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1991年の誕生から35周年を迎えた、株式会社ワコール(本社:京都府京都市、代表取締役社長執行役員:川西啓介)のコンディショニングウェアブランド「CW-X(シーダブリュー・エックス)」。股関節やひざをサポートするスポーツタイツをはじめ、スポーツブラ、トップス、サポーター、ソックスなど、多彩なアイテムを展開しています。しかし、その目的はスポーツだけにとどまりません。目指しているのは、カラダを動かすすべての人のコンディションをととのえることです。
35周年という節目を迎えた今、「CW-X」はどのようにして生まれ、何を大切にしてきたのか。そして、これから何を目指していくのか──。「CW-X」ブランドマネージャーの池田晋平さんと、ワコール人間科学研究開発センターの山本智子さんに、その歩みと未来について聞きました。
スキー場での応急処置から生まれた、“着るテーピング”。
—— まずは、「CW-X」が35周年を迎えた気持ちを聞かせてください。
「CW-X」ブランドマネージャー・池田さん(以下、池田):まずは、長年支持してくださっているお客さま、そして開発・生産・販売に関わり、「CW-X」の歴史をつくってきた方々に心から感謝しています。ただ、35周年はゴールではなく、ひとつの節目。ブランドとしては、まだ35年です。次の35年に向けた新たなスタートだという気持ちです。
ワコール人間科学研究開発センター・山本さん(以下、山本):現在も私たちは、「CW-X」のサポートラインがカラダにどう働くかを機能評価していますが、実は基本となる原理はブランド誕生当初とほとんど変わっていません。素材が進化したり、縫い目をなくす技術が取り入れられたりといった変化はあっても、原理は35年前のまま。原型をつくった当時のパタンナーさんには、あらためて尊敬の念を抱いています。
—— 初代のスポーツタイツ[エキスパート モデル]が1991年に発売。どのような背景から誕生したのでしょうか。
池田:ワコール人間科学研究開発センターの研究がベースにあります。ワコールは、女性のカラダを「美しく見せる」ためだけでなく、より快適に、より健康にという視点で、カラダと衣服の関係を研究してきました。当時は日本に“ウェルネス(健康志向)”の考え方が広がりはじめた時期で、スキーブームの真っ只中。ワコール人間科学研究開発センターではアマチュアスポーツに着目し、スポーツ障害の調査を進めていました。
そんななか、研究員の家族がスキー中にケガをして、同行していた友人に応急処置としてテーピングをしてもらい、無事に下山できたという出来事がありました。その話を聞いた研究員が「テーピングにはカラダを支える機能がある。この機能を誰でも簡単に身につけられるウェアにできないだろうか」と考えたことが、「CW-X」の原点です。
—— 当時、ワコールにはスポーツウェア事業はなかったのですよね?
池田:ありませんでした。ですから「下着メーカーがスポーツウェアに進出した」のではなく、長年培ってきた“人のカラダを知り、カラダに合わせて衣服を設計する技術”を、スポーツという新しい領域に応用して生まれたブランドだと思っています。
—— そして、独自の「テーピング原理」を取り入れたスポーツタイツが誕生します。「CW-X」のテーピング原理とは、どのような考え方ですか。
池田:テーピングの“カラダを支える”という考え方を、ウェアのなかに組み込む発想です。筋肉や関節の位置、動き方を研究し、筋肉の流れにそって適切なテンションをかけたり、関節を安定させたりすることで、カラダの動きをサポートします。
大切なのは、“ただ強くしめつければいい”というわけではないこと。カラダの動きを妨げるのではなく、構造や動きに合わせて、必要なところを、必要な方向に、必要な分だけサポートする。現在のタイツも、股関節からふくらはぎ、足首まで、筋肉や関節のつながりを考えてテーピングラインが一連になっています。
—— そのテーピング原理を着るウェアにしたのですね。
池田:テーピングには専門的な知識や技術が必要で、運動のたびに貼り替える手間もかかります。そのテーピングのサポート機能を、“着るだけ”で手軽に取り入れられる。私たちは「ウェアラブルテーピング」と呼んでいますが、カラダを動かすすべての人が手軽に取り入れられることが、「CW-X」の価値です。
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1991年発売「CW-X」初代モデル
何度もフィッティングし、ミリ単位で修正する。下着メーカーだからできたものづくり。
—— テーピング原理を取り入れたウェアの開発はむずかしそうです。
山本:着用したときにテーピングラインが適切な位置にきて、必要な力がかかり、動いてもズレないことが必要です。そのためには素材とパターンが重要で、ブラジャーやガードルなどで緻密な設計を重ねてきたワコールの知見が生かされています。
ワコール人間科学研究開発センターでは、静止立位時のカラダの寸法や形状といったボディデータだけでなく、動いたときにカラダがどう変化するのかというデータも長年蓄積してきました。それをもとに、ひざまわりや太もも、ふくらはぎなど、それぞれの部位にきちんとフィットするよう設計しています。
—— ワコールは機能評価もきびしいですよね?
