苦境に立つタクシー業界。
2度目の緊急事態宣言で、飲食店だけではなく、夜の街を走るタクシーも今、かつてない厳しい状況に直面している。

「20時っていうラインで完全に街が変わる」

北九州市小倉北区。
1月27日午後9時過ぎ。

人通りが少なく、静寂に包まれる街を走る1台のタクシー。

この記事の画像(11枚)

タクシー運転手・桑原栄造さん:
人がいない。お店も開いていないですね。20時っていうラインで完全に街が変わる感じ。やってられないですよね、気持ちとしては

タクシー運転手・桑原栄造さん
タクシー運転手・桑原栄造さん

ため息交じりに呟くタクシー運転手、桑原栄造さん(56)。
夜の街でタクシーを走らせるようになって5年になる。

2度目の緊急事態宣言下で、かつてない厳しい状況に直面している。

タクシー運転手・桑原栄造さん:
(1日の売り上げが)今は1万円超えたら、いいですよ。売り上げが。(コロナ前と)1万2、3千円は違うのではないかな。(前は)2万円ちょっとは、行っていた

福岡県タクシー協会によると、県内のタクシー会社の2020年4月、5月の売り上げの平均は、前年と比べて約7割減少。

その後、少しずつ持ち直しつつあったものの、12月以降は第3波と2度目の緊急事態の影響で4月、5月並みの落ち込みが予想されている。

タクシー運転手・桑原栄造さん:
「ああ、またか」っていう感じですね。去年のような状態になるんだろうなと。走っていてもつかまらない、配車はこない、不安がつきませんよ。このまま続くと生活に支障が出てきますし

夜の時間帯のタクシー稼働数 通常のおよそ半分に

コロナ禍で苦境に陥っているタクシー業界。
桑原さんが務める会社では、夜の売り上げが見込めないため、ドライバーに指定休を取らせることを決めた。

北交大和タクシー取締役・今吉昌崇さん:
(宣言が発令されて)夜の飲食店が20時に閉店になることで、それ以降の時間帯の仕事が殆どない。10台いても5台いても、売り上げは変わらないだろうと

指定休で夜の時間帯のタクシーの稼働数を通常の約半分に調整。
休業したドライバーには、国の雇用調整助成金を活用し、給与を補償する。

しかし、会社の経営状況の改善には繋がらないと話す。

北交大和タクシー取締役・今吉昌崇さん:
(雇用調整助成金は)社員の収入確保に充当されるかもしれないけど、会社に対しては何も入らない。(今月以降も)対前年の40%近くくらい売り上げは落ちるでしょうし、その40%分を補償して下さいって言いたいけれども、こればかりは

「一喜一憂しないで自分を信じてやっていくしかない」

午後10時過ぎ。

タクシー運転手・桑原栄造さん:
全然人がいない

この日、午後4時から乗務を始めた桑原さん。
小倉の街でタクシーを走らせるが、利用客はなかなか現れない。

タクシー運転手・桑原栄造さん:
きょうはひどいですね、今は売り上げが4,800円ですよ

桑原さんのこの日の売り上げは、午後10時の時点で4,800円。
なんとか売り上げをあげようとタクシーを走らせること3時間。
午前1時過ぎ。

タクシー運転手・桑原栄造さん:
お待たせしました、ありがとうございます

日付が変わった午前1時過ぎに、ようやく利用客が乗車した。

タクシー運転手・桑原栄造さん:
いやあ良かったですよ、ほんと。売り上げがよくなかったんですよ。
おおって思いましたね、本当に

乗務終了間際に利用客が現れ、桑原さんの顔にも思わず笑みがこぼれた。

車内の会話女性客:
ここです

タクシー運転手・桑原栄造さん:
ここでいいですか?はいどうも、すみません

女性客:
ありがとうございます

タクシー運転手・桑原栄造さん:
すみませんどうも。お疲れ様でした

女性客:
ありがとうございました

午前2時過ぎ。
最後の客を送り届け、この日の売り上げは14,000円。
なんとか最後に巻き返すことができた。

緊急事態が続く中で、苦しい状況が続くタクシー業界。
先が見通せない中でも桑原さんは夜の乗務を続ける考えだ。

タクシー運転手・桑原栄造さん:
(タクシーは)人の足でもあるわけですから、「助かった!」と言ってくれる人もいますし、できないと思い続けたら、良い方向には進まないと思うんですよね。コロナのこの状況に一喜一憂しないで、自分を信じてやっていくしかないと思います

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。