福島県川内村に移住したクラフトジンの作り手が、ジンを軸に地域をデザインする挑戦を続けている。原発事故で一時全村避難を余儀なくされた村で、レストランバーに続き、宿泊施設の開業も目指している。
この土地ならではのジンを
2026年9月、福島県川内村にレストランバー「oku(オク)」がオープンした。
この店を手掛けるのは、大学の同級生だった大島草太さんと高橋海斗さんだ。大島さんは「僕らが好きなモノの話をいつもしているというところで、この地域だったりを知ってもらえると良いのかなと思っています」と話す。
大島さんは2024年に蒸留所「natura distill」を開所。川内村に自生する「カヤの実」などを使用し、年間約1万リットルのクラフトジンを製造している。
ジン作りについて大島さんは、「人の想いと、あとはいかに植物の香りを僕らなりに一番良い状態で詰め込んで楽しんでもらえるか。そういう、究極のこの土地で僕らならではのジンが出来ていくのかなと思っています」と語る。
人口6割減の村で関わる人を増やす
川内村は原発事故により、一時、全村避難を余儀なくされた。村内で生活している人は現在、震災前の約6割にとどまっている。2011年3月11日時点で3038人だった人口は、2026年9月1日時点で1807人となった。30代以下は約2割と高齢化が顕著になっている。
大島さんは福島大学在学中にボランティアで村を訪れ、その豊かな自然と人の温かさに強く惹かれて移住を決めた。村に関わる人を増やしたいという思いから、同じく村に移り住んだ高橋さんと共に「食」を通じた挑戦を続けている。
手作りの空間に込めた思い
蒸留所の2階に2年かけて完成させたレストランバーは、そのほとんどが手作りだ。内装について大島さんは、「壁とか天井の黒いのが川内村で震災前に焼かれた『炭』を使って、練り込んでやっていまして。さりげなく自分達の思いを詰め込んで、この場所を今、作っているような感じですね」と明かした。
提供するのは主に福島県産の食材で、中でも川内村で育ったイワナはクラフトジンと合う一品だという。高橋さんは「上流のきれいな水で育っている『イワナ』なので、まずそもそもおいしいですし、お酒も、村のきれいな水で作っている分、澄んだ香りがしっかり出ていて、どちらも相性が良いのかなと思います」と話す。
週2日営業に込めた世界観
店の営業は金曜日と土曜日の週2日、事前予約制となっている。それは、伝えきれなかった思いを伝えるための時間でもある。
高橋さんはオープンへの思いを次のように語る。「ジンを飲むだけでは、お伝えしきれなかった僕たちの考えや世界観。そういったものをもう一歩、先に『奥』に進んでいただいて、感じとって貰えるようなものを表現したいなということでオープンさせました」
季節で変わる料理をクラフトジンが引き立てる。初めて川内村を訪れたという客は、「自然豊かな所だなと思った。今回、ジンをきっかけに伺えたので、ちょっと他の所も見てみようと思った」と話した。
大島さんは、「食を通しての『香りって面白い』『自然って面白い』みたいな。『福島は面白い』っていうところに広がっていくと良いのかなと思っています」と将来を見据える。
次の挑戦は「一棟貸し」の宿
福島の魅力をさらに広げるため、2人が今進めているのが新たな拠点づくりだ。大島さんは、「飲んで食べるのであれば、現地に泊まって、僕らが表現したい川内や福島を知ってもらいたい。いま新しくレストランバーの次に宿泊施設も準備をしている」と話す。
この“一棟貸し”の宿は2027年5月のオープンを目指している。
「ここの自然や土地が好きな人たちが集まって、例えばそこがきっかけでまた新しいお店ができたりとか、その方々のアイディアと共に新しいお酒ができたりとか。また新しい地域の魅力が生まれ続けことができたら良いなと思っています」と大島さんは語った。
クラフトジンを軸にした“新しいスタイル”が、今、川内村に築かれつつある。
(福島テレビ)

