「天下分け目の天王山」。
織田信長の仇を討つため立ち上がった羽柴(豊臣)秀吉と明智光秀の戦い。
その勝負を分けたこの地で…また、新たな“戦い”が起きています。
2022年に天王山の山頂にトイレを作ってほしいという住民ら1000人以上が200万円を寄付しましたが、4年経っても、まだトイレはできていません。
なぜ4年間も放置されたのでしょうか。
「天下分け目」の天王山で起きている争いを、ツイセキしました。
■ 「天王山にトイレを」住民ら1100人が200万円寄付
9月、京都府大山崎町の公民館に8人の町民が集まりました。「天王山にバイオトイレをつくる会」のメンバーです。
会の発足は6年前のことです。
町のシンボルである天王山にトイレを作ろうと、町民や登山客らに広く呼びかけた結果、1100人以上から200万円が集まりました。
そのお金を4年前に大山崎町へ寄付。町からは感謝状も贈られ、町長もトイレの設置を進める考えを示していました。
ところが、いまもなおトイレは設置されておらず、寄付金は宙に浮いたままです。
【天王山にバイオトイレをつくる会 鈴木工事務局長(72)】「1100人以上から集めた時点で、絶対にこれは作れると確信をもってやっていた」
■ 山頂にトイレがない 登山客の声
取材班は実際に天王山に登ることにしました。
標高270メートルの天王山は、京都府大山崎町に位置し、主な登山口は3カ所。それぞれに町が管理する公衆トイレが設けられています。
登山口には「この先トイレがありません」と書かれた看板があり、その先の登山道は階段がしっかりと整備されていて、歩きやすい印象です。登り始めておよそ30分で山頂に到着できます。
山頂では弁当を広げたり景色を楽しんだりする人の姿が見られました。ただし、山頂にトイレはありません。登山客に感想を聞くと、意見は分かれました。
【登山客】「あったほうがいいかなって思うけど、なくてもこれくらいの山だったら大丈夫かな」
【登山客】「あったほうがうれしい。おなか痛くなる人やから」
「なくても大丈夫」という声がある一方、「あれば安心」という声も聞かれました。
■ かつて山頂近くにトイレは2カ所あった
「トイレをつくる会」の鈴木工事務局長(72)に山頂付近を案内してもらいました。
重要文化財の神輿蔵などがある山頂近くには、かつて2カ所のトイレが存在していました。
【天王山にバイオトイレをつくる会 鈴木工事務局長(72)】「くみ取り式だったので、管理が大変でやめた。それからずっとなかったので、みんなが(トイレを)ほしいと言っていた。
トイレがなかったら、せっかく登っても、すぐ下りないといけない。”ゆっくり弁当食べて、お茶飲んで”ができない。それなら僕らで作ろうと」
■ バイオトイレとは
「つくる会」が設置を目指しているのは「バイオトイレ」と呼ばれる設備です。
便器の下にあるタンクで、バイオ菌とおがくずがし尿を分解する仕組みで、くみ取りは不要。半年に1回程度おがくずの交換が必要となります。
製造・販売を手がけるビー・エス・ケイの三谷彰則社長は次のように説明しました。
【ビー・エス・ケイ 三谷彰則社長】「おがくずでし尿を分解する。バイオ菌はし尿を食べてくれる。混ぜることで瞬時においを軽減できる」
三谷彰則社長によると「トンネル工事や山頂など、くみ取り業者が来にくい場所などに設置」しているいうことです。
ただし、処理できる量には限りがあり、利用は1日およそ40回まで。上限に達すると自動でロックされ、菌の働きが回復するまで使えない仕組みになっています。
■ 「トイレ設置」予算案が議会で否決 なぜ?
大山崎町の前川光町長は2024年、寄付額と同額の200万円のバイオトイレ設置費用を盛り込んだ予算案を議会に提出しました。
しかし、反対多数となり、最終的にバイオトイレの設置は予算から削除されました。
反対した議員の主張は…
【大山崎町議会 井上博明議長】「『設置するべきじゃない』とは言っていない。設置するためのコストがはっきりしていないのに、議会が精査せずに通すのはできない。初期投資の金額、維持費を議会に提示して審議しないといけないのに、今はそれができていない」
取材班が議会の議事録や役場への聞き取りで確認したところ、町長が議会に提示した予算案の中には、バイオトイレの稼働に必要な電気のケーブルを引く工事費用が含まれておらず、試算もされていなかったことが判明しました。
■「費用の規模感は分からない」
その点について、前川町長に直接聞いてみました。
【大山崎町 前川光町長】「実際“だいたい”ですね。素人ですけど、そんなに費用はかからないとは思っていますので」
電気工事代の試算をしていない理由を尋ねると、「金額少ないから。議会に通れば当然(試算を)出していくけど、少ない金額だと思っていますので」と回答しました。
役場は「工事のための下調べをしていないため、費用の規模感は分からない」としています。
■ 平行線をたどる両者の主張
井上議長は標高270メートルの山であれば「30分以内で登り、休憩して下りても1時間程度。本格的なハイカーは携帯トイレを持参するのが当たり前」と述べ、200万円の使い道として「JRの駅前にある老朽化したトイレの改修に充ててはどうか」との提言もありました。
これに対し、前川町長は反論します。
【大山崎町 前川光町長】「富士山に登る人なら、簡易トイレ持って上がるかもやけど、270メートルの山に簡易トイレ持っていく人は99%ないと思う。子供たちにとってもトイレがあるほうが環境にも教育にも絶対いい。反対のための反対としか聞こえないな」
寄付金の使途変更についても、町長は明確に否定しています。
【大山崎町 前川光町長】「その200万円を他に使ってもいいけど、実際は『これに使って』と寄付いただいているので、人として私はできません。目標達成は当然すべきだと思っているので、議会の了解を得られるように努力はしていきます。すぐに」
■ 宙に浮いたまま 「つくる会」の思い
4年間、解決の糸口が見えないまま時間だけが過ぎていきました。
「つくる会」のメンバーは、1100人から寄付を集めた責任を感じています。
【天王山にバイオトイレをつくる会 鈴木工事務局長(72)】「みなさんに申し訳ないという気持ちでいっぱい。なんとか作りたいな。会も解散せずに頑張ろうということで、会としては続いている状態なんです」
住民の思いが込められた200万円は、いまも宙に浮いたままです。決着はつくのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月6日放送)
