韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、日韓関係の改善に改めて意欲を示した。

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具体的な解決策には言及せず

文大統領は、日本統治時代の三・一独立運動を記念する式典で演説し、日韓関係について、「過去の歴史は直視して教訓を得なければならないが、過去に足を取られてはいけない」と指摘し、日本側に対話を呼びかけた。

文大統領は「韓国政府はいつでも日本政府と向き合って対話する準備ができている」と述べる一方、いわゆる徴用工問題や慰安婦問題について、具体的な解決策には言及しなかった。

文大統領としては、日米韓の連携を重視するアメリカのバイデン政権を意識して、日本との関係改善を図りたい思惑があるとみられる。

バイデン政権誕生で外交行き詰まり

三田友梨佳キャスター:
このニュースについては哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんに聞きます。
文在寅大統領の発言は日本に対して譲歩しているようにも聞こえますが、どう見ていますか?

津田塾大学・萱野稔人教授:
これは日本側にボールがあるかのような発言ですけど、そもそも前提が間違っています。

日韓の歴史問題については、1965年の日韓条約の際に法的には解決済みなんです。
それに加えて2015年の日韓合意では慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決されたことが確認されました。

つまり、歴史問題について日韓で対話することはすでに無いんです。
あとは韓国政府が国内で対応することだけなんです。

三田キャスター:
では、文大統領はなぜこのような姿勢をとるのでしょうか?

萱野稔人教授:
その理由の1つは、アメリカでバイデン政権が誕生して、文政権の外交政策がより行き詰まってきたということがあります。

そもそも2015年の日韓合意は当時のオバマ政権の後押しによって実現されたものです。
そのとき副大統領だったバイデン氏はその立役者でした。

文政権はこの日韓合意を後から反故にしました。
ですから、バイデン政権ははじめから文政権に不信感を持っています。

さらにバイデン政権は対中国だとか対北朝鮮の問題で同盟関係を非常に重視している。
それに対して、歴史を言い訳にして同盟関係にひびを入れる文政権には厳しい姿勢で臨んでいます。

一方で、韓国国内では、特に支持層の中で日本に対してものすごく過激な発言をする傾向が今強まっていますので、文政権はその間で板挟みになっています。
今回の発言はその苦し紛れの表現だったと思います。

ですから日本は無理に対応せずに、放置しておくことが最善の方法だと思います。

三田キャスター:
本当に対話の意思があるのか、言葉だけでなく、韓国政府には具体的な行動で示して欲しいと思います。

(「Live News α」3月1日放送分)