日米首脳会談が迫り、対中メッセージが注目される。米中間では新疆ウイグル自治区などでの人権問題をめぐり対立が激化しているが、世界は再び二つの陣営に分断されるのか。その中で日本の外交戦略はどうあるべきか。今回の放送では自民党の林芳正議員と米中の専門家を迎え、徹底討論を行った。

硬軟使い分ける「まだら」なアメリカの対中姿勢

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反町理キャスター:
今週16日(現地時間)にワシントンで開かれる日米首脳会談。バイデン政権は対面の首脳外交が初めてというスロースタートぶりだが、その相手が菅首相。どうご覧になりますか。

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員 麗沢大学特別教授:
まず日本は当然アメリカにとって極めて重要な同盟国であること。さらに、日本は安全であるということ。日米同盟の強化はトランプ政権とも共通で、超党派のコンセンサスがある点で安全。また、日本はあまり予想外のことを言わない。バイデン政権の民主党とイギリスの保守党との関係など考えると、消去法においても最初は日本となる。

反町理キャスター:
会談のポイントについて我々の予測は、中国・北朝鮮の対応、自由で開かれたインド太平洋構想について、気候変動、新型コロナなど。何が重視されるか。

林芳正 自民党参院議員 元防衛相:
中国に対して、アメリカは3つのことで対峙し、2つは一緒にやると姿勢を使い分けている。北朝鮮への対応と気候変動は一緒にという部分。この使い分けが注目点。

反町理キャスター:
中国側からは、アメリカの対中姿勢はどう見えている?

興梠一郎 神田外語大学教授:
大統領選の時期から今もずっと、中国はバイデン大統領に期待しているバイデン政権は、競争はするが対立は望まないとはっきり言っている。さらにアメリカの国益にかなえば協力すると言っており、これを歓迎している。先日アラスカで会談ができた時点ですごく喜んでいる。

反町理キャスター:
アラスカにおける米中の外交担当者の会談は、1時間に渡る大ゲンカのように見えたが。

興梠一郎 神田外語大学教授:
ビデオを見ると、実は冗談を言うような和やかな場面もあった。中国は、これはただの会談ではなく戦略的対話だと報道している。

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員 麗沢大学特別教授

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
トランプ政権は多分野で50ほどあった米中対話を全部なくした。バイデン政権で対話が復活した感じがある。私は、バイデン政権の対中政策は「まだら」だと思う。強硬な部分と柔軟な部分がある。今はまだ硬い部分が強いが、アメリカはここに日本を入れたいと考えている。日本の立ち居振る舞いはトランプ政権時よりもっと難しくなる。

林芳正 自民党参院議員 元防衛相:
ブリンケン国務長官の発言では、アメリカは中国に対して、競争は「そうあるべき」とき協力は「そうできる」とき。敵対は「そうしなければいけない」とき、と微妙にニュアンスを使い分けている。

アメリカはダブルスタンダードか

新美有加キャスター:
先月30日、米国務省は去年の世界各国の人権状況をまとめた報告書を発表し、中国のウイグル族に対する問題についてジェノサイド(民族大量虐殺)、「人道に対する罪」と非難しています。 

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
ジェノサイドには定義づけがあり、国際的にも認められた悪。国際条約に基づき認定されれば、多くの国が国内法で制裁措置をとる。しかし日本はこの国際条約に入っていない。国内法がないから。中国の弾圧を非難していればそれで済むのか。

反町理キャスター:
中国はこれを本当に懸念しているのか。

興梠一郎 神田外語大学教授

興梠一郎 神田外語大学教授:
中国は「また来たか」というゲーム感覚。実は中国は、アメリカの報告者に先立って米国人権侵害報告を出している。アメリカの貧富の格差、システム化された人種差別などを並べ、こんなにひどい人権問題を抱えているのにアメリカ政府は反省せず他の国々にあれこれ言う、という主張。ロシアにはものを言うがサウジアラビアには何も言わないのは、政治的利益を求めたダブルスタンダードだと。

林芳正 自民党参院議員 元防衛相:
アメリカのダブルスタンダードはよく言われてきたこと。中国のことは非難しているがミャンマーに対してはどうかという問題もある。日本も、そこを見られているという意識で、状況を横目でにらんでおく必要がある。

