衆院内閣委員長が菅政権に求める“国会での丁寧な対応”

新型コロナウイルス対策をめぐる「後手後手」批判などにより国民からの支持が低下している菅首相。施政方針演説で「安心と希望」を強調し、「国民の命と健康を守り抜く」と決意を語ったが、それを実現するための策の1つが、新型コロナ特別措置法などの改正や、デジタル庁設置法案などの成立だ。これらの法案の審議を取り仕切る“行司役”が菅政権について次のように語った。

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「菅政権は携帯電話料金の引き下げやデジタル化もそうですが目線を低くやっています。言い換えれば現場感がある。あとは、これを国民にきちっとどう伝えていくかが重要で、この通常国会でも現場から出てきた声、これを実現出来る政権で有ってほしいと思います」

FNNの取材に対し、国会における法案審議での政府の丁寧な対応を求めたのは、木原誠二・衆院内閣委員長だ。実はこの国会での内閣委員会の役割は極めて重要で、木原氏はキーパーソンの1人だと言える。

特に、内閣委員会で審議される新型コロナ特措法と感染症法の改正案は、罰則の重さなどをめぐり与野党に隔たりがあることを踏まえ、委員会の理事らによる修正協議が行われた。こうした中で、自民党出身でありながら与野党の行司役の委員長である木原氏がどのように審議を差配するかは重要だ。

そこで木原委員長に、新型コロナ対策において今、政治に求められるものについて聞いた。

新型コロナ対策で求められる有事の“スピード感”

木原氏がまず指摘したのが、政治のスピード感の必要性、逆に言えば日本の政治全体に見られる政策決定の“遅さ”だった。

「そもそも日本の政策決定過程というのは非常にスピードが遅い。総理がやるといってから1か月以上かかって対策ができる。これは平時モードの対応なので、やはり危機時には予算書は印刷しないでデジタルでやっちゃうとか、与党の審査プロセスは省いちゃうとか、そういうスピード感というのを平時から考えないといけないと強く感じています」

今回の新型コロナ特措法や感染症法の改正案について、政府与党は国会審議を衆参2~3日ずつとするスピード審議とした上で2月上旬に成立させる方針で、野党も基本的に応じる構えだ。しかし現時点で発令されている緊急事態宣言が2月7日に期限を迎えることなどに照らし、これでも遅すぎるという批判の声もある。

木原委員長はそうした声も踏まえ、一連の新型コロナ対策に“スピード感”がより必要だとした上で、コロナ禍のような有事における政策決定のプロセス自体を今後考え直すべきだと指摘した。

罰則の適用や、国民への支援策には“公平感”が必要だ

一方で、コロナ特措法や感染症法の改正案には、感染防止対策の実効性を担保するための『罰則』が盛り込まれていて、国民の権利を制限するものであるため、慎重な議論を求める声も根強い。また、政府の要請や命令に事業者などが応じるようにするための前提とも言える「支援・補償」のあり方も議論のポイントになっている。

木原委員長は、これらを考える点で大切な要素として“公平感”を挙げた。

有事においてこそ、政策にはより公平感が求められます。例えば、飲食店への時短要請では支援策への公平感が重要ですが、国民への自粛等の要請においても公平感は守られるべきです。そして国民にそうしていただくための政策をしっかり担保していく必要があります」

木原委員長はこのように述べたうえで、「政治の最大の役割は困っている人を助けることです。格差是正とか、弱者に光を当てるとか、そういった政治を平時から行っていくべきです」と強調した。コロナ禍という経験が、“経済成長優先”から“国民全体の公平”へという、政治の意識転換を迫っているという考えだ。

注目のワクチンは究極のアナログ対応。だからこそ政府には現場感が欠かせない

さらにコロナ対策として大きな期待がかけられているのが“ワクチン接種”だ。菅首相も「感染対策の決め手」と強調し、発信力の高い河野規制改革相がワクチン担当大臣に就任したことも注目を集めた。このワクチン接種を巡る動きについて木原委員長は、“国民目線の現場感覚”と“世界規模での協調”という2つの視点で、今後に注目しているという。まず、“現場感覚”についてこう語った。

ワクチン接種は現場感覚が最も求められる事態です。そういう意味では極めてアナログです。ワクチンの運搬や保管、さらには接種場所、何よりも医療従事者の確保など、これらはまさに現場の感覚や調整能力といったアナログな力が求められます。菅政権には緻密な対応をぜひやっていただきたいです」

さらに“世界規模での協調”については、次のように語った。

「我々が注意しなければいけないのは、日本だけ打てても、あるいはアメリカやヨーロッパだけがワクチンを打てても、それは100%の回復ではないということですね。アフリカや中南米、中東含めて世界中が協調しながら連携しながらやっていくことが大切だと思います」

内閣委員会での議論がポストコロナ社会への試金石に?

新型コロナ対策に関してはとかく国内にばかり目が行きがちだが、木原氏はワクチン問題を含むコロナ対策をきっかけに、政治家にも今後「世界と共に協調しながら1つの課題に進んでいく」という感覚が必要になってくると指摘した。そのうえで、東京オリンピック・パラリンピックについて、「新型コロナウイルスを克服した最初のオリンピック開催地は、来年予定される中国・北京ではなく民主主義・自由主義を大切にする東京であるべきですね」と強調した。

内閣委員会での法改正の議論で求められる「スピード感」と「公平感」は、まさに今の菅政権に必要とされるものとも言える。そしてワクチンに関して木原委員長が指摘した「国民目線の現場感覚」と「世界の協調」もポストコロナ社会の構築に向けて重要なポイントだ。

菅政権あるいは日本社会が進むべき道を示し国民の共感を得られるような、スピード感と内容の濃さが両立した議論が、内閣委員会で展開できるかどうか、木原委員長の手腕もまた問われている。

(フジテレビ政治部 福井慶仁)

福井 慶仁
福井 慶仁

フジテレビ 報道局社会部 元政治部