全盲の男性が障害者のための施設を設立

全盲というハンディキャップをものともせず、障害者が少しでもよりよい生活を送れるようにと奔走する男性がいる。男性を動かす原動力は何なのか。その姿と、この男性が立ち上げたある施設を取材した。

仲間と息を合わせて、軽やかにギターを弾きこなす男性は、金村厚司さん、60歳。実は金村さん、目が全く見えない。

30歳で全盲になった金村厚司さん
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20代半ばから、歩くのにつえが必要となり、30歳で全盲になった金村さん。しかし、自身のハンディキャップは、どこ吹く風とばかりに、日々を精力的に過ごしている。

金村厚司さん:
自身が障害者になって、やっぱり世の中の不便さをつくづく実感したのが最初で、何か世の中が障害者の方も住みやすいようにならんのかなというのがきっかけで

金村さんは、ケアマネージャーを手始めに、社会福祉士、精神保健福祉士といった福祉関係のさまざまな資格を取得。

福祉関係など多数の資格を取得した金村厚司さん

さらに、障害者の立場にもっと寄り添った介護サービスを自らの手で提供したいと、NPO法人を立ち上げ、今ではスタッフ100人、年間2億5,000万円の事業規模を誇る組織にまで成長させた。

スタッフ100人の事業規模を誇るNPO法人に

金村厚司さん:
見て分かることでも、触らないと分らないのが視覚障害者なんでね。なので、施設の入居者の中でも、1人だけ孤独を感じたりすることが多いと聞いてます。見えないっちゅうのは、やはりかなり大きなハンディなんです

現場で、利用者の声を聞くことも多い金村さん。自分と同じ視覚障害の人たちから話を聞いたことをきっかけに7年前、愛媛・松前町にある施設を造った。

全国でも初めてという、視覚障害者専用のグループホーム「こいこい」。

全国初という視覚障害者専用グループホーム

「こいこい」の定員は、7人。入居者の部屋は、8畳1間の個室で、風呂・トイレは共同。施設内の設備は、自由に使うことができ、専門スタッフのサポートを24時間受けながら共同生活を送る。

利用料は、1日3食の食費と水道・光熱費を含めた月7万2,500円から。初期費用も必要なく、8万円ほどの障害者年金の範囲内でまかなえるようにした。

24時間体制のサポートを受けながら共同生活

金村厚司さん:
障害があるだけでね、お部屋を貸してくれないとかいうこともあったり、おひとりで障害を持って住まわれてる方の心細さとかそういうことも、いろいろ伺ったりするので

ルールは「できるだけ自分で…」

愛媛県内にいる視覚障害者は、5,000人。その多くが、人生の途中で目が見えなくなった人たち。2020年7月に入居した47歳の宮本泰史さんもその1人。

2020年7月に入居した宮本泰史さん:
左目から全く見えなくなって…。で、右目もじわじわと…。今は、明るい暗いがなんとかわかるくらいで

緑内障が原因で、10年前に左目、2年前に右目の視力を失い、全盲になった宮本さん。両親はすでに他界し、身近に頼れる親族もいないため、西予市三瓶町の実家を離れ、松野町の施設に入っていたが、福祉関係者の紹介で、ここに移って来た。

2020年7月に入居した宮本泰史さん:
こっちだったら視覚障害者の人ばっかりなので、自分から希望して入った

「こいこい」でのルールは、自分でできることは、できるだけ自分でする。そこには、可能な範囲で社会復帰を促すという目的もある。
宮本さんも入居から半年がたち、部屋の掃除や洗濯を自分でできるようになった。

2020年7月に入居した宮本泰史さん:
こうやってできていったら、また次なにかやろうかなと思う

できることが増えたという宮本泰史さん

歌が大好きで、2021年で70歳を迎える全盲の石川千賀子さん。30年ほど前に夫を病気で亡くし、松山市内のマンションを転々としながら、1人暮らしを続けていた。

石川千賀子さん:
マンションの暮らしのように、周りに気を使わなくていい。ここの生活は、この歳にピッタリですよ。のんびりできて

入居して4年。同じ障害がある人たちとの共同生活は、当初考えてたよりも快適だったという。

石川千賀子さん:
仲間と昔の話をして笑いあったり、失敗を笑いあったり、痛みを分け合ったりいうか。親でも兄弟でも、見えないっていうことは難しいですよ、理解するには

 

“仲間”との生活が前へ進む原動力に

入居者にとって一番の楽しみは、外出。宮本さんは週に2回、ガイドヘルパーのサポートで外の空気を満喫する。この日は、歩いて10分ほどのスーパーでコーヒーを買った。

入居者にとって一番の楽しみという外出

視力を取り戻すことはできないが、宮本さんは、少しずつできることが増えている。

2020年7月に入居した宮本泰史さん:
入った時は、ちゃんとできるんかなと思いよったんだけど、日にちが経つにつれて、できるようになってきたんだけど。少しずつではあるけど、なんかやっていけそうなというあれはありますね

 

独りではない安心感。そして理解し合える仲間との生活は、心身の平穏を生み、前へと進む原動力にもなっているようだ。

金村厚司さん:
健常者の方が障害者になったら、不幸を感じるのが今の世の中ですよ。障害者になったとしても、不幸になったと感じない世の中が実現するように…。するのか、しないのか分からないけどね。そうなったときに、初めて障害から(社会が)解き放たれたと言えるんじゃないの、そういう世の中が来たら楽しいなと思いますけど

「よりよい社会を」と語る金村厚司さん

(テレビ愛媛)