北九州市の「台所」として約100年に渡り、市民に親しまれてきた小倉北区の旦過市場。
2021年から再整備が進められる予定だが、それを前にして市場で約70年続く果物店の“おかみさん”の思いを取材した。

八木さんは、約70年続く果物店を夫と2人で切り盛りしてきた。

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八木和子さん:
私たちが、店に関わるようになってから、もう55年はなるよね。結婚式したら、すぐ2人に店を任されたのよ。何にも分からないまま、お店をし出したから、もう無我夢中だった

八木さんの果物店がある旦過市場の歴史は、ほぼ100年。
新鮮な野菜や果物、海の幸を売る店が所狭しと並び、市民の台所として長年親しまれてきた。
八木さんが店を任された1960年代、市場の活気は今とは比べものにならなかったと話す。

八木和子さん:
その頃は、お客さんが凄かったからね。昔はね(1年間で)360日はここで商売していたんですよ。お正月とかは、もう31日は朝しか帰れなかった。そういう時の方が懐かしいね、やっぱり

八木さんが長い時間を過ごしてきた旦過市場。
その市場が今、大きく姿を変える転換点を迎えている。

老朽化と豪雨被害で整備が必要に

八木和子さん:
ここの上がね、木組みの屋根なんよ。馬小屋を崩して廃材でここを建てたんですよ。本当に珍しい、こんな古いところが、まだあったんかなっていう

八木さんの店だけでなく、市場にある殆どの建物が築60年以上。老朽化が進み、雨漏りなどの問題も増えている。

さらに、市場のそばを流れる川が2009年、2010年と2年続けて氾濫。殆ど全ての店が被害に遭った。

八木和子さん:
この付近まで、冷蔵庫のこの部分が全部浸かったんですよ。シャッター開けたら、もう濁流、ずあーって流れてきた。あれを見てみんなも、やり代える気になったんじゃないかな。北九州市も、これじゃ危ないと

2度の浸水と建物の老朽化をきっかけに、市場側と北九州市は8年前から議論を重ね、再整備計画を策定。
2027年度中までに河川改修と区画整理を進めるほか、市場の店が入居する4階建ての複合商業施設も建設される予定。

八木和子さん:
あとのことを考えたら建て替えるべきかなと思うし、仕方ないかなと思う。でもね、日ごとにやっぱり、いざ(再整備)となったら寂しいよね。本格的だなって思ったときに、ふとね、心の隅が寂しいなって、終わるのかなって

お店に立ち始めて55年。愛着がある今の店がなくなる寂しさが募る。

新しくなっても変わらない”おかみさん”

しかし、八木さんは新しく生まれ変わった店に立ち続けることをすでに決めている。

八木和子さん:
子どもたち、孫たちがいるから。お母さんは一生懸命ここを守ってきたから、あなたたちも守ってねって。旦過なくては私たちの存在もないんです。素晴らしいところよ、ここは。感謝してる

大きな転換点を迎えている旦過市場。
期待や寂しさなどさまざまな思いが交錯するなか、2020年度中に再整備着手に向けた国の認可を得ることになっている。

(テレビ西日本)

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