山本:ひざや腰への負担、筋肉疲労などを本当に軽減できているのか、客観的なデータと着用者の感覚の両面から細かく評価します。筋疲労軽減を確認するためには、実際に疲労するまで運動してもらわなければならないので、評価する側も被験者もなかなか大変なんです(笑)。
—— フィッティングも重視しているイメージです。
山本:ワコールには約1,000人の試着モニターがいて、年齢や体型など、さまざまな条件に合う方に試着していただけます。最初のサンプルができた段階から実際に着用してもらい、ひざの位置は合っているか、動いたときにズレないか、違和感はないかなどを確認します。
理論上では問題なくても、実際に着てもらうと違和感をもたれることもありますから、少しでも不快感やズレの指摘があればミリ単位で修正する。この繰り返しに、もっとも時間をかけます。
池田:私たちは愚直にフィッティングと修正を繰り返し、エビデンス(機能を裏づけるデータ)が取れたものだけを商品化しています。手間もコストもかかりますが、さまざまなお客さまに機能を体感していただける商品を追求する。それが「CW-X」の強みです。
—— その緻密な設計を製品にする縫製の技術も、「CW-X」のポイントですよね。
池田:カラダにフィットするだけでなく、テーピング原理による機能も発揮されなければいけません。設計した機能を実際のかたちにする重要な工程が「縫製」です。現在、「CW-X」の商品は「株式会社ワコールマニュファクチャリングジャパン」の長崎雲仙ファクトリーをはじめ、タイやベトナムの工場でも製造していますが、どの工場でもワコールグループ共通の厳しい品質基準に基づいてつくられています。
たとえば、サポートラインが腰から足首までつながっているスポーツタイツでは、一筆書きのように縫い進めなければならないうえに、生地のテンションや縫製位置のわずかなズレも許されません。こうした高度なものづくりの技術を生かし、2027年春夏パリ・ファッションウィークでは、世界的ファッションブランド「JUNYA WATANABE」とコラボレーションを行いました。
35年間、変わらないのは「人のカラダを知る」こと。
——35年間で、「CW-X」はどのように進化してきたのでしょうか。
山本:テーピングサポートラインの基本的な考え方は、35年前からあまり変わっていません。その一方で、素材や加工技術は大きく進化しています。軽量化や通気性の向上はもちろん、8方向に伸縮する高機能素材なども登場し、サポート機能と快適な着用感を両立するための選択肢が広がりました。
また、重ね合わせた2枚の生地の一部を熱処理で溶かし、必要なサポート部分だけを残す「VISCOMAGIC®(ビスコマジック)」(※)という加工技術によって、薄く軽い着用感を実現したタイツも生まれています。
※VISCOMAGIC®はセーレン株式会社の加工技術/商標です
池田:ラインアップも豊富になりました。1991年に女性用スポーツタイツからスタートし、翌年には男性用を発売。その後、腰のサポーターやスポーツブラ、機能性トップス、ソックス、腕や手首などのパーツサポーターへと広がってきました。現在はアウターやリカバリーウェアなども展開しています。
—— なぜ、ここまでアイテムを広げたのですか?
