国内で消費されるオリーブオイルはほとんどが海外産ですが、鹿児島県日置市では地元のオリーブを使ったオリーブオイルの生産が進んでいます。
鹿児島との歴史を紐解きながら、県産オリーブの秘密に迫ります。
鹿児島市街地から車で約40分、日置市東市来町にある鹿児島オリーブ。
店内では、県産オリーブを使ったオリーブオイルが販売されています。
上片平健キャスター
「塩味と少しの甘みと果物のようなフルーティーな味わい」
このオリーブオイルに使われているオリーブは日置市の農園で栽培されています。
鹿児島オリーブが運営する、日置オリーブファームには2ヘクタールの敷地に約550本のオリーブの木が植えられています。
「こんにちは」
鹿児島オリーブの代表水流一水さんです。農園では、いま収穫の真っ最中。
紫色に熟す前に、若い緑の実を摘み取るのが鹿児島オリーブの特徴です。
私も収穫を体験させてもらいました。
上片平キャスター
「プチって簡単に取れますね」
鹿児島オリーブ・水流一水代表
「衝撃で近くの実が落ちやすいので、落としてしまうと使えなくなるので」
上片平キャスター
「落ちた実はだめなんですか」
水流さん
「はい、落ちた実は一切使わないので」
品質を保つため、収穫はすべて手摘みで行い、落ちた実は一切使いません。
丸く緑に色づき、1本の木にたくさん実ったオリーブ。
中には、50キロの実を収穫できる木もあるそうで、その木に案内してもらいました。
水流さん
「(スペインの)アルベキーナという品種。実がたくさん付きます。すごくフルーティーな香りが特徴。今年はこれだけ『ベタベタなる』って私たちは言いますけど。ベタベタなってくれたのでありがたい」
上片平キャスター
「たくさん付くことを『ベタベタなる』って言うんですね」
水流さん
「『ベタなり』とか笑」
そもそもなぜ鹿児島でオリーブの栽培が始まったのでしょうか。
実は、鹿児島のオリーブの歴史は今から120年ほど前まで遡ります。
日露戦争後の明治40年、日本は北方の海域に広大な漁場を手にしました。
これにより日本は多くの魚を獲ることが可能になり、その魚を保存する必要が出てきました。
そこで、当時の政府が目をつけたのがオリーブオイルに漬けて缶詰にする保存方法でした。
政府は気象条件や魚の水揚げ量などから香川、三重、そして鹿児島の三県をオリーブの栽培試験地に指定しましたが、実際に栽培が成功したのは香川の小豆島だけ。
収穫前に台風や長雨の影響を受けやすい鹿児島では、オリーブの栽培は難しかったのです。
そのオリーブが再び県内で脚光を浴びることになったのは2013年。
大手企業の工場撤退などで働き手の減少に頭を抱えた日置市は、鹿児島銀行と協定を結び、県内に競合農家のいない新たな産業を生み出そうと、オリーブの生産を始めました。
オリーブに必要な日照時間や温暖な気候はクリアしている鹿児島。
一方、かつてネックとなった台風と長雨を乗り越えるため、水流さんの試行錯誤は続きます。
水流さん
「鹿児島は水が豊富な分、雨も多く、春の長雨の時期に受粉で実を作るための準備の花粉が全部飛んでしまう。なので、それに対してもう少し花を早く咲かせる栽培手法を取り入れたり、私たちが独自でここで育てるなら『こうするべき』というのを作っていかないといけない。パイオニアにならないといけないということが分かってきたので、そこの難しさはある」
この取り組みで国内シェア8割以上を占める香川県より1カ月早い9月中旬に収穫が始まることから、日本一早い収穫をうたっています。
2026年は雨の影響も少なく、出来は上々だというオリーブ。
摘み取った後は、傷んでいる実を取り除く『選果』を行います。
そして『搾油』、鮮度を保つため、実の収穫から24時間以内に行い、熱による酸化を防ぐため、室内の空調は18℃に設定しています。
搾油率はわずか5%、1キロの実から50グラムしかオイルがとれない計算です。
こうして黄金色に透き通った、フレッシュなオリーブオイルが出来上がります。
9月に開かれた収穫祭では、作られたばかりの県産オリーブオイルが地域の人に振る舞われました。
参加者
「オイルではなく果物を飲んでいるような感じ。これからも頑張って飲もうと思う」
水流さん
「雨が多い鹿児島ではオリーブに入っている辛みやえぐみ成分が流れて、甘い香りだけが残りやすいという特徴も分かってきたので、鹿児島ならではの味を多くの方に知ってもらいたい」
挑戦と失敗を繰り返しながら栽培が進む県産オリーブ。
鹿児島の風土が生み出す唯一無二のオリーブオイルは、世界と日置をつなぐ架け橋となりそうです。
