近ごろは掃除ロボットがある家庭も珍しくなくなったが、次はコンビニから商品を持ってきてくれるロボットが身近な存在になるかもしれない。

ロボットの開発支援や制御システムを手掛けるアスラテック株式会社が4月21日から、セブン‐イレブンなど4社と共同し、ロボットがコンビニの商品をオフィスビル内に配送する実証実験を開始した。

出典:アスラテック
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場所は協力会社の一つであるソフトバンクの本社が入居する「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー(東京都港区)」。同社社員が「セブン‐イレブンネットコンビニ」で注文した商品を、ビル内のセブン‐イレブン店舗から自律走行型配送ロボット「RICE」で他のフロアも含めた指定場所に届けるというのだ。

出典:アスラテック
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注文が入ると、まずセブン‐イレブンのスタッフが店内から商品をピックアップし、「RICE」の中に積み込む。

「RICE」はフードならおよそ4人前、500mlのペットボトルなら12本が積載可能で、システムと連携したエレベーターで他のフロアへの移動も可能

配送先に到着すると、注文者のスマートフォンにSMSで暗証番号を送信し、「RICE」の端末に暗証番号が入力されると、ふたが開いて商品を取り出せるようになる。仕事を終えた「RICE」は自動で店舗に戻り充電器にドッキングするそうだ。配送可能な商品は約550点で、実証実験は6月30日まで行う予定になっている。

エレベーターを使うロボット 出典:アスラテック
エレベーターを使うロボット 出典:アスラテック

このビルでは今年1月18日から「RICE」を使い、店舗と同じフロアの指定場所に商品を運ぶ実証実験を行っており、さらに今回からはエレベーターを使いこなして他のフロアにも移動できるようになった。

「RICE」は香港のRice Robotics社が開発したロボットで、周囲の状況に応じて自動で速度を変更し、人や障害物を感知すると停止や回避を行うという。香港のホテル「L’hotel Island South」で宿泊客にルームサービスを届けるため正式導入されているほか、日本では高輪ゲートウェイ駅などでさまざまな実証実験が行われてきた。

(出典:アスラテック。1月18日のプレスリリースより)
(出典:アスラテック。1月18日のプレスリリースより)

自動走行で、別のフロアからも注文者の場所まで商品を届けてくれるのは驚きだが、たくさんの人が行き交うオフィス内で、「RICE」は人にぶつかったりはしないのだろか?

また、エレベーターにたくさん人が乗っていた場合、「RICE」はどんな行動をするのだろうか? 担当者に聞いてみた。

行く手を塞がれたらエラー音を鳴らすことも

――「RICE」は転ばないの?人が邪魔したらどうする?

「RICE」は転倒しづらい設計となっています。進行方向を塞いだ場合は、避けたり止まったり、エラー音を発したりします。


――配達する速度はどのぐらい?

最高時速は4kmで、周囲の状況を見ながら広い空間では早く、狭い空間ではゆっくりとスピードを自動で変えて走行するようになっています。今回の実証実験中の場合、目的地までの距離や混雑状況次第ですが、おおよそ5~10分で商品をお届けすることができます。

出典:アスラテック
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――どこでも好きな場所に配送してくれる?

「RICE」が走行するのは共有エリアのみとなっているため、執務エリアと共有エリアを隔てる最寄りの扉を指定して配送するかたちになっています。


――ちなみに、温めた弁当は運んでくれる?

現時点で温めた弁当の配達は受け付けておりません。
 

人間と一緒にエレベーターで移動するわけでない

――「RICE」は自分で呼んだ以外に、人が使っているエレベーターにも乗ってくるの?

今回の実証実験では、特定の1基のエレベーター以外、呼び出しも乗車もしない設定となっています。
「RICE」がエレベーターを呼び出した後、人が降りきったタイミングで「ロボット専用運転」へと切り替えることで、人と「RICE」が乗り合わせることのないようにしています。


――エレベーターと連携するため苦労した点は?

エレベーター連携により対象フロア数や配送先が増え、事前の配送テストに苦労しました。既に入居者のいる建物での実証実験ということで、入居している方々のご迷惑とならないようなオペレーションの検討、人のいない時間帯でのテスト等に気を使いました。

出典:アスラテック
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――「RICE」はいつでも配送してくれるの?

エレベーター連動を伴う配達に関しては、通勤時間帯や昼前後は受付対象外として実験を進めておりますが、今後実際の稼働状況を見て変更になる可能性もございます。


――「RICE」という名前は何かの略称なの?

何かの略称ではなく、お米のRICEです。RiceRoboticsは香港の会社で、アジア発のロボットとしてアジアの人々に馴染み深いお米から「RICE」と名付けたそうです。


――「RICE」の将来はどうなる?

今回実証実験を行っているオフィスビルの他、ホテルや商業施設、マンションなどの屋内において、モノの配達や道案内、警備等の用途でご利用いただくことを想定しています。

今回の実証実験のように、サービスの一部として「RICE」が組み込まれることで、より社会に実装されていくと考えています。


――コロナ禍でロボット配達の需要は高まっている?

はい。非接触、非対面といった文脈で非常にご注目いただいています。

出典:アスラテック
出典:アスラテック

現在の実証実験では、エレベーターに乗ろうとするロボットのために、人間が「開」ボタンを押して待つことはなさそうだが、また一歩、ロボットが活躍する未来が身近になったようだ。

もしかしたら近いうちに、あらゆる買い物はロボットが家まで運んでくれるようになるかもしれない。

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プライムオンライン編集部
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