電子決済が広く普及している中国で、中央銀行が発行するデジタル通貨の大規模な実証実験が行われている。

上海支局・森雅章記者:
実証実験が行われていますスーパーに来ています。
中にはご覧のように使用を推奨するマークが多数表示されています。
そして実際に使われますデジタル人民元はと言いますとこちらになります。

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「デジタル人民元」実証実験の現場では

上海の隣の蘇州で行われている、中国で2回目の「デジタル人民元」の実証実験。

前回の倍の10万人に専用アプリから、1人あたり200元、日本円でおよそ3,000円を支給する3億円規模のもので、スーパーのレジでは、参加者がスマホを使ってデジタル人民元による支払いを体験した。

「デジタル人民元」利用者:
ちょうど牛肉とおやつを買ったところ。
とても便利。1回使えば、やり方はすぐにわかる

「デジタル人民元」利用者:
お年寄りにとっては、スマホを操作しながらパスワード入れたり、ステップが多い気がする。
少し不便かもしれない

中国では、すでに電子決済が広く普及しているが、中央銀行によるデジタル通貨を実用化することで、人民元の国際化を促進し、アメリカドルに対抗しようという狙いがあるとみられる。

デジタル通過には安全面の課題が

三田友梨佳キャスター:
こうしたデジタル通貨が広がっている背景には何があるのでしょうか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
こういった中央銀行が発行するような、ある種、法定通貨をデジタル化する。
かなり影響が大きいことですけれども、実際は新興国でこのニーズはものすごく強いです。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
実際に、現金があまり普及してないようなところでは、現金を発行して流通させる。
これ、かなりコストかかりますし、また場合によってはそれを不正利用される。
マネーロンダリングのようなものを防ぐためにデジタル通貨の必要性が高まっている。
こういったところが背景にあるのです。

ただ一方で、デジタル通貨が進みますと、お金の流れというものが全て見えるようになりますから、個人のデータというものもしっかり管理できるのかどうかとか、セキュリティーの安全面だとかの課題があるので、慎重に議論するべきという声も根強くあるのです。
このあたりがこれからの課題になってくると思います。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
特に日本では、これだけ現金が普及していますし、最近は民間の電子マネーみたいなものもかなり普及に向けて動いていますから、こういう法定通貨そのものをデジタル化するというニーズは、途上国に比べてはかなり低いと思うのですけれども、ただ全体のデジタル化の流れがありますから、こういったデジタル通貨のあり方を現金だとか電子版をどう両立させるか。
ここを考えるのが日本での課題になってくると思います。

ドルや円にも影響?

三田友梨佳キャスター:
今後、デジタル人民元が広がった場合は、日本や世界に対してはどのような影響があるのでしょうか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
デジタル人民元が広がっていくというのは、2022年にはもうほぼ実用化を目標に動いているということでかなり現実のものになってくる。

実際に、先進国というよりも新興国でこういったニーズが強いということになりますと、アフリカであるとかアジアであるとかですね。
こういったところの中で、デジタル人民元を活用したいニーズというのはこの先出てくる可能性が高い。

そうしますと世界の中で人民元のシェアが高まって、現在の基軸通貨であるドルそのものの信認性が低下していって、ドルと関係が深い円も相対的にポジションが落ちていく。
こういった懸念も考えられる。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
日本にとっては脅威になり得る可能性もある。
こういったことに呼応する形で、欧州とアメリカと組んで、中央銀行がデジタル通貨の世界のあり方を考える。
こういった共同研究も進んでいるのです。

欧州でも来年から、そのあたりの方針が決定される。
日本に関しては来年ようやく実証という段階ですから、まだまだスピードアップをしていく必要があると思います。

三田友梨佳キャスター:
通貨のデジタル化は時代の流れといえるのかもしれません。
今後の展開が注目されます。

(「Live News α」 12月25日放送分)