世界最大のトカゲ「コモドドラゴン」はインドネシアの国の動物「国獣」で、2026年10月、静岡県河津町の体感型動物園iZooが迎え入れた。11年越しの夢を実現させたiZooの白輪剛史園長の思いに迫る。
コモドドラゴンに行列 一般公開初日

2026年10月31日土曜日。静岡県河津町の「体感型動物園iZoo」では、オープン前から普段は見られない行列ができていた。来園客のお目当ては何か。聞いてみると口をそろえてこういった。「コモドドラゴンを見に来た」
絶滅危惧種で世界最大のトカゲ「コモドドラゴン」。この日は一般公開が始まる日だった。詰めかけたのは大勢の爬虫類ファン。飼育舎のガラスにかけられた黒い幕が外されると、来園客にお尻を向けたコモドドラゴンの姿があった。
来園客はその迫力ある姿にくぎ付けに。「迫力がすごい」「想像していたよりも大きい」と興奮気味に語った。交渉開始から11年、ようやく実った夢の実現に白輪剛史園長は、「子供たちがこんなに喜んでもらえるって思ってなかったので本当にうれしい」と喜びをあらわにした。ここまでの道のりは決して平たんなものではなかった。

動物園の運営に「無謀」「無理」初日の来園客はわずか7人
14年前、河津町で白輪園長が動物園を買い取り事業を始めた時のこと。動物園を運営したことがない白輪園長に対し、「無謀だ」「無理だ」という声があがった。

かつて河津町にあった「伊豆アンディランド」は、カメ専門の施設だった。カメたちのレースが名物で、およそ100種類が飼育・展示されていた。白輪園長は反対を押し切ってこの施設を買い取り、爬虫類専門の体感型動物園iZooとしてリニューアルオープンさせる。しかし、初日の来園客はわずか7人。厳しい現実を突きつけられた白輪園長は「どんでもない施設を手に入れてしまった」と思ったが、一方で自信はあったという。
白輪園長がiZooを開園させた目的は、さまざまな個性や魅力を伝えることだった。「ありのままの姿を見せる」展示では、来園客が動物を探すのに苦労することもある。一方で、動物との触れ合いも大切にしていて、爬虫類のイメージが変わる人もいた。爬虫類は気持ち悪かったり、怖かったりするイメージがある。しかし、触れ合いを通してそのかわいらしさにも気づくことがあるという。

白輪園長は爬虫類が多くの人に好かれる生き物ではないことを認めた上で、こう話した。「爬虫類が好かれない理由が何かというと、実際を知らないという部分が大きい。間近に爬虫類を感じてもらって、『自分は好きだな』とか、『自分はやっぱり苦手だな』っていうことをわかってほしい」
来園客数10万人20万人達成 世界初の繁殖成功も
iZooは開園から11カ月で来園客合計10万人を達成。その10カ月後には20万人を突破。いずれも園の想定を超えていた。
新しい動物の導入にも熱心に取り組み、希少な種の研究・繁殖にも力を尽くしてきた。2013年には、インドネシアに生息する 「ミミナシオオトカゲ」を世界で初めて一般公開。およそ1年後に、世界初の繁殖に成功した。

2019年には、インド洋の島に生息し、絶滅危惧種になっている「アルダブラゾウガメ」の自然ふ化にも、国内で初めて成功。生まれたばかりだったゾウガメたちは、7年経ったいま、体長30cmほどに成長している。

人気の観光スポットに 最寄り駅は「爬虫類と両生類の聖地駅」
現在iZooには、ヘビ、ワニ、カメ、それにカエルといった爬虫類・両生類を中心に150種類以上の動物が飼育・展示されている。開園から14年余り、伊豆南部の人気観光スポットとしてすっかり定着した。
観光客の玄関口となる伊豆急行の河津駅。こちらの副駅名は、2026年8月から「爬虫類と両生類の聖地駅」となった。

11年の交渉の末 念願のコモドドラゴン来園
そして、11年にわたって交渉を続けてきたのが、コモドドラゴンの来園だ。白輪園長はここ5年間くらいは、コモドドラゴンという単語をパソコンで打たない日はゼロだったという。必ず英語や日本語でコモドドラゴンという言葉を使って、毎日交渉を続けてきたのだ。しかし、来園客の笑顔だけがゴールではない。

爬虫類の伝道師
コモドドラゴンの導入は目標の1つだった。しかし、ここから先は、インドネシアとの約束で、コモドドラゴンを繁殖させなくてはいけない。白輪園長は「ここはまだ未知の部分」だと話す。ただこれまでの繁殖実績を考えて「できる」と思っているという。繁殖を成功させ、その子供を大きくさせる未来を見据えている。「爬虫類の魅力を多くの人に伝えたい」「希少な種の保存に貢献したい」と、爬虫類専門病院の開設や命を救うため、飼えなくなったペットの引き取り・飼育にも力を注いできた。その先頭に立つ園長は 「爬虫類の伝道師」と呼ばれるようになった。
「コモドドラゴンを見たい」全国から押し寄せた来園客

そして、2026年10月31日、iZooで世界最大のトカゲ、コモドドラゴンが一般に公開された。全国から爬虫類ファンが駆けつけ、オープン前から行列ができた。観覧が始まると飼育施設の前には来園客が押し寄せた。
インドネシアのスラバヤ動物園から繁殖を目的にやってきたのは、オスのアリルとメスのアイチャン。アリルは体長2メートル84センチ、アイチャンは2メートル37センチにのぼる。飼育舎は現地の環境をそっくりに再現していて、2頭はゆっくりと歩き回り、エサやりの時は迫力ある捕食を見せるなど、元気な姿を見せていた。

浦和から来た来園客は「始発に乗って来ました」と話した。エサを食べる様子を見た来園客は「丸のみにしている感じの迫力がすごかった」と興奮した様子。白輪園長はうれしさをにじませながら「繁殖を目指さなきゃいけないが、その歩みも来園客と一緒に分かち合いながら歩んで行ける」と語った。オスとメスの2頭は当面の間、別々のエリアで飼育される予定で、繁殖期を迎える2027年春頃には同じエリアで飼育して、2027年9月頃の産卵を目指す。

「爬虫類に終わりはない」

白輪園長は、「爬虫類がどんな生き物か知らしめていくのが自分の使命」と話す。「爬虫類の伝道師」と呼ばれることも誇りをもっているという。「爬虫類に終わりはない、1万種類いますから」と語った白輪園長の挑戦は続く。
(テレビ静岡)

