台風が13年ぶりに1年間で30個以上発生した2026年。
中には東から西に進む“逆走”台風や、ぐるぐると“迷走”するものもあった。
度重なる豪雨災害など、異常気象の原因とされる現象「モンスーンジャイア」の世界初、連日観測から1カ月。解析の結果、その正体や、列島に大雨を引き起こしたメカニズムの一端も明らかになってきた。
「モンスーンジャイア」世界初の連日撮影
9月、台風24号が迫る直前、取材班は名古屋空港に向かった。

駐まっていた小型飛行機の下部には、細長い筒がついていた。

この特殊な飛行機で上空から観測を行うのが…。

気象庁気象研究所 台風・災害気象研究部 山口宗彦室長:
モンスーンジャイアというものが大雨の一つのキープレイヤーになっています。
連日モンスーンジャイアを飛行機で観測するというのはこれまで類がない。
豪雨の原因のひとつとされるモンスーンジャイア。
FNNは世界初となる上空からの連日観測に同行取材した。

この日、日本の近海には秋雨前線や台風24号が発生していた。
飛行機が向かったのは、秋雨前線の「内部」。前線の中に入ると機体は激しい揺れに包まれた。

記者:
ちょうど前線の上にいます。見渡す限り雲が続いています。かなり大きな前線ということがわかります。

そして、大気の気温や湿度、気圧などを計測できる「ドロップゾンデ」という特殊な機器を投下。機体下部の筒を通じて落下しながら観測データを送信する。

4分間隔で投下したのは約50個。
ドロップゾンデはトウモロコシを原料とした素材で作られていて、いずれは海で微生物によって分解されるため、環境に優しいものとなっている。

さらに飛行を続けると景色は一変。
上空は澄み渡り、飛行機の下には様々な雲が広がっていた。
そもそも、「モンスーンジャイア」とは、どういうものなのか。
山口宗彦室長:
少なくともモンスーンが南西風が入って、太平洋高気圧の北東風が入って低気圧性循環ができる。

モンスーンと呼ばれる南西からの季節風と太平洋高気圧に伴う北東から吹く風がぶつかると、大きな反時計回りの渦ができる。
こうしてできた直径数千キロに及ぶ巨大な低気圧の渦の正体が「モンスーンジャイア」だ。
このモンスーンジャイアの中では台風が発生しやすいという特徴がある。

その中で発見したのは台風24号。
本来、台風は自分で動くことができず、周りの風に流されながら動く。

しかし、台風24号はモンスーンジャイアの渦の中に閉じ込められる形になったため、モンスーンジャイアがもたらす風で沖縄・奄美周辺をウロウロと迷走することになったという。
さらに観測を続けていると、見えてきたのは悪天候をもたらす雲の数々。

記者:
モンスーンジャイアの中に発達した積乱雲があります。線状降水帯の可能性のある積乱雲が見えています。
一方、中心に向かうにつれ、空にも変化が…。

記者:
前には発達した積乱雲があるんですが、この辺りは何も雲も無い状態です。

山口宗彦室長:
ぽっかり空いたところというのはモンスーンジャイアの中という印象があるかな。
約4時間にわたって行われた今回の観測。

ひとつのモンスーンジャイアの中に、台風や線状降水帯などさまざまな雲が発生していたことがわかった。
豪雨もたらす「巨大な水蒸気の塊」
世界初のフライトから1カ月後。
初期の分析結果が出たということで茨城・つくば市にある気象庁気象研究所を訪ねた。
解析を担当した研究員のひとり、嶋田主任研究官はモンスーンジャイアの正体について…。

気象庁気象研究所 台風・災害気象研究部 嶋田宇大主任研究官:
第一印象は巨大な水蒸気の塊だったという印象を持っております。

その大きさは直径2500キロ以上、構造としては台風や熱帯低気圧と似ていたというモンスーンジャイア。
列島の大雨につながった仕組みも判明した。
嶋田宇大主任研究官:
(中心部は)晴れているにも関わらず湿度80%の“湿湿(しめしめ)状態”だったということですね。それが積乱雲として発達することなく、秋雨前線の方に流れ込んだという形です。

研究チームが解析した空気中に含まれる水蒸気の割合を表したデータによると、高度7キロ以下は真っ赤となっていて、湿度80%以上の“湿湿状態”。
また、普段、モンスーンジャイアが形成されるのはフィリピンの東の海上辺りが多いというが、今回発生したのは沖縄本島の周辺だった。

そのため、日本列島に湿った空気を送り込む、「大気の川」が生まれ、寒気とぶつかったことで大気の状態が不安定となり、千葉などに大雨をもたらしたという。
気象庁気象研究所 台風・災害気象研究部 山口宗彦室長:
こういった一個一個のピースを積み重ねていくことが将来の予測精度の改善につながっていくので、気象防災情報を高度化していくというところが我々が目指す道なんだと思っています。
モンスーンジャイアの研究は始まったばかり。
経験したことがない災害の連続から命を守るためにも最新の研究が急がれている。
(「イット!」10月26日放送より)

