日本を美術品取引大国に

規制改革によって、アート市場の新たな拠点に日本が名乗りをあげた。

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河野規制改革相:
これも作品なの? これすげえな! これも? えっ、これも?

現代アートを展示するギャラリーで、段ボールや牛乳瓶のケース、付箋などをモチーフにした作品を前に、「どれが作品かわからない」と、驚きを隠せない様子の河野規制改革相。

実は今、日本を美術品取引大国にしようと、ギャラリーなどに関する規制を改革する取り組みが行われている。

河野規制改革相:
今、ロンドン、NY、香港というのが美術品のマーケットの3大市場だが、ぜひ日本もアジアの美術品マーケットのコアに育てていきたい。

そのために2020年12月、ある試みが始まった。

ギャラリーを「保税地域」に

河野規制改革相:
日本は香港のように自由に保税地域で展示したりオークションをやったりすることができなかったので、それを香港並み、あるいは、香港よりさらに自由にいろんなことをできるようにルールを変えていこうと。

これまで、美術品のギャラリーやオークション会場に海外から美術品を持ち込み、展示・販売する際は、高額な税金を払う必要があった。

そこで2020年12月から、ギャラリーなどを免税店のように税金を保留できる「保税地域」にすることを可能にし、高額な税金の支払いをいったん不要にした。

この改革を通じて河野規制改革相が狙うのが、世界的メガギャラリーの日本進出と海外の美術品コレクターの来日による経済効果。

河野規制改革相:
今、香港の一国二制度というものが失われていく中で、今まで香港でやっていたことを日本でできるようになれば、多くの方が日本に来て美術品の売買をするだけでなく、日本の国内いろんなところを観光して回るということもできる。

河野規制改革相は先日、アメリカ・ニューヨークに本社があるメガギャラリー「ペース ギャラリー」のCEO(最高経営責任者)とリモートで会談した。

ギャラリーの代表は、日本への進出の可能性について...。

ペース ギャラリーのマーク・グリムシャーCEO:
今回の規制改革で日本のアート市場は見逃せなくなった。
日本への進出に向け、全力を尽くしたい。

さらに、河野規制改革相はこんな未来図を描いている。

河野規制改革相:
ルールを変えることによって海外から画廊が進出してくる、画商が出てくる、あるいは、アートバーゼルのような一大展示会が日本国内で行われていくということになれば、新しい若いアーティストが日本でも光が当たって、さらに、そういう人が世界でその価値を認めてもらえる。
第2の草間彌生さんみたいな人が発掘されていくようなことになったらいいなと。

市場成長のカギは「現代アート」の扱い方

三田友梨佳キャスター:
このニュースについて、コミュニティデザイナーでstudio-L代表の山崎亮さんに聞きます。
アート作品の取り引きに関する規制緩和をどうご覧になりますか?

studio-L代表・山崎亮氏:
すごく嬉しい話題だと思います。
アートの規制緩和が進むと若手アーティストの発掘にも繋がるということになります。

国際的なアートフェアが開催されると、本会場の周りにフリンジと呼ばれる国内や地元のギャラリーの人達の売り場が出現します。
世界から集まってくるギャラリストやバイヤーの方々は本会場を見るのはもちろんですが、その国のフリンジを回ってまだ発掘されていない若手アーティストを見付けて契約して自分の国で売りたいんです。

これまでアート作品は売れなくてもその国に持ち込むだけで税金を取られるなどの縛りがあったので、日本で国際的なアートフェアをやるのは難しかったんです。

ただ今回、日本の若手アーティストがフリンジとかで世界に見付けられるきっかけが規制緩和で出来るような気がしていて、ワクワクしています。

三田キャスター:
日本が世界で注目されるアート市場になるためには何が必要なのでしょうか?

山崎亮氏:
今回の規制緩和はまず土台を作った感じだと思います。

さらにアートが絵や彫刻だけではなくて、例えば社会活動そのものを作品化するようなソーシャリー・エンゲイジド・アートとか関係性の美学といったようなまだ世界で評価が定まっていないようなアートプロジェクトや作品についてうまく扱うようになれば、日本のアートシーンが世界でより注目されるようになると思います。

三田キャスター:
既存のアート市場に無いような特色を打ち出していきながら、そもそも芸術に触れる機会を増やしていくことで、日本でもアートがもっと身近に感じられるようになることが期待されます。

(「Live News α」4月12日放送分)