也さん:
これはプロ野球12球場の外野フェンスを忠実に再現したものになっています。各球場の外野フェンスを比較しまして、どこの球場だったらホームランが出やすいか、出にくいかを一括で比較できるものとなっています

注目は、その緻密なつくり。プロ12球団のホームスタジアムの外野フェンスが1万分の35の縮尺で忠実に再現されている。これをみると神宮球場は両翼が短く、かつフェンスが低く、逆に札幌ドームは広くフェンスが高いということが一目で分かる。

記者:
製作動機は?

岡崎克也さん:
福岡ドームでのソフトバンク対楽天戦を見ていたときに、ホームランテラスに打球が入ったときに「楽天生命パークだったら外野フライだったのにな」と思ったのがきっかけで、一括でフェンスを比較できるものを作ったら、面白いんじゃないのかなと思って作りました

自らも小学生から野球をしていた岡崎さん。中学、高校、大学と野球に打ち込んできた中で球場によって広さが違うことを常に感じながらプレーをしていた。2020年7月、仕事の知識を生かして球場外野フェンスを設計、何度も作り直して構想から5カ月、ついに完成した。

記者:
あらためての感想を

岡崎克也さん:
かなり納得しております

記者:
なぜ球場ごとに広さ違うのか?

岡崎克也さん:
それに関しては、ちょっと分からないです

公認野球規則をみると1958年以降、プロ野球のクラブが建造する球場は「両翼は99.058メートル、中堅は121.918メートルを必要とする」と書かれているが、左中間や右中間の広さは定められていない。専門家に聞いてみた。

公益財団法人​ 野球殿堂博物館 関口貴広 学芸員:
もともと外野の両翼センターの長さに関しても最初は決められてなかったようで、プロ野球に関しては1959年の段階で現状の基準が設けられているようです

関口さんによると現在の基準となったひとつの大きな要因は1958年にロサンゼルスに移転したドジャースだと思われるとのこと。本拠地の「ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム」は本来、陸上競技場だったため極端な形の野球場となってしまった。

公益財団法人​ 野球殿堂博物館 関口貴広 学芸員:
レフト、左翼線が非常に短かったということで、1959年に前の年の6月以降、新築のスタジアム、改装されるスタジアムに関しても、それ以上の長さ(両翼99.058メートル、中堅121.918メートル)で造るようにというようなルールが加わったようです

左中間右中間に関しては、スタジアムを造る際に、その敷地にあわせて設計されたため外野の形状もバラバラになったと推測されるそう。ところで関口さんは、岡崎さん製作の外野フェンスの模型を見たのか?

公益財団法人​ 野球殿堂博物館 関口貴広 学芸員:
写真は拝見しました。これだけ違うんだなというのが分かって、一目で見られて面白いと思いました

関口さんからの評価も高かった岡崎さんの外野フェンス模型。製作者本人が見てもらいたい人はいるのか?

岡崎克也さん:
はい、僕の大好きなプロ野球解説者の里崎智也氏に見てもらいたいです

ということで仙台放送に来てもらった。

プロ野球解説者・里崎智也さんと夢の対談

岡崎克也さん:
ちょっと夢のような待ち時間でとても緊張しています

そして里崎さんとの夢の対談スタート。岡崎さん、矢継ぎ早に質問を重ねます。

岡崎克也さん:
東京ドームとかでしたら左中間、右中間が狭かったり、甲子園球場ですと左中間、右中間が広かったりすると思うんですけど、各球場によってプロの方たちというのはホームランを打つコツとか、そういうのを狙っているのかというのを聞いてみたいです

里崎智也さん:
たぶん狙ってないでしょうけど、ミスショットしてもホームランになる球場があるかないかですね。広い狭いでそこまで狙う狙わないは変わらない

岡崎克也さん:
一発を本当に避けたいとき、球場ごとに配球・コース・変化球の高さとかを変えたりする配球があるのかなというのを聞きたいですね

里崎智也さん:
狭い球場ほどインコースいきますよね。反対方向にホームラン打たれるのも引っ張られるのも狭いんで確率一緒

記者:
フェンスの模型を見た率直な感想はいかがでしょうか?

里崎智也さん:
大変だったろうに良く作ったなと思います

記者:
岡崎さんは(YouTubeの)「里崎チャンネル」で、この話を取り上げてほしい希望があるがいかがでしょうか

里崎智也さん:
いや、話が広がらないですね。ゴールがどこなんやという

岡崎克也さん:
その通りなんですよね。その通りです

記者:
僕らも落としどころどうしようかなって、いま悩んでいるんですけど、この企画の

里崎智也さん:
(爆笑)あと、あれじゃないですかメジャーとかもやればいいんじゃないですか。メジャーの球場と日本の球場合わせたら面白いと思いますよ

岡崎克也さん:
そこまでいったら「里崎チャンネル」いけますかね?

里崎智也さん:
着地点がやっぱり要りますよね。作っただけになっちゃうんで

岡崎克也さん:
そうなんですよ!でも、そういう鋭い意見が欲しかったんです僕は!本当にそういう鋭い解説が好きなので!

里崎智也さん:
それをやって完成させて模型用として売り出しましょ。「日本の名城」みたいなプラモデルあるじゃないですか。ああいう感じで「世界のスタジアム」っていって、まず野球いって、次サッカー行きましょ

対談終えて…。

岡崎克也さん:
本当に鋭い意見いただいて、なんて表していいか分からないんですけど、とても楽しかったです

記者:
模型の今後の展開は?

