非常事態などを知らせるため、車両に搭載されている発炎筒。これを誤使用すると火災事故の危険性があるとして、国土交通省が注意喚起をしている。

この注意喚起は2月17日、国土交通省の公式ウェブサイトで公開。「お子さまが誤って発炎筒を使用した場合、やけどなどで負傷したり、車に燃え移り火災が発生したりするおそれがあり大変危険ですので、くれぐれもお子さまがさわることがないようご注意ください。」

国土交通省の注意喚起より
国土交通省の注意喚起より
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とした上で、使用するときは次の4点を守るように呼び掛けている。

(1)お子さまには、絶対にさわらせないでください。いたずらなどで発火するおそれがあり、大変危険です。

(2)燃料などの可燃物の近くで使用しないでください。引火して、やけどなどにより、重大な障害を受けるおそれがあり危険です。

国土交通省の注意喚起より
国土交通省の注意喚起より

(3)点火は必ず車外で行ってください。また、使用中は、顔や身体に近づけないでください。やけどなどにより重大な障害を受けるおそれがあり危険です。

(4)トンネル等の煙がこもる様な場所で使用しないでください。煙で視界が悪くなり、他車の走行の妨げとなり事故をまねくおそれがありますので、トンネル等では非常点滅表示灯等を使用してください。

※火気を使用しないLEDを用いた非常信号用具も発炎筒の代わりに使用することが可能です。

発炎筒はその名の通り“炎を発する筒”で、そして以前から自動車に装備しているものでもあり、ドライバーらはその危険性を知っているはず。なぜ、このタイミングで注意を呼び掛けたのだろうか。

そして、実際にはどんな場面で使うべきなのだろうか。疑問点を国土交通省に聞いてみた。

誤使用で重大な事故につながることも

ーー発炎筒の注意喚起をしたのはなぜ?

2021年1月、お子さまが発炎筒を誤使用し、停車中の車両が全焼した事件がありました。不用意に触ると危険で重大な事故につながることもあるので、注意喚起をさせていただきました。


ーー誤使用による事故は発生している?

把握している範囲では、10年間に一度あるかないかの程度で多発はしていません。ただ、誤った使い方をすると火災の可能性もあるので、注意喚起をさせていただきました。

重大な事故につながることもあるという(画像はイメージ)
重大な事故につながることもあるという(画像はイメージ)

ーーそもそも、発炎筒は車両に備えておく義務はあるの?

道路運送車両法の保安基準には、自動車は保安基準に適応した非常信号用具を備えなければならないことが定められています。発炎筒はこの一つとして認められたものです。保安基準に適応していれば、LEDを用いた非常信号用具でも問題はありません。


ちなみに、非常信号用具の保安基準は、国土交通省の公式ウェブサイトから「道路運送車両の保安基準」のページに進み、「第43条の2非常信号用具」の細目告示の欄(第64条)から確認できる。「夜間200mの距離から確認できる赤色の灯光を発するものであること」「自発光式のものであること」などと、細かく定められているので、気になる人は確認してみるとよいだろう。
 

非常信号用具の保安基準の一部(出典:国土交通省)
非常信号用具の保安基準の一部(出典:国土交通省)

発炎筒の正しい使い方とは?

ーー発炎筒の正しい使い方を教えて。

一般的な流れを説明すると。まずは発炎筒の外ぶたを抜いて手元側に差し込みます。持ち手部分が長くなり、やけどを防ぐ意味があります。続いて先端部分のキャップを外し、先端の発火点とキャップをマッチのようにこすり合わせて、火をつけます。

無事に発火したら、停車した車両から少し離れた場所に設置して、後続の車両などに危険があることを伝えます。一般的な燃焼時間は約5分程度です。


ーー使用するかの判断はどう考えるべき?

道路上で走行不可になったり、他の車両に警告する場面での使用が一般的
です。ただし、トンネル内や燃料漏れが発生しているときは使用を避けてください。煙が充満して他の交通を妨げたり、燃料に引火して火災の要因となる可能性があります。

燃料漏れなどの際は使用を避けよう(画像はイメージ)
燃料漏れなどの際は使用を避けよう(画像はイメージ)

ーー使用頻度は少ないと思うが、使用期限はある?

個々の製品によりますが、発炎筒の有効期限は4年と日本産業規格(JIS)で定められていて、4年以上経過すると性能が保証されず、使用できなくなる恐れもあります。有効期限は発炎筒の本体に表示されているので、確認してみるといいでしょう。


ーーLEDの非常信号用具と発炎筒はどう違う?

LEDと発炎筒との違いは、火などが発生しないことです。それぞれの特徴は、発炎筒は火と少量の煙が出るので目視で確認しやすく、LEDはトンネルや燃料漏れの場面でも使えます。ただ、どちらを使うにしても、非常信号用具の基準には適合していなければなりません。

“はつえんとう”違いにも注意

ーー似た言葉で「発煙筒」もあるが、この違いは?

どちらも周囲に存在などを知らせるものですが、文字通り、発炎筒は「炎」で、発煙筒は「煙」で知らせるものになっています。非常信号用具の条件に適合するのは、基本的には発炎筒ですので、勘違いしないようにしていただければと思います。


ーー発炎筒を車載するときの注意点は?

運転席のドアポケットなど、見やすい場所に固定することを勧めます
。もしも足元で転がったりすると、子供が手にとったり、ブレーキの下に入るなどして、事故の要因となります。保護者には、子供を車内で一人にしないこともお願いしたいです。

子供を車内で一人にしないことも重要(画像はイメージ)
子供を車内で一人にしないことも重要(画像はイメージ)

ーー今後はどのようにして注意喚起をしていくの?

ウェブでの周知のほか、関係団体を通じて注意喚起のチラシを配布する予定です。また、発炎筒を扱う販売店などにも、正しい使用方法などを説明するようお願いしています。


発炎筒は非常事態で頼れる存在だが、車載する場所や使う場面を誤ると火災の危険性もあるようだ。1本の燃焼時間が約5分と短いこと、トンネルなどでは使わないほうがいいことを考えると、LEDの非常信号用具も備えておいてもいいかもしれない。

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プライムオンライン編集部
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