高知市で日本語を学ぶ留学生たちが2月、和服の着付けコンテストに挑戦する。
本番に向けて特訓を重ねる一方、がんを患った仲間の留学生を支援する活動を行っている。
着付けコンテストへ挑む留学生
はかまに羽織、和服に身を包むインドネシア出身のキエル・イェヘスキエルさん(33)。
高知市の専門学校「国際デザイン・ビューティカレッジ」の日本語学科に通う留学生だ。
キエルさんたちが挑むのは、2月28日に高知市で開かれる着付けコンテスト。
制限時間10分で、着物を着る所作から着こなし、手際の良さまで評価される。
大会に出場するのは留学生6人で、女性は個人戦の外国人の部に、キエルさんは3人1組で、学校対抗の部に挑戦する。
この学校では2020年9月から、着物を着る授業を週2回程度行っている。
大会まで1か月となり、練習も大詰め。本番さながらに、制限時間10分でうまく着付けができるか練習する。
3人1組で競うキエルさんは、着物の肌着であるじゅばんに、黒い着物を羽織ってスタート。帯を締める表情は真剣だ。
3人は、互いに襟や裾を丁寧に、かつ素早く直していった。
3人の動きが無駄なくかみ合うと、チーム戦としての評価アップにつながる。
キエル・イェヘスキエルさん:
最初は全然できなかった。一生懸命練習して覚えて、気をつけて帯結んだり、はかまの結びとか、大会の時はできると思います
ネパール出身のネパル・ススマさん:
前は着物を着ることは全然わかりませんでした。とても難しかったけど、今は簡単になった。(着物を着ると)うれしい
着付けコンテストに向け、準備は順調に見えるキエルさん。
実は、もうひとつ別の顔を持っている。
募金活動でがんと闘う友人を支援
募金箱を手に街頭で声をあげる子どもたちと留学生たち。
10万人に1人といわれるがんと闘う友人の留学生、カナル・ケサブさんを支援するための募金活動で、キエルさんは団長を努めている。
闘病中のケサブさんは、ネパール出身の25歳。
日本人観光客が多く訪れるネパールでは、日本語を話せることが就職や起業するうえでプラスになると言われている。
将来は、日本とネパールを結ぶ衣料品や装飾品の貿易に携わりたいとの夢を胸に、ケサブさんも日本語を学ぶため、2019年に来日した。
高知市の「国際デザイン・ビューティカレッジ」に入学し、卒業後の2021年4月からは千葉の学校で経済を学ぶ予定だった。
しかし、以前から胸の痛みを訴えていたケサブさんは、2020年12月に高知市の病院を受診。
左右の肺の間に腫瘍ができる「縦隔腫瘍」という10万人に1人といわれるがんが見つかった。
カナル・ケサブさん:(2020年12月)
明日から私は入院します。重い病気ですが、頑張って治りたいと思います。今まで皆さんありがとうございました
抗がん剤による治療で、生活費をまかなうアルバイトもできず、高額な手術費もケサブさんにとっては大きな負担になる。
そこで立ち上がったのが、ケサブさんと一緒に学ぶインドネシア出身のキエルさんたち留学生仲間だった。
募金活動では、ケサブさんと一緒に日本語を学んだことがある、プロ野球独立リーグの高知ファイティングドッグスのサンフォ・ラシィナ選手や、30人を超える留学生が街頭で協力を呼びかけた。
高知FD サンフォ・ラシィナ選手:
(去年の)12月に学校、一緒に3週間だけど勉強させてもらって仲良くなりました
募金は、龍馬学園や高知県内のブックオフなどで受け付けていて、2月2日までに、497万円がのべ300人以上から寄せられている。
キエル・イェヘスキエルさん:
絶対ケサブさんの病気は治ります。募金活動を通じて応援してもらえたらうれしいです。(応援の)お気持ちをもらえたら、ケサブさんもがんばれます
はるか故郷を離れ、高知で生活を送りながら、日本の文化に魅せられる外国人は、その胸にさまざまな思いを秘めている。
キエルさんは、がんと闘う友人の支援に力を注ぎながら、和服の着付けコンテストに挑む。
「全日本きもの装いコンテスト」は、2月28日、高知市のかるぽーと・大ホールで開催され、会場には、ケサブさんを支援するため募金箱が設置される予定。
(高知さんさんテレビ)