オンラインお見舞いの日程変更

3月11日の東日本大震災発生から10年を前に、宮内庁は、天皇皇后両陛下が福島県、岩手県、宮城県からオンラインで、復興状況を聞くとともに、被災者らをお見舞いされることで調整を進めてきました。

そんな中、2月12日に福島県や宮城県で震度6強を観測する地震が発生し、知事を始めとする関係機関が各種対応に専念できるように、福島県ご訪問の日程などを再度調整することになりました。

これが、実際のご訪問であった場合には、移動や警備などに関わる人員が多くなるため再調整に時間がかかりますが、今回はオンラインを予定していたことで、延期という判断を含め、臨機応変に対応ができたものと推し量っています。

こうしたオンラインを使ったお見舞いについて、宮内庁などは少しずつ経験を積んでいます。

両陛下は1月27日に、「令和2年7月豪雨」で甚大な被害を受けた熊本県とオンラインを通じお見舞いされました。

オンラインによるお見舞いの利点と課題を考えてみました。

熊本県の被災地を初めてオンラインで見舞われた天皇皇后両陛下(1月27日)
この記事の画像(7枚)

密を避け…大分と長野の施設をオンラインで訪問

2020年、両陛下は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの専門家を赤坂御所に招き直接ご説明を受け質問されてきました。

初めてオンラインを活用されたのは、8月20日に新型コロナウイルスに関する国際会議を聴講した時で、11月18日には日本赤十字社の病院などをオンラインで結び、感染対応状況などを視察されています。

さらに、11月25日には、敬老の日にちなみ大分県と都内の高齢者施設を結びご視察。12月17日には、障害者週間にちなみ長野県にある障害者施設をオンラインで訪問されています。

この2つのオンラインによるご訪問は、これまで両陛下が担われてきたご活動で、実際に足を運ぶことが難しいこともあり、オンラインを活用したご公務でした。

新型コロナウイルスの感染拡大の中、先方が密にならないようにとの配慮からオンラインが活用されました。

皇后さまと同じ名前の妻を亡くした被災者へ

こうしたオンラインを活用したことによる利点もあることから、両陛下のオンラインによるご活動はさらに広がりを見せ、1月27日に熊本県をお見舞いされました。

熊本県のお見舞いでは、5カ所がオンラインで結ばれました。まず最初にオンラインを結ばれたのは、蒲島熊本県知事です。

蒲島知事から、被害概要と復興状況についての説明を受けられています。

オンラインで両陛下に被害概要と復興状況を説明する熊本県・蒲島郁夫知事

その後、人吉市、八代市、芦北町、球磨村を結び、それぞれの場所で被災現場のVTRを見た上で、お声がけをされています。

いずれの場所も、お話ししたのは3人でした。自治体の長から説明を受け、被災者と応急対応への尽力者、つまり救助救援に当たった人たちにそれぞれお声がけをされました。

芦北町の被災者、矢野解光さんは土砂により家屋が崩壊し、妻のまさ子さんを喪い、本人も重体となった方で、両陛下は優しく声をかけられています。

陛下は「お寂しさもいかばかりかとお察しします」と弔意を示され、皇后さまも「突然のことで気持ちの整理がつかないのではないではないでしょうか」とお見舞いの言葉を述べられています。

矢野さんが、妻まさ子さんの遺影を見せながら、同じ名前の皇后さまに「妻も同じまさ子という名前で、親しみといっては失礼になるが、両陛下にお言葉をいただいて心強く思っている。頑張っていきます」と言うと、両陛下は微笑まれていたということです。

両陛下のお見舞いが、たとえオンラインでもいかに被災者にとり、大きな励ましになっているのか、よくわかります。

広範囲を訪問できる一方、交流できる人数は限られる

こうしたオンラインでのお見舞いやご訪問を通し、利点も見えてきました。

敬老の日にちなんだご視察で大分県を、障害者週間にちなんだご視察では長野県の施設を訪問されましたが、これまでは、敬老の日も障害者週間にちなんだ訪問は都内の施設だけで、地方の施設にご訪問はありませんでした。

両陛下がオンライン訪問された大分県の施設で運動を行う高齢者の方々

もちろん、地方事情のご視察などの場合は、高齢者施設や障害者施設を訪問されることはありました。

オンラインを使うことで、これまで以上に広範囲の施設を訪問できることがわかったのです。オンラインという新たな工夫が、両陛下の活動範囲を広げたことになります。

また、実際のご訪問よりも移動や警備のため動く人員は少ないことから、今回の地震での対応のように臨機応変に日程などを変更し、調整することもやりやすいことも分かりました。

オンラインで両陛下が訪問されたことに対し感謝の意を語る大分県知事

その一方で、オンラインでは一回に交流できる方の人数が絞られていることもわかります。

熊本県のお見舞いでは、被災者の方は各場所1人だけでした。密を避けるため少人数にしたのですが、この方々は「選ばれて光栄なこと」という趣旨のことを述べています。

両陛下が現地を訪問された場合、お話はできなくとも何千もの人たちが直接お姿を拝見でき、その時、両陛下が被災者にお話しした内容に共感することができるのです。

さらに、直接お姿を拝見することで、個として「交流」を持っている感覚も生まれます。

2019年12月豪雨被災地お見舞いで被災者に声をかける皇后さま(宮城県丸森町)

お見舞いなどでオンラインと現地に行かれる場面を比べると、やはり「ご交流」という点では、今回のお見舞いを通し、直接にお会いすることがいかに大きな意味を持っているのか改めて感じてしまいました。

浮かび上がった様々な課題

これからもこの状況の中では、オンラインを活用したご活動を続けられると思います。これまで以上の多数の人と回線を結ぶのは、技術的にも高度な作業になっていくと思われます。オンラインでは、回線が切れたり音声が途切れたりすることは当たり前のようにおきることです。大人数になればなるほど難しいことになります。

また、密な状態になることを避ける必要もあります。

お声がけの様子を大きなホールで密にならないようにオンラインで被災者に見ていただき、皆さんに向けたお言葉を述べるというような方法もあるとは思いますが、両陛下にとっては多くの方と触れ合われたい思いも出てきますので、時間的な制約もあるし、さらにはセキュリティーの問題も生じてくる可能性もあります。

なんとか、両陛下の思いが現地の人に広く伝えられないか、お声がけは一人でも、両陛下の思いを個人の交流としてより多くの人に伝えられないか、まだまだ工夫が必要かもしれません。

ですが、オンラインでのご活動を否定するものではありません。

宮内庁を含め、オンラインでのご訪問に携わる方の経験値が上がることは、次の工夫へつながります。そして何よりも、今できるベストな方法が、オンラインなのですから。

【執筆:フジテレビ 解説委員 橋本寿史】