重症化すると合併症で死亡も

「はしか」=麻しんのウイルスは、感染力が極めて強く、免疫を持っていない人が接触すると、ほぼ100%感染します。しかも、感染すると100%発症するという、相当に強力なウイルスです。
「子どもの病気」と思われがちですが、大人も感染します。

 
 
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麻しんで怖いのは合併症で、命の危険も伴います。30%の患者に合併症がみられ、その40%が入院を必要とします。その中でも、肺炎と脳炎が、麻しんによる二大死因となり、注意が必要です。

大人になってから発症すると重症化しやすいとされ、注意が必要です。
しかし、ある理由によって、近年の発症者は27~40歳の「大人世代」に集中しているのです。

27~40歳は免疫の「空白世代」

麻しん予防の唯一の方法は、ワクチン接種をすることです。ただし、1回接種では十分な免疫がつかないことや、年数を経ると免疫が低下することがあり、2回接種で確実な免疫がつくとされています。麻しんの予防接種は、1978年に定期接種になりましたが、まだ1回接種でした。

1988年から、MMRワクチン(麻しん・おたふくかぜ・風しんの混合ワクチン)が認可されましたが、おたふくかぜワクチン株による髄膜炎が多発してしまいます。これを受け、1993年にMMRワクチンは中止。以前の麻しんワクチンに戻りますが、このことで接種率は一時低下します。

その後、2006年から1歳児と小学校入学前1年間の幼児の2回接種制度が始まったのです。

 
 

2007年夏に麻しんが大流行しますが、患者は10~20代に集中。高校、短大、大学など160校以上が休校しました。そこで、2008~2012年度の5年間に限り、中学1年と高校3年相当年齢の人に2回目のワクチン接種が導入されました(キャッチアップ・キャンペーン)。

こうした経緯から、現在の27~40歳は(キャッチアップ・キャンペーンからも外れ)免疫がある人/ない人が混在する”空白世代”になったのです。

空港で集団感染も!

2回接種導入で、2008年には1万人を超えていた麻しん患者数が、2009年以降は数百人に激減。そして2015年 WHOから、はしかは「排除状態」にあるという認定を受けました。

では、なぜ今、患者数が増えてきたんでしょうか?

実は海外渡航者が現地で感染して、麻しんウイルスを持ち込んでいるのです。現在は、インドネシア等の東南アジアやモンゴル、またイタリアやルーマニアなど欧州でも流行していて、死亡者も出ています。

 
 

多くの海外渡航者が行き来する空港は、最もリスクの高い場所のひとつです。自分は流行国に行っていなくとも、流行国で感染した帰国者からの感染(空気感染・飛沫感染・接触感染)は十分にあり得ます。

関西空港で2016年発生した集団感染では、空港の従業員32人、医療関係者2人、一般客3人の計37人が発症しました。そのうちの1人がコンサート会場に行き、さらに2人が感染しました。

麻しんには治療法はありません。解熱などの対症療法しかないので、ワクチン接種で免疫獲得しておくことが最重要です。“空白世代”をはじめ、1回しか摂取していない人は改めて、ワクチン接種を検討してみて下さい。2回目の接種で、低下した免疫の増強効果も見込めます。大人が接種する場合は8000円前後の費用がかかります(医療機関によって異なる)。


(執筆:Watanabe Chiharu)

プライムオンライン編集部
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