“現世”と“死者の国”の境目として神話の舞台にもなっている松江市東出雲町の「黄泉比良坂」。
ここにある亡くなった人に宛てて手紙を出すことができる「天国へのポスト」をテーマにした絵本が出版されることになりました。
松江市東出雲町の黄泉比良坂。
“あの世”と“この世”の境目とされ、古事記や日本書紀に「国生みの神」イザナギノミコトが命を落とし、黄泉の国へ旅立った最愛の妻・イザナミノミコトと決別した場所として登場する神話の舞台です。
10月にこの地を訪れたのは、絵本作家の由美村嬉々さんです。
絵本作家・由美村嬉々さん:
この地を舞台に絵本を書きたいと思ったからです。
これまでに約20冊の絵本を出版してきた由美村さんが次の作品のテーマに選んだのが、ここ「黄泉比良坂」です。
絵本作家・由美村嬉々さん:
自分が思いを寄せた人に手紙を書くという行為が素晴らしくて、その思いが届きますようにと、一緒に祈りたい、そういう気持ちを絵本に書きたいと思っている。
亡くなった人に宛てた「天国への手紙」を差し出すポストにまつわる物語にスポットを当てます。
ポストは2017年、地元の人たちの手で設置され、差し出された手紙は毎年6月に焚き上げられ「あの世」へ届けられます。
3年前、全国放送のテレビ番組で紹介されると全国から大勢の人が訪れるようになり、2026年は約8000通の手紙が託されました。
由美村さんは。もともと全国紙の記者でした。
絵本作家になって手がけているのは「ノンフィクション絵本」。
実話をもとに取材を重ね、ストーリーを作ります。
2024年出版した「ぼくはぽんこつじはんき」。
主役は1970年代に製造されたうどん・そばの自動販売機。
半世紀がたった今も現役のレトロな自販機と、そんな自販機をこよなく愛する人たちにスポットを当てました。
絵本作家・由美村嬉々さん:
子どもたちのためだけじゃなくて、大人まで十分に理解できる絵と文と両方の効果があって、一つの本というのは芸術なので、その中でいろんな方の思いをきゅっと閉じ込めて、永遠に読み継がれていく、絵本を作っていきたい。
黄泉比良坂を訪れるのは2回目という由美村さん。
今回は4日間通いつめ、そこで出会った手紙の差し出し人から亡き人にあててしたためた思いを聞きました。
北海道から訪れた姉妹:
娘を亡くしているので手紙が出せるというので来ました。
ここにきて向こうがあの世だと思ったら、また娘をここに、置いていくのかなと思ったら…。
絵本作家・由美村嬉々さん:
違うと思いますよ。きっと気持ちは、届いていますよ。
この神話の舞台を守る、地域の人にも話を聞きました。
三島硅三さん(82):
お焚き上げをすることをお伝えすると皆さん喜んでお帰りになる。
三島さんは22年前にUターン、ボランティアでこの場所の清掃や管理を担ってきました。
天国への手紙を託すポストも三島さんが作りました。
差し出された手紙を「お焚き上げ」まで大切に預かっています。
三島硅三さん(82):
人間が生きていること、死も勉強になると思う、若い人に読んでもらいたい。
挿絵を担当するのは緒形麻耶さん。
事前に現場へ赴き、そこで感じた「色」を通じて神秘的な雰囲気を描き出します。
画家・緒形麻耶さん:
(手紙を)届けたい相手のことを考えて、優しい気持ちや感謝のエネルギーがこの場と共有してしみ込んでいる。泣けるような優しい場所だと思いました。イメージをちゃんと書けるように頑張ります。
現世と黄泉の国の境目、黄泉比良坂を訪ねて、由美村さんが感じたのは…。
絵本作家・由美村嬉々さん:
今回、命の尊さと自分の大切な人たちが亡くなっても天国からちゃんと見守ってくれているという、つながっていくもの・命の大切さ・生と死を表現したい。
由美村さんは取材をもとにストーリーを構成し、絵本は2027年の秋ごろ、出版されるということです。
