調査報道スポットライトの新たな取り組み「あなたの声で調査しました」。
誰か1人の投稿をもとに疑問や課題を調べます。
1日は、大学生の息子が医療ミスに遭ったという父親の訴えです。
2026年8月、群馬県の父親から大学生の息子があった「医療ミス」に関する情報が寄せられました。
なぜ医療ミスが起きたのか、防ぐことはできなかったのか。
父親はその答えを求めています。
医療現場で、いったい何があったのでしょうか。
取材班は9月、情報を寄せた父親に会いに現地へ向かいました。
父親によりますと2025年11月、当時大学3年生だった長男(22)は、肺炎で群馬県の「太田記念病院」に別の病院から搬送されました。
情報を寄せた父親:
11月29日が事故発生日で、それから生活ががらりと変わりまして…。
長男はICU(集中治療室)で、人工呼吸器による治療を受けていました。
しかし、入院した翌朝。
情報を寄せた父親:
電話がかかってきて、息子の「心臓が止まりました」と。「は?なんでなんで?」。医者からは説明があったんですが、そのとき「食道挿管になってしまいました」と。「おそらくもう低酸素脳症になっていると思います」ということを言われて、もうぼーっとしていて何が何だかわからない状態。
父親によりますと当時、長男は鎮静剤を変更され、体が動いたために気管に入っていた呼吸用のチューブが抜け、再び挿管が行われた際、誤って「食道」に挿管される「食道挿管」の状態になったと医師から伝えられたということです。
長男は心臓が30分にわたって停止し、10カ月たった現在も意識は戻らないままです。
「食道挿管」とはどういう状態を示すのか。
救急救命士の資格を持つ東京有明医療大学の北島泰子教授に聞きました。
東京有明医療大学 看護学科長 北島泰子教授:
気管の後ろに食道があるが、2つがほとんどくっついているので、(チューブ)を入れるときに間違えて食道に入ってしまう状況
誤って食道に挿管すると、何が起きるのでしょうか。
東京有明医療大学 看護学科長 北島泰子教授:
聴診器をあてようにも肺が全然膨らんでいなくて、食道に入っているので胃がどんどん膨らんでしまっている。だから胃のあたりに聴診器をあてると胃に空気が入る音が聞こえる。
こうした事態を防ぐため、気管内に正しく挿管できたかを確認することが求められます。
東京有明医療大学 看護学科長 北島泰子教授:
必ず聴診器で聞くのと、最後にレントゲンを撮る。今すすめられているCO2モニターというのがあり、そのモニターをつけて、呼吸に合わせてモニターが動く。CO2を拾ってくれれば(気管に)入っているだろうとガイドラインでは言われている。
しかし父親は、“今回の再挿管ではこうした確認が行われていない”と当初、医師から説明を受けたといいます。
父親:
「聴診器の確認」と「(チューブの)くもりの確認」をやっていなかったと。
実は、“食道挿管の医療ミス”は珍しいものではありません。
日本医療機能評価機構には、2010年以降、125件の事例が報告されていて、死亡につながったケースもありました。
父親が求めているのは“当時何が起きたのか”、その説明です。
父親:
「医療過誤です。今回はどうもすみませんