全国の酒蔵が自ら配信

定休日のはずの店内に設置された撮影機材と打ち合わせをするスタッフ。
東京・三軒茶屋に蔵を構える「WAKAZE三軒茶屋醸造所」中で行われていたのは、お酒のライブコマース。酒蔵と消費者をつなぐ新たなプラットフォームの魅力を取材した。

この記事の画像(15枚)

日本酒スタートアップ「MIRAI SAKE COMPANY」が運営する、日本の酒蔵を応援するライブコマースプロジェクト「CHEERSAKE(ちあさけ)」。

自社でも酒店を展開していて、新型コロナウイルスの影響を実感していた。

MIRAI SAKE COMPANY・山本祐也社長:
そもそも、酒蔵が直接(販売をしに)東京に来る機会が激減してしまった。酒蔵は、一般であれば飲食店を通して販売していたが、そういった販路というのも同じく激減してしまった。

消費者も、そうなると同じく受け取れないということになる。
飲食店に行くことができないし、蔵の方と交流する場所もなくなったというところで、直接の場所が難しければ、オンラインだったらいいんじゃないかと。

「CHEERSAKE(ちあさけ)」の最大の特徴は、全国の酒蔵が自ら配信を行うこと。

プロジェクトに参加する酒蔵「WAKAZE」:
「このあいだのどぶろく、美味しくてスイスイ飲んでしまいました^^/」とのコメント投稿頂きました!

1本購入いただいたようでありがとうございます。リアルタイムで見られているところが、ちあさけのおもしろいところですね。

消費者は、コメント投稿や、配信動画からの直接購入も可能。

また、製造過程を紹介するのも、ライブ配信ならでは。

酒蔵「WAKAZE」:
こんな感じで、どぶろくは発酵しているんです。

消費者からの「狭くて作業しにくいとかはないんですか?」という質問には、「実は、4.5坪しか醸造スペースはなくて」と答える場面も。

売れ行きがリアルタイムでわかる喜び

醸造所の最高責任者、杜氏である戸田さんは、消費者と直接関わることはこれまで少なかったと話す。

WAKAZE三軒茶屋醸造所杜氏・戸田京介さん:
双方向でコミュニケーションがとれるという点と、このタイミングでお客さまに買っていただいたとか、今ここで10本売れているとか、売れ行きの状況もリアルタイムでわかるというのは喜びになる。

物理的にもそんなに大勢の人に対して話す機会というのはなかなか持てない中で、想像だが、いろんな地域の方がこの時間にライブで見てくれているのはうれしいこと。

今では全国7つの酒蔵が参加し、場所を選ばず、全世界にお酒の魅力を直接伝えることができるこのプラットフォーム。

MIRAI SAKE COMPANY・山本祐也社長:
いろんな地方に酒蔵、遠いところを含めて、北は北海道から、南は沖縄に日本酒蔵はあります。

そういった方々がどんどん参加をすると、ファンの方、消費者の方も交流の機会が持てるのでいいのではないかと思います。

日本食とのマリアージュで世界にPRを

三田友梨佳キャスター:
マーケティングアナリストの渡辺広明さんに聞きます。
酒蔵のこうした取り組みをどうご覧になりますか?

マーケティングアナリスト・渡辺広明氏:
コロナの影響で、酒に限らず客と生産者が直接繋がるインターネット通販がとても浸透してきています。

その中で、日本酒は酒蔵が全国にありますし、銘柄も多いのですが、会社として小さなところが多いです。なので客との接点が少なかったり、PRが十分じゃなかったりしますが、ライブコマースは世界に向けて日本全国どこからでも販売できることが接点として素晴らしいと思います。

三田キャスター:
渡辺さんから見て、生産者と顧客が直接取り引きするメリットは他にどんなところがあると思いますか?

渡辺広明氏:
卸に対する中間マージンをマイナスに出来ることや、物流費が削減できるので、客にとって価格が安くなることと、生産者として利益がとれることがポイントになると思います。

特に食品はトレーサビリティーが大切なので、製造や生産過程をしっかりと確認できることはとても安心ですし、生産者、開発者の思いが直接伝わることは買う気に繋がると思います。

三田キャスター:
生産者のこだわりを知ると買う側も商品に対する思いが一層高まりますね。

渡辺広明氏:
日本酒はワインと同じように生産者のこだわりがありますが、残念ながら世界にはまだ浸透していません。でも今、日本食ブームになっているので、食事と一緒にいただくマリアージュのお酒としてPRするチャンスですし、そこに乗っかっていけば世界に広がると思うので楽しみです。

三田キャスター:
ライブコマースによって日本酒の魅力を酒蔵の方から直接伺うことでまた新たな価値が生み出されると感じます。

日本酒ができあがるまでには大変な手間がかかっていると聞きますが、世界に向けても、日本酒を知らない人達に味はもちろんですが、その課程を含め魅力を正確に伝えていくことで未来はさらに広がっていくのかもしれません。

(「Live News α」12月14日放送分)