日本も人権侵害に対して制裁を行う法律を定めるべき

反町理キャスター:
日本の国会では、「人権外交を超党派で考える議員連盟」が新疆ウイグル自治区の深刻な人権侵害を強く非難し、直ちに中止することを求める国会決議を実施すべきだと決議をした。さらに現在日本にない、人権侵害に対して制裁を行うマグニツキー法と呼ばれる法律の成立に向けての検討。明らかに中国の人権状況を意識した動きがある。

林芳正 自民党参院議員 元防衛相:
先ほど古森さんの話にもあったが、結局言うだけとなってしまってはいけない。効果的な制裁について詰めて考えておくべき。また、法律として成立すると外交当局のフリーハンドの余地が狭まる可能性もある。よく整理をして検討を進めることが望ましい。

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
法律はあったほうがいい。戦後の日本外交には明文化された法律がなく、あまりにも法的な一貫性がなかった。明文化されることで国民がわかるようになる。国民が票を投じて選んだ議員には信託があり、ガイドラインとなるのは法律。

興梠一郎 神田外語大学教授:
法律は作らなければダメ。日本はEUの国々などと自由民主主義、人権、法の支配、市場経済といった価値を共有している。そして彼らは制裁をしている。ハンガリーやギリシャは中国から支援を受けているが、国家ではなく個人や企業を制裁することで同意を得やすくしている。このやり方は参考になる。

台湾について中国はトランプ政権より弱まったと評価

新美有加キャスター:
米中対立によって緊張が高まる台湾について。アメリカは戦略的競争法案を取りまとめ、政府間交流の拡大に向けた新たな指針も発表。台湾を独立した国として認めようとするような動きにも見えます。

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
中国の最近の言動に対する牽制、台湾侵攻にはコストがかかると言う示唆。台湾を独立国と認めるかもしれないとほのめかし、中国の弱みをついている。

反町理キャスター:
中国はどう感じているのでしょう。

興梠一郎 神田外語大学教授:
中国の報道では全く違っており、「アメリカはガードレールを作った」と安心している。例えば「一つの中国」政策は変わらないとプライス報道官が発言。台湾についても、「非公式な」関係を深めると言っている。中国の報道は、トランプ大統領よりも弱まったと書いている。

反町理キャスター:
すると、今回の日米首脳会談において声明が出た場合に、2プラス2での「台湾海峡の安全」という言葉がもしなければ、バイデン政権の真意をどう見ればよいか。

林芳正 自民党参院議員 元防衛相:
2プラス2での合意を歓迎する、といった包括的な表現というやり方をするかもれない。全て書くのかもしれない。言葉があるかないかという点はあまり気にしなくてよい。

”対中”経済安全保障において日本の国力増強が不可欠

反町理キャスター:
自民党が先日発表した経済安全保障についての文章に、「戦略的自律性」「戦略的不可欠性」という言葉が。

林芳正 自民党参院議員 元防衛相:
エネルギーの面なども含め、何かが起こったときに国として自給自足できることが「戦略的自律性」。それに加えて、日本にしか技術がないなど、他国から見て日本がいなければ困るというのが「戦略的不可欠性」。これらを備え経済安全保障をしっかり進める。中国との関係にも当然その考え方は適用される。

反町理キャスター:
ただ、経済と政治を別々に考えることができるのか。

林芳正 自民党参院議員 元防衛相:
米ソ冷戦では経済と政治は全く分離して遮断できた。しかし現在米中で起きていることは貿易戦争とも言われ、米中間で経済も含め完全にデカップリング(切り離し)することは双方できない。そこで線引きをするのが経済安全保障のポイント。報告・判断の上で線を引いていこうと。

林芳正 自民党参院議員 元防衛相

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
林さんは日中友好議員連盟の会長。中国が日本にとって明らかに有害な政策をとっても、日中友好議員連盟が正面からそれに対して抗議をした記憶はほとんどないが、そのあたりはどうですか。

林芳正 自民党参院議員 元防衛相:
現在はコロナで訪中できていないが、行くたびに言うべきことは言っています。尖閣についても要人に会えば必ず言っています。なかなか記事にならないが。

興梠一郎 神田外語大学教授:
バイデン政権は非常に重要なハイテクや大学への投資を行い、高みから中国に関与していくと言っている。日本も技術などにもっと投資して、中国が侮れないような軍事力も含めた国力をつけていかなければ。

BSフジLIVE「プライムニュース」4月13日放送