池田:「コンディショニングウェア」ブランドだからです。コンディショニングは、日常生活でもスポーツでも、あらゆるパフォーマンスの土台になるものです。たとえば、運動時のバストをサポートするスポーツブラが必要な人もいれば、競技や職業によって、ひざや腕だけをサポートしたい人もいます。より多くのお客さまに「CW-X」のテーピング原理を届けたいと考えた結果、アイテムが増えていきました。
—— スポーツブラも「CW-X」の大きな柱です。
山本:スポーツ時のバストは、日常生活とは異なる大きな動きをします。そうしたバストの動きを研究し、運動時のバストの「ユレ・ムレ・ズレ」に着目したスポーツブラを開発してきました。ワコールですから、“バストシルエットの美しさ”も追求しています。バストをつぶさず、自然なまるみをキープしながらユレをおさえる。下着メーカーだからできるノウハウです。
—— 思い出深いアイテムはありますか。
池田:[アームサポーター]です。「野球やテニスなど腕を酷使するスポーツはたくさんあるのに、腕のタイツのようなものがなぜないのだろう」という話をきっかけに、ワコール人間科学研究開発センターと開発を進めました。私自身がずっと野球をやっているので、自分でも着けて投げてテストしてみたんです。
また、スポーツタイツやブラと違って、アームサポーターは着用すると「CW-X」のロゴが見えます。多くの選手が着用してくださることで、ブランドを知っていただくきっかけにもなりました。
——「CW-X」は、イチローさんや大谷翔平選手、髙木美帆さんなどのトップアスリートにも着用されてきました。
池田:うれしいのは、「体感して選んでもらっている」ということ。とくにトップアスリートは実感がないと使っていただけません。選手から選手、先輩から後輩へ、実際に使った人が「これいいよ」とすすめてくれる。その積み重ねで支持を広げてきました。
山本:トップアスリートの方々は、自分のカラダの感覚をとても大事にされていて、商品が少し変わるとすぐに気づかれます。返ってくる感想も繊細で、身の引き締まる思いですし、その声が次の商品開発にもつながっています。
池田:ただ、「CW-X」は「カラダを動かすすべての人」が対象です。トップアスリートのように高いパフォーマンスを求める人も、趣味でスポーツを楽しむ人も、仕事や日常生活でカラダを動かす人も含まれています。
私たちがずっと大切にしてきたのは、まず「人のカラダを知る」ということ。そして、そこで生まれたアイテムをより多くの人に届けることなのです。
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コンディショニングを、もっと日常へ。
—— お話を聞いていると、「CW-X」は一般的なスポーツウェアとは少し立ち位置が違うように感じます。
池田:今まさに私たちが伝えていきたいところです。「CW-X」は市場で「コンプレッションウェア」というカテゴリーに入れられることが多く、お客さまも“ランニングのときにはくスポーツタイツ”というイメージが強いと思います。
しかし、「CW-X」は「コンディショニングウェア」です。実は「CW-X」というブランド名も、「Conditioning Wear」の頭文字である「CW」に、無限の可能性を意味する「X」を組み合わせたもの。コンディショニングウェアという考え方は、35年前の誕生時から変わっていません。
—— では、「CW-X」が考える「コンディショニング」とは何でしょうか?
池田:「その人が持つ能力を最大限発揮できる状態にととのえること」だと考えています。
スポーツで高いパフォーマンスを発揮するためには、カラダが良い状態であることが重要です。でも、それはアスリートだけの話ではありません。
仕事でも、重いものを運んだり、長時間立ち続けたり、立ったりしゃがんだりを繰り返したりと、カラダに負荷がかかる場面はたくさんあります。また、手首や腕を酷使する職種もあります。「CW-X」は今、こうした職業領域にも力を入れています。
山本:今年発売した[リストサポーター]は、パソコン作業や重いフライパンを持つ調理の仕事などで、負荷のかかる手首をサポートします。現場で使うことを考えると、上からゴム手袋や軍手を着けられることも重要なので、できるだけ薄く仕上げました。
「CW-X」の商品開発では、実際に使う人がどのような場面で着用するのか、細かなところまで考えることを大切にしています。
—— 毎日働く人のカラダをととのえるのも、「CW-X」の役割だということですね。
池田:そのためにも、カラダに負担がかかる仕事をしている方々の声をもっと聞きたいと思っています。たとえば、物流の現場で働く方が運転中にどこに負担を感じているのか。その声をもとに商品を開発すれば、物流の現場だけではなく、長時間車を運転する一般の方にも役立つかもしれません。
——これからに向けて、ブランドとしての挑戦ですね!
池田:コンディショニングウェアを展開するブランドとして、「コンディショニング」の重要性やメリットをもっとわかりやすく伝えていく必要があると思っています。実際、「CW-X」が考えるコンディショニングは、まだ十分に理解されていないと感じていますので。
そのために大切なのは、体感です。私たちは、一度着用していただければ「とてもいい」と感じてもらえる商品をつくっている自信があります。そして、「コンディショニングが足りていないかも」と思った人が「コンディショニング」と検索したときに、選ばれる一番のブランドになっていきたいですね。
山本:ワコール人間科学研究開発センターの研究員として、これからもフィッティングと機能性には妥協したくありません。着用した方の感覚でも、客観的な評価でも、きちんと効果が確認できるものをつくる。35年間受け継がれてきた確かなものづくりを、これからも守り続けていきます。
——「CW-X」にとって、35周年がゴールではなく、次のステージへのスタートだということがよくわかりました。とはいえ、ひとつの節目です。何かお祝いはしないのですか?
池田:35周年記念Tシャツを11月5日(木)に発売します。「CW-X」の歩みを象徴するモチーフを取り入れたデザインで、これまでブランドを支えていただいたみなさんへの感謝の気持ちを込めています。
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