夫の転職先候補に「嫁ブロック」その理由は…

妻が夫の転職に待ったをかける、いわゆる「嫁ブロック」という言葉をご存知だろうか。

既婚男性が妻からの反対で内定辞退や転職そのものを断念することを指し、もともとは企業側の採用活動に影響を与えることから、人材採用担当者や転職エージェントなどが使っていた業界用語とされていたが、近年は世間的にも認知される言葉となった。

今年は新型コロナウイルスの流行が長期化し、企業を取り巻く経営環境や雇用情勢が激変。自身のキャリアアップという理由だけでなく、会社の人員削減方針や業績不振による先行きへの不安などから、転職を検討し始めたという人もいるだろう。

こうした中、人材サービスを展開する「キャリアバンク株式会社」は8月、直近3年以内に夫が転職をした妻を対象に、転職が決まる前に知りたかった情報についてアンケート調査を実施した。回答(サンプル数:136)をもとに似た内容を持つ言葉をグループごとにまとめ、出現率を集計した結果、妻が一番知りたかったのは「年収」ではなかった。
回答理由とともに見てみる。

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妻が最も気になるポイントは「働きやすさ」

3位は「年収・手取り」(20.6%)

約5人に1人から挙がった。「月々の固定費(生活費・住宅ローンなど)や将来の出費に向けた貯蓄がしっかりできるのか」という点で気になるという意見が多くみられた。

・月収や手当て、ボーナスなどを含めた年収が転職前と後とでどう変わるかが気になります。我が家には子供がいますので、「子供をしっかり育てていけるか」「将来学費を払えるか」といった点が心配です。

2位は「仕事の忙しさ・残業の多さ」(23.5%)

理由としては「仕事が忙しくなることで家庭で過ごす時間が減ってしまうのではないか」「仕事が忙しくなることで強いストレスがかかってしまうのではないか」大まかに2つに分かれた。

・残業がどれくらいあるかがとても気になります。ある程度ワークライフバランスを大切にしてくれる会社じゃないと仕事で体力の限界がきてしまい、家族との時間もとれずに家族不和に繋がりかねないからです。

・激務かどうかが知りたいです。仕事の忙しさでメンタルがやられてしまい、働くことができなくなってしまうと困ってしまいます

1位は「人間関係・職場の雰囲気」(42.6%)。

「(夫)に気持ちよく働き続けてもらうには、人間関係がとても大事なので、職場の雰囲気が気になる」というコメントが多くみられた。

・パワハラやセクハラがない職場かどうかはとても気になります。いくら給料がよくても、結局職場での人間関係が原因で精神面をやられて仕事ができなくなってしまうと困るからです。

・私の夫はメンタルが弱いうえ、あまり自己主張もしないタイプなので、性格が合わない人が多い職場だとストレスをため込んでしまうと思います。なので、社風や職場の雰囲気がとても気になります。

生活に直結する「年収・手取り」よりも「人間関係・職場の雰囲気」が上回る結果になったのはなぜなのか?また、人間関係は実際に働いてみないとわからない部分があるが、事前に知るどんな手段があるのだろうか?
調査した「キャリアバンク」の平井伴弥代表にお話を伺った。

妻側は「家庭の充実度」を重視する(画像はイメージ)

妻側は「家庭の充実度」重視する傾向に

ーーアンケートでは収入面よりも働きやすさが重視されていたが、これはなぜ?

前提として、妻側は「家庭の充実度」を重視する方が多い傾向があるためだと考えられます。

夫の収入のみに頼らずとも、複数の収入源(ダブルインカム)をもつ共働き夫婦が年々増えていることもあり、家族を養う責任も分散されることから、収入面への不安は(専業主婦世帯などに比べると比較的)少ないようです。

夫が精神的に安定して働ける環境があることで、家庭円満にもつながると考えている方が多いようで、精神的に安定して働ける環境の大きな要素として、人間関係・職場の雰囲気を重視するのではないでしょうか。

ーー転職先候補となる会社の職場の雰囲気や人間関係を知るために、どのような方法がある?

求職者向けの企業の口コミサイトを確認すると、実際に勤めている社員や元社員による評価や感想などが見られ、企業風土や職場環境の変化など、ある程度の情報はうかがい知ることができます。

また、企業の人事担当者や転職エージェントなどに、直近で入社した人の経歴やどういう志望理由で入社する人が多いのかを聞くことで、そこで働く人のイメージがつかみやすくなります。

内定獲得後であれば、企業に会社見学や配属予定の社員との面談をお願いすると良いでしょう。依頼する際は自分が知りたい内容を事前に伝えることで、その内容に答えられる社員をアサインしていただきやすくなると思います。

ーーコロナ禍で転職の考え方に変化はある?

求職者視点でみると、企業選びの軸に変化がありました。まずは、働き方への関心が強くなった点です。

ITを活用して組織やビジネスモデルを変革する業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化やテレワークが広がり、リモートワークやフレックスで働ける環境を転職軸に入れる方が増えたと感じます。

次に、成長領域で事業展開する企業や、安定した経営基盤を持った企業への人気が高まりました。現在は(政府や自治体などから)企業への手厚い支援があるため、今年度上半期の倒産数は2000年以降でも最低水準ですが、コロナの長期化により、自社の経営の先行きに不安を感じ、雇用の安定を求める方が増えたためと考えています。

最後は、DX化の波を感じ、より自分自身の市場価値を意識する方が増えたと思います。これまでのアナログな業務が効率化されていくことで、自身の経験やスキルを見直す方が増加しました。

採用担当者視点でみると、オンライン面接が選考フローに加わる企業が増えたことで、いくつかの変化がみられました。具体的には、相互理解を深めるコミュニケーションや時間がより必要となった点と、これまで採用対象となっていなかったエリアや業種からの採用も見込めるようになった点です。

コロナの長期化でオンラインでの選考が定着しつつある今、従来の採用を見直す企業が増えていると感じます。

ーー既婚者がパートナーから転職を反対され、意見が対立した場合、どのように解決すべき?

相手が反対している本当の理由を理解しようとし、今回の仕事を変えることで家庭にどのようなメリット(デメリットも含め)があるかを、真摯に伝えることが大切です。そのうえで何よりも、事前に転職の目的や転職先となる条件を家族内で擦り合わせてから、活動を進められることをおすすめします。

 

コロナ禍でコミュニケーションや会話の機会が増えた夫婦も多い(画像はイメージ)

今回の調査から読み取れることは、夫には「ストレスの少ない環境で、長く働いてほしい」と考える、妻側の切実な意見が大半を占めていることだった。また、筆者の知人の夫婦共働きの女性に聞いたところ、そもそも「嫁ブロック」という言葉自体、否定的なニュアンスを感じると語っていた。

夫の立場からすると、せっかくの思いで見つけた会社なのに、妻にブロック(反対)されたと感じるかもしれないが、家庭への影響を考えると一人で決めていいことでもないはずだ。
コロナ禍でコミュニケーションや会話の機会が増えた夫婦も多いと思うが、時間をかけてお互いに納得のいく選択をしてほしい。

(執筆:近藤 啓文)