エレベーターがない集合住宅で「ごみ出しロボット」の実証実験

階段を上り下りできるロボットによる、ごみ出しの実証実験が12月5日、神奈川県藤沢市の市営住宅で行われた。

昔建てられた集合住宅にはエレベーターがないことも多く、高齢になった住民が、ごみ出しのために階段を上り下りする負担を軽減させる狙いだ。

藤沢市が取り組む「ロボット未来社会推進プロジェクト」の一環で、ロボットは慶應大学発のベンチャー企業「アメーバエナジー」が開発した。

このロボットは全長77センチで、生活空間で想定される階段(斜度35度まで)を上り下りし、6キロまでの荷物を運ぶこともできる。

そして車輪部分に、段差の形状に合わせて自在に変形する“柔らかい素材”を使うことで、階段の上り下りが可能となった。

高齢者にとって、ごみ出しは負担

実証実験が行われた渋谷ヶ原住宅は5棟あり、3~4階建てでエレベーターはない。住民の多くが高齢者で、階段を使ったごみ出しが大きな負担になっているのが現状だ。

導入されれば負担軽減につながるはずだが、今回の実証実験はどのような手順で行われたのか? また、実験によって見えてきた課題とは?

アメーバエナジーの広報担当者に話を聞いた。

2階から階段を下り、ごみ捨て場まで移動し、ごみを捨てる

――実証実験で使われたロボットの特徴は?

階段でも荷物を運べるロボットです。
柔らかい素材を使うことにより、安定性と安全性を実現しています。

ロボットに階段を上り下りさせるには、これまでは高度な技術と高価なセンサーなどが必要で、どんなところでも安定に走行させることは難しい課題でした。
しかし、段差の形状に合わせて自在に変形する柔軟素材を車輪部分に使うことで、どんな段差でも安定して走行でき、どんな階段でも上り下りできるようになりました。

柔らかい素材には、床を傷つけにくく、安全性も高いというメリットもあります。
また、柔らかさは親近感につながり、ロボットが生活空間で人と共生できるために重要です。

今回の実証実験では、時速1キロ以下で走行しています。
弊社の実験スペースや仮想的な環境ではなく、実際に住民の方々が生活されている実環境でロボットを動作させることは初めてでしたので、「安全第一」で行いました。


――実証実験は、どのようなかたちで行った?

少子高齢化等を背景に、体力の低下や交通網の弱体化により、外出しにくくなる人々、買い物に行き来することが難しい人々が増えてきています。
このような「買い物難民」問題の解決に、ロボットを使った自律走行と配送によって貢献したいと考えています。

そこで、今回エレベーターのない集合住宅にお住まいの高齢者を対象に、ロボットによるゴミ捨ての実証実験を実施しました。

ロボットは、スポンジのような特殊な柔らかい素材を用いており、これが階段の形に合わせて変形することで、スムーズに階段を降りることを実現しています。

今回、市営住宅の2階でロボットの荷台にゴミ袋を入れ、階段を下りゴミ捨て場まで移動し、その場でロボットが自動でゴミを捨てる作業を行いました。


――実証実験を行った後、住民の方々からはどのような感想が聞かれた?

「すごく助かる」「早く実現してくれたら嬉しい」といった声が聞かれました。

その他、「近くの畑で作っている野菜を家までロボットで運びたい」といった声もあり、想定していなかった使用ニーズも、実験を行ったことにより知ることができました。

自律的な「縦の移動」が実用化の課題の一つ

――実証実験を行ってみて、気付いた課題は?

実証実験を通じて、住民の方々のニーズが非常に高く、また期待の声が大きいことを認識することができました。

一方で、製品化に向けて、ロボットの大きさや速度を検討する必要があると考えています。

ただ、アパートやマンションの階段や踊り場、廊下での走行を考慮すると、ロボットを大きくすることにも限界があります。そのため、これから実証実験を重ねることで、ニーズと環境による制約の両面を考慮しつつ、ロボット性能の向上を目指したいと考えています。

また、段差を乗り越えられる、ものを運べるなどの特性を活かし、物流のラストワンマイル問題への挑戦など、利用シーンの可能性を広く探りたいと思っています。

――実証実験では、ロボットの操作は「遠隔操作」。遠隔操作はどのように行った?

弊社エンジニアが、手元の操縦コントローラからロボットへ無線通信で操縦コマンドを送信することにより、「遠隔操作」しています。


――実用化する際には遠隔操作ではなく、自動で階段の上り下りをさせることも考えている?

現在、弊社では実用化に向けて自律走行による階段昇降の開発を進めています。

この実現に際して難しい点は、ロボットが自律的に「縦の移動」を行うことです。現在、乗用車の自動運転や、フードデリバリーロボットの自律走行など、多くの会社で自動運転技術の開発が進められています。

これらは、「縦の移動」を伴わないため、「横の移動」のみにフォーカスした自動運転・自律走行技術になります。

一方で、階段昇降を実現する弊社のロボットは、「横の移動」に加えて「縦の移動」も実現する必要があります。


――住民からごみを集めるタイミングも課題なのでは…これについてはどのような対応を想定している?

現時点では、住民の皆様にアプリを入れていただき、各部屋から直接ロボットを呼び出すことを想定しています。ご高齢にも簡単に操作してもらえるインターフェースのアプリの開発を行なっています。

ごみ出しを負担に感じている高齢者の救世主になるかもしれない「階段の上り下りが可能なロボット」。実用化には自律走行による階段の上り下りの難しさや、ロボットを大きくすることの限界など、様々な課題があるという。

今後、実証実験を重ねる中で、ごみ出しに限らず、社会に貢献する用途が見つかることを期待したい。