新型コロナウイルスの影響でイベントの自粛や中止が相次ぎ、我慢を強いられてきた卒業生の門出を祝おうという、佐賀・唐津市のカーネーション農家のある取り組み。その気持ちに賛同し、全国から支援が集まった。
我慢を強いられた卒業生の門出を祝福
唐津市の第五中学校。卒業式を終えた中学3年生が手にしているのは、“カーネーションの花束”だ。

新型コロナの影響で、休校やイベントの中止などが相次ぎ、我慢の1年を過ごした生徒たちの卒業式に花を添えようと贈られた。
女子生徒:
びっくりしました。花の色合いがとてもきれいで、すごいなって思った
贈ったのは、唐津市和多田本村にある「平田花園」の3代目、平田憲市郎さん。

平田さんは、約6,200平方メートルの敷地で、50種類ほどのカーネーションを栽培。例年、約70万本を各地に出荷している。

行き場のない花を必要としている人へ
しかし、この1年は、新型コロナの影響で苦境に立たされた。
平田花園・平田憲市郎さん:
結婚式や葬儀などがなくなって、すごく業界的には大打撃。(2020年)3・4・5月は50%減、70%減といったふうに、売り上げもかなり落ちました

県によると、カーネーションの単価が2020年、最大で20%下がるなど消費量が激減した。
そんな中、2020年3月、平田さんを突き動かす“ある出来事”が。
平田花園・平田憲市郎さん:
従業員さんの息子さんが、地元の小学校を卒業されると。卒業式も時短で、すごく寂しいと言われていて、卒業する子どもたちのために何かできないかなと思った
行き場のない花を、必要としている人へ届けたいと考えた平田さんは、小学校の卒業生60人分の花束をプレゼント。

児童たちの喜ぶ顔を見て、ことしも取り組むことを決めた。
クラウドファンディングは2日足らずで目標達成
より多くの卒業生に贈るため、2020年は「クラウドファンディング」で資金を募ると、2月17日の開始から、わずか2日足らずで目標の30万円に達成。

3月15日までで、予想を大きく上回る約140万円が全国から集まり、近くの幼稚園から高校まで10校に贈ることになった。

平田花園・平田憲市郎さん:
応援していただいた皆さんのお気持ちをしっかりと届けるという“橋渡し役”だと思っているので、そういった意味では、すごく責任は重いなと実感しましたし、すごくやりがいを感じています

「周りの大人は応援しているよ」
3月5日。この日は、平田さんの母校、第五中学校の卒業式。

今回用意されたのは、約120人分の花束。平田さんは、式が開かれている間に花束を机や椅子の上に並べる。生徒に直接渡さないのは、新型コロナの感染拡大防止のためだった。

平田花園・平田憲市郎さん:
まっすぐ届けたいという気持ちがありますけど、こういうふうに配らせてもらって、あらためて、やってよかったと感じています
卒業生:
すごくうれしかったし、感謝の気持ちでいっぱいです
卒業生:
わざわざ、いろんな県からこういう支援をしてもらって本当にうれしい、言葉にならないくらい
平田花園・平田憲市郎さん:
「もうちょっと、ああしたかったな」ということがたくさんあるでしょう。でも、これを良い経験というかエネルギーにして、高校に行っても頑張ってもらいたいですし、「周りの大人は応援しているんだよ」ということを伝えられれば

(サガテレビ)