岡崎克也さん:
野球に興味のある方、興味のない方にも野球のフェンスって各球場によって違うんだよって、こういう野球の面白さを感じていただければいいなというのが変わらずですね

里崎智也さんに再挑戦!! 進化した外野フェンス模型

2020年12月に取材した岡崎克也さんが製作した野球場外野フェンス模型が、このたび進化版が完成したということで、2021年2月25日に早速、取材に行ってきました。

記者:
ご無沙汰しています。お元気でしたか?

岡崎克也さん:
元気です。楽しく過ごさせていただいていました

前回の企画では辛口な里崎さんとのやり取りなどが盛り上がり、動画投稿サイトYouTubeで約1週間で再生回数30万回を記録した。

岡崎克也さん:
僕の想定以上に反響が大きくて、「隠れ外野フェンスマニア」というのが、こんなにも日本にいたのかと驚きましたね

会社にも予想外の反響があったという。

岡崎さんの上司 藤谷大さん:
うちのウェブサイトを通じて「こういうこと、もっとやってください!」という一般人の方からのファンレターが届くという“珍事”とかあったりして、結果として東京の本社に「広報担当」ができました

記者:
すごい!

このほかプラスエンジニアリング仙台事業所の門が塗り替えられたり、就職を希望する学生が増えたりと、会社に一石ならぬ巨大な岩を投じた岡崎さん。

新たな野望に燃えていた。

岡崎克也さん:
前は予算の都合で左側(レフト側)しか作ってなかったんですけど、今回は右側(ライト側)も作って、球場全体を表すという設計にしました

実際の製造作業を見学させてもらった。そこは1000分の1ミリ単位の緻密な作業。職人たちの「こだわり」が伝わる緊迫感に満ちた「モノづくり」の現場だった。

そして、2021年4月13日。

岡崎克也さん:
完成しました。どうぞこちらへ

これが完成した新しい模型。フェンスが外野全体に置かれ、ファールゾーンも再現、そして今回は12球団本拠地球場のほかオールドファンには懐かしい球場のフェンスも加わった。

岡崎克也さん:
旧広島市民球場も再現して昔の球場は、こんなに狭いんだというのも表せたというのも思いますし、ファールゾーンも球場ごとに個性があるんだというのも表現しました

1991年に撤去された阪神甲子園球場のラッキーゾーンも、今回は組み込まれている。

岡崎さん、構想から3カ月かけて作った自信作、素晴らしい出来上がりだ。

記者:
きょう野球解説者の里崎克也さんが、ナイター中継の解説でいらしていてお会いできますけど

岡崎克也さん:
そしたら、ぜひとも現物を見ていただきたいですね。第一声が「広がらないっすね」だったら面白いんですけど

今回も仙台放送に移動。

岡崎克也さん:
めちゃめちゃ緊張してます

里崎智也さん登場。気になる反応は?

里崎智也さん:
全部になっているじゃないですか。これはいいですね、ここまで来ると

岡崎克也さん:
これなら大丈夫ですか

里崎智也さん:
あと「生」で見たの初めてですからね

岡崎克也さん:
「生」だったら話が広がりますかね?

里崎智也さん:
そうですね、言いたいことがちょっと増えましたね、「生」で見た方が

岡崎さんのプレゼンスタート。

岡崎克也さん:
今回、両翼を作ってみたんですけど、プラスあとファールゾーンも表現しながら、各球場の個性を見られるようにしてみました。皆さんに球場違うのを見てもらいたいですね

里崎智也さん:
これでもう満足なんですよね?

岡崎克也さん:
いや、そうですね

里崎智也さん:
すごいですけどね、「生」で見て一周になって分かりやすくて、すごいんですけど、まあ50点ですよね。まだいけると思います。僕の期待に応えてくれます?

岡崎克也さん:
はい

里崎智也さん:
僕が見たいの言っていいですか?正直もう、分かりづらいんですよ。色がかぶるじゃないですか。もうどこが何か分かんないんですよ。1番分かりやすいのがピンクの広島市民と黄色の甲子園は分かるんですよね。ここでもうワンランク上に行きましょう

岡崎克也さん:
あ、分かりました、言いたいこと。取り外しできる

里崎智也さん:
そうです。でも、ぶっちゃけ甲子園が1番広いんですね

岡崎克也さん:
そうですね、この辺が…でも高校野球バックスクリーンに初めて入ったとかいう

里崎智也さん:
バックスクリーンは狭いですよ

岡崎克也さん:
狭いんですよ

里崎智也さん:
この模型はすごいですよ、けども、さらによくなるために。満足したら終わりじゃないですか

岡崎克也さん:
「50点」と言われたら悔しいですよね

里崎智也さん:
でも、この前20点くらいだったから上がってますよ

岡崎克也さん:
この前20点だったんですか!?
里崎さんに見てもらうことで満足してはいけないんですね、里崎さんは通過点!

記者:
(今日の2人の対談の結果)この企画がまた続くことが決まりました

対談終了後、里崎さんからサインをもらった岡崎さん。厳しい点数は期待の裏返し。里崎さんは球場全体を再現した、今回の模型は「素晴らしいできだ」と何度も話していた。

今回、完成した模型は岡崎さんの会社のホームページで公開中。

(仙台放送)