「ジャポニカ学習帳」風の広報冊子を無料配布

「週刊誌の中吊り広告」風の広報チラシが去年(2019年)から話題となっている北海道旭川市に隣接する鷹栖町の町議会。

「週刊誌の中吊り広告」風の広報チラシ(提供:北海道鷹栖町・議会事務局)
「週刊誌の中吊り広告」風の広報チラシ(提供:北海道鷹栖町・議会事務局)
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今度は、「ジャポニカ学習帳」風の広報冊子「議会傍聴ガイドブック」を作成し、12月14日、15日に開かれた、鷹栖町議会の定例会の傍聴者に無料配布した。

表紙と裏表紙は「ジャポニカ学習帳」にそっくり…というか、ほぼ、そのまま。

議会傍聴ガイドブック(提供:北海道鷹栖町・議会事務局)
議会傍聴ガイドブック(提供:北海道鷹栖町・議会事務局)

「ジャポニカ学習帳」という文字の代わりに「議会傍聴ガイドブック」と書かれ、真ん中には「鷹栖町議会の議場の写真」があしらわれている。

表紙をめくると、最初のページにあるのは「楽しい傍聴のために」。

この冊子の意図が以下のように説明されている。

鷹栖町議会では町民の皆さまに議会に傍聴に来ていただくため、定例会のご案内チラシの発行、一般質問の通信簿の実施など、さまざまな取り組みを行っています。
傍聴に来ていただいた方には本会議を理解していただくため、議会のルールについて小冊子にまとめました。
なるべくわかりやすくお伝えするため、Q&A方式で記述しています。

中身を読むと、「誰でも傍聴できるの?」「トイレが心配…出入りは自由?」「傍聴の記念に…写真撮影してもOK?」「傍聴者のドレスコードは?」といった“基本的なルール”から、「一般質問ってなに?」など“一般質問の基本”、「答弁する人はどう決まっているの?」といった“議事進行の決まり”に至るまで、写真やイラストを交えて、分かりやすく解説してくれている。

中身は興味深いが、なぜ、表紙と裏表紙を「ジャポニカ学習帳」風のデザインにしたのか?
また、「ジャポニカ学習帳」風にしたということは、ショウワノートの許可はどうしたのか?

北海道・鷹栖町、議会事務局の担当者に話を聞いた。

ショウワノートの許可は取ってある

――「週刊誌の中吊り広告」風のチラシは話題になった。鷹栖町議会への関心は高まった?

議会の傍聴者が増えただけでなく、普段は来ない方も傍聴にいらしています。町民の方からチラシを見た、と声をかけてもらうことも増えました。

鷹栖町議会に関心を持つ方が増えている、という感触は持っています。
 

――「議会傍聴ガイドブック」を無料配布。狙いは?

鷹栖町議会議員選挙が3期連続無投票という結果を受け、議員全員でワークショップを行い、どうすれば、なり手不足を解消できるかを協議しました。

その中で、今期4年間の取り組みについての計画を立てました。
この計画に従い、議会に興味を持ってもらうための広報活動を行い、それが「週刊誌の中吊り広告」風チラシの取り組みにつながっています。

今回の広報冊子「議会傍聴ガイドブック」の作成は、議会のことを理解してもらうための取り組みで、今年7月から作成を開始しました。傍聴者へのアンケートで出た意見も参考に、議員全員で項目を考え、それをわかりやすく伝えるため、4名のチームで編集しました。
 

――表紙と裏表紙は「ジャポニカ学習帳」風に仕上がっている。ショウワノートの許可はとっている?

ショウワノートさんの許諾を得ており、裏表紙にはその旨の記載もしています。

問い合わせ窓口に電話したところ、担当の方につないでいただきました。メールでデータを確認していただき、裏表紙に記載する文言などをご指導いただきました。

裏表紙にはこのような文言が記載されています。
「この枠部分のデザインは、ショウワノート株式会社の立体商標であり、使用にあたり同社の許諾を受けております」
 

――「ジャポニカ学習帳」風のデザインにしたのはなぜ?

