消えていた昆虫シリーズが復活
覚えるために何度も繰り返し漢字を書く“漢字練習帳”や、休み時間に友達と落書きした“自由帳”など、子供の頃に多くの人が学習ノートを使ってきたことだろう。
特に、表紙に昆虫や花の写真が載った、ショウワノートのロングセラー商品「ジャポニカ学習帳」は誰もが一度は使ったことがあるのではないだろうか。
その「ジャポニカ学習帳」だが、実は2012年の表紙から昆虫写真が消えていたことを知っているだろうか?
この昆虫シリーズが、ジャポニカ学習帳の誕生から50周年を記念して、このたび復活することになったのだ。
それがこちら。
種類は、漢字練習帳の84字(リーダー入り)・104字・120字、自由帳、自主学習帳(5ミリ方眼罫リーダー罫入り)と全5冊。「パプアキンイロクワガタ」や「ケープソライロハナムグリ」など、裏表で異なった珍しい昆虫写真が載っている。サイズは全てB5判で、価格は190円(税抜き)。
そして今回の表紙も、1978年からジャポニカ学習帳の写真を撮影してきたという、昆虫生態カメラマンの山口進さんが担当。そして表紙裏には、これまでは写真で紹介されていた山口さんの昆虫エピソードが、イラストとなって再現されているという。
さらに今回の50周年記念では、新たに“昆虫イラストシリーズ”の表紙が登場。
5ミリ方眼罫の自主学習用のみとなるが、表紙は表裏で、「カマキリ」や「カミキリムシ」など異なる昆虫が描かれた5種類となる。
こちらの表紙裏でも昆虫の不思議な生態を同じくイラストで紹介しているそう。こちらもサイズはB5判のみで、価格は190円(税抜き)だ。
昆虫シリーズを使っていた人には懐かしく、昆虫好きにはうれしい今回の復活。しかし、そもそもなぜ昆虫シリーズは姿を消していたのか?この度の復活の理由とは?
ショウワノート株式会社の開発本部・学習帳開発の小原崇係長に教えてもらった。
「昆虫の魅力を再発見してほしい」
ーーなぜ昆虫シリーズは2012年に姿を消した?
理由としては2つあります。
(1)2000年頃に各学校で先生方が新学年の最初に、一括して授業で使うノートを配布するという事が増えてきました。それは、ノートによってはマス目の数や行数などが違うので、それを揃えることで、授業を効率よくスムーズに進めるためでした。
しかし、ジャポニカ学習帳は1つの種類に1つの表紙しかないため、昆虫が苦手な子にも、先生方は昆虫の柄を配らざるをえない状況になってしまいます。
先生方からも「虫が嫌いな子もいるので…」といった声もあり、先生方がジャポニカ学習帳の使用を止めてしまうのを回避するために、2012年に昆虫写真を止めた経緯があります。
(2)2012年からの“アフリカ編”というシリーズがあり、それの表紙撮影をした際に、いいモデルとなる昆虫を撮影できなかったからです。
その地域固有の生き物をというのがコンセプトで、昆虫の写真がなかなか撮影できず、昆虫シリーズが消えた経緯があります。
ーーなぜ、50周年を記念して復活することになった?
小学生に昆虫の魅力を再発見してほしい。今環境問題で昆虫が注目されており、環境問題に目を向けるきっかけにしたいという思いからです。
同社によると、1970年から販売しているジャポニカ学習帳だが、当初、表紙はジャポニカ百科事典(小学館)から動植物の画像を選んで引用使用されていたのだとか。
それが1978年頃からショウワノートで写真を撮るようになり、そこから世界特写シリーズということで、写真家の山口進さんが撮影する、昆虫や花がレギュラーとして表紙になっていったという。
ちなみに、今回選ばれた昆虫は、見た目のインパクトと姿の面白さから選ばれたという。
リアルを追求したかわいいイラスト
ーーイラストシリーズが誕生した理由は?
昆虫は意外にも可愛いと思える部分がたくさんあります。写真の昆虫が苦手なお子様でも昆虫を好きになってもらえるように制作しました。
ーー50周年記念ノートのこだわりの部分は?
昆虫写真の方は、今までのイメージを残しつつフレーム、ロゴを新しく変更しました。公表していませんが、フレームの昆虫のシルエットが全部で50匹=50周年とかけてます。
イラストシリーズの方は、可愛らしい昆虫のイラストです。実は昆虫をイラストに起こしてデザインをしています。ですので写真の昆虫が苦手なお子様でも昆虫を好きになってもらえるようにしました。
ーー復活したことへの反響は?
既にメディアを通して大きな反響をいただいています。過半数が昆虫復活に関してお喜び頂けているようです。
反響に対しては、期待する反面、やはり気持ち悪いなどというリアクションが出てしまう場合もあるかと心配しておりましたが、お喜び頂けているようで大変嬉しいです。
50周年記念の昆虫シリーズは、8月末から発売を開始している。
限定商品とのことだが、「売れ行きにより継続する可能性はあります。お客様次第でしょうか」と話しており、販売終了は未定とのことだ。
昆虫好きはさらに好きに、苦手な子供もイラストから手を伸ばしてみるのはどうだろうか? 今回の昆虫シリーズ復活はそのきっかけとなってくれることだろう。
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