身近なスマートフォンやモバイルバッテリー。
「爆発の勢いで(窓ガラスが)割れて、中の煙と熱風がこちら側に流れた。ここがごみピット。当時のままの状態になっている」(「クリーンおしま」現場担当 道股成晃所長代理)
壁に突き刺さったままのガラス。
白かった壁は真っ黒に。
「時計が止まってしまった。爆発が起きた当時のまま時計だけが止まっている」(道股さん)
5時55分で止まったままの時計。
「リチウムイオン電池。ごみの中に入っていて発火をした」(「クリーンおしま」管理する広域連合 村田貴一さん)
この甚大な被害をもたらしたのは、リチウムイオン電池の可能性も。
2026年4月29日のことでした。
北海道南部の北斗市にあるごみ処理施設「クリーンおしま」から火が出ました。
「ごみピットで火災」(「クリーンおしま」従業員による通報)
収集車が運んできたごみをためておく1階のピット内から出火、建物の4階までが煙に包まれました。
鎮火までに6日を要しました。
「(Q.火災の時に中にいた人は?)無事というか、大丈夫だった」(道股さん)
「クリーンおしま」は、北斗市や七飯町など北海道南部の1市9町の燃やせるごみを焼却する施設です。
火災でごみの受け入れができなくなりました。
「こちらには私の背丈の倍ぐらいの高さの燃やせるごみの山ができています」(阿部空知記者)
たまっていくごみ。
2000トンほどが一時保管されていました。
火災後、札幌市や石狩市など10か所の施設にトラックや鉄道で運び込んで処理を委託し、しのいでいますが、それでも間に合っていません。
1市9町に大きな負担がのしかかります。
「2027年3月までに要する広域的なごみの輸送、ごみを受け入れてもらう焼却施設への委託料、総額として約29億円。約98億円の復旧工事費用を見込んでいる」(村田さん)
処理の委託費と復旧工事費で、総額約127億円の費用が。
巨額の損害に揺れる町がありました。
人口約2万6000人の七飯町です。
函館市のベッドタウンとして、子育て世代などが移住しています。
「クリーンおしま」をめぐる損害で、町は約127億円のうち約13億円の負担が見込まれています。
築53年ほどのスポーツセンターの建て替えを、一時凍結せざるを得なくなりました。
こうした状況に、町は思い切った一手を投じることに。
「これまで無料だったごみ処理手数料の有料化を検討している」(杉原太七飯町長)
火災を契機に家庭ごみの在り方を見直そうと考え、住民説明会を開きました。
「ごみ処理手数料の有料化で、持続可能な循環社会の構築につながる。どうか町民のご理解とご協力をお願いしたい」(杉原町長)
これまで10枚入りの指定ごみ袋を、20リットル・248円、45リットル・385円で販売していました。
これに1リットルあたり3円程度の処理手数料を上乗せする考えを示したのです。
20リットルが3倍の848円に、45リットルは4.5倍の1735円に。
20リットルで比較すると、札幌市の400円に対して2倍以上に値上がりすることになります。
「苦渋の決断。人口が減少してきているので、どうしても使える金が窮屈になってきている」(杉原町長)
この説明に町民は。
「すごく痛い。家計にかなりの響きかな」
「(値段が)高い」
「ごみ袋も必需品でしょ。ないと困るから」(いずれも七飯町民)
火災から半年、「クリーンおしま」は今も無残なままです。
「最初に火を発見したのは、クレーン操作室の窓から下をのぞいた際に、真下あたりで小さな火種を発見した」(道股さん)
家庭ごみが蒸されたような、鼻に突く異臭。
復旧まで2年はかかるとみられています。
「(Q.ここにもともとカーペットがあった?)そうです。ありました。こちらにも操作盤が。上の四角いのはライト」(道股さん)
いったいこの火災、原因は何だったのでしょうか。
「リチウムイオン電池、こういったものがごみの中に入っていて、発火をしたのではないかという可能性も考えられている」(村田さん)
調査の中で見えてきたのは、家庭ごみに紛れ込んだリチウムイオン電池による出火の可能性でした。
私たちの生活に今や欠かせない多くの製品に、リチウムイオン電池が使われています。
スマートフォン、モバイルバッテリーのほか、ハンディファンやコードレス掃除機にも。
今、このリチウムイオン電池が原因の火災が増えているといいます。
「(リチウムイオン電池を)廃棄する時に一般ごみに混入してしまうと、収集車やごみ処理施設の火災につながる恐れがある」(NITE 北海道支所 神山敦支所長)
これは身近な製品事故の原因究明などを行うNITE・製品評価技術基盤機構による、リチウムイオン電池の出火を再現した映像です。
強い圧力により電池が押しつぶされると、激しく発火することが分かります。
北海道内では、リチウムイオン電池による火災は2022年は22件でした。
それが2025年は、約2倍の39件に上ります。
「(リチウムイオン電池の廃棄は)自治体のルールを確認して、適切に排出してほしい」(神山支所長)
では、リチウムイオン電池の正しい捨て方とは。
「(札幌市でも)危険性を考えると、いつ火が出るか分からない状況になります」(札幌市環境局環境事業部 宮岡完さん)
札幌市では、ごみステーションに出さず、回収拠点に持ち込んでほしいと呼びかけています。
「市役所・地区リサイクルセンター、清掃事務所、回収協力店で回収している」(札幌市担当者)
「私が持っているモバイルバッテリー付き充電器を廃棄しようと思います。札幌市が案内しているこのサイトの地図によると、こちらのホームセンターで廃棄することができます」(阿部記者)
札幌市では78か所で回収しています。
「この私の持っているモバイルバッテリーを廃棄したいんですが」(阿部記者)
「サービスカウンターで承りますので、こちらお願いします。(モバイルバッテリーの)ここに、リサイクルマークが付いておりますので、このまま受け取ります」(DCM旭ヶ丘店 目黒貴美子さん)
巨額のごみ処理の負担に揺れる町で、新たな動きがありました。
「(ごみ処理手数料の有料化を)現在のところは時期だとか金額は一旦白紙に戻す」(杉原町長)
七飯町は指定ごみ袋を値上げする案を、わずか1か月で白紙に。
マチのごみ騒動。行政を動かしたのは、町民からの反対の声でした。
「なかなか短い期間で(住民の)ご理解をいただくのは難しい」(杉原町長)
生活に欠かせないリチウムイオン電池。
地域を揺るがす騒動となる前に、正しく捨てる“知識”と“意識”が、今、問われています。