誰もが一度は使ったことがある、なじみのあるデザインなので、親しみをもってもらうことができるのでは、と考えました。また、学習帳で学ぶように、難しく考えず、楽しみながら議会のことを知ってもらえればと考え、デザインしました。

「ジャポニカ学習帳」は、表紙を通して、子どもたちに自然に興味を持ってもらうという思いがあるそうです。そのデザインの力を借りて、議会に興味を持ってもらいたいという思いもあります。
 

裏表紙(北海道鷹栖町議会「議会傍聴ガイドブック」)
裏表紙(北海道鷹栖町議会「議会傍聴ガイドブック」)

とくに読んでほしいのは「一般質問の見どころは?」

――「議会傍聴ガイドブック」。とくにこだわったところは?

“傍聴にいらっしゃる方の立場に立って作る”ということです。

こういうことを疑問に思うのでは…と考えながら、気軽に読んでもらえるよう、固くなりすぎないような表現を心がけました。
 

――とくに読んでほしいページは?

13ページの「一般質問の見どころは?」です。

鷹栖町議会では、傍聴者の方に一般質問を評価していただく「通信簿」の取り組みをしています。「一般質問の見どころは?」では、一般質問を評価する際にこういうところを見てほしい、ということをまとめています。

龍谷大学の土山希美枝教授の著書を参考に「よくない一般質問」の例も記載しているのですが、このページは一般質問をする議員も度々、確認しています。
 

13ページ「一般質問の見どころは?」(北海道鷹栖町議会「議会傍聴ガイドブック」)
13ページ「一般質問の見どころは?」(北海道鷹栖町議会「議会傍聴ガイドブック」)

3期連続で無投票選挙の町議会

――鷹栖町議会議員選挙は3期連続で無投票。これはなぜ?

町民の方が議会に興味・関心を持っていないことが原因と考えています。

そのため、興味・関心を持ってもらうことを優先的に考え、賛否両論があることは覚悟の上で、このような取り組みを行っています。
 

――現在、鷹栖町議会議員は何人いる?

12名(定数も12名)です。

平均年齢は58.7歳。30代が1名、40代が1名、50代が2名、60代が7名、70代が1名です。
 

――「議会傍聴ガイドブック」を作成した4名は若手議員?

チームの4名は、片山兵衛議員(42歳)、桑原芳文議員(60歳)、沢口仁議員(55歳)、川原允議員(33歳)。

片山議員は3期目ですが、それ以外の3名は1期目の議員です。行政・議会との関わりが少なかった1期目の議員を中心にチームを組みました。
理由は、1期目の議員ならではの新鮮な視点を入れることで、より傍聴者の立場を考えて、作成できると考えたからです。
 

※「議会傍聴ガイドブック」を作成した4議員(北海道鷹栖町議会「議会傍聴ガイドブック」)
※「議会傍聴ガイドブック」を作成した4議員(北海道鷹栖町議会「議会傍聴ガイドブック」)

過疎化が進む、鷹栖町の現状

――鷹栖町の現状についても伺いたい。過疎化は進んでいる?

過疎化は進んでいると考えています。

高齢化率(町内の総人口に占める65歳以上人口の割合)は30.3%、全国平均の26.7%を上回っています。一方、総人口に占める15歳未満の人口の割合も14.8%で、全国平均の12.7%を上回っています。
 

――過疎化を食い止めるためにどのような対策をとっている?

「移住定住対策」に重点をおいています。
 

――具体的には?

移住相談窓口を設け、移住希望者に寄り添った相談を受けているほか、首都圏などでの移住相談会への出展、移住希望者の受け入れとして移住体験ツアーや移住体験の実施をしています。

支援としては、新築住宅や空き家改修への補助、鷹栖町内の空き家・空き地物件の賃貸・売買情報を掲載する「空き家・空き地バンク」の整備などを行っています。

鷹栖町HP
鷹栖町HP

過疎化などの課題を抱える北海道・鷹栖町で町議会に興味を持ってもらおうと1期目の議員を中心に作成した「議会傍聴ガイドブック」。
郵送の対応もしており、鷹栖町在住ではない人が手に取ることも可能だというので、興味がある人は問い合わせてみてはいかがだろうか。
郵送希望の問い合わせは、鷹栖町議会事務局(TEL:0166-87-2111)。
 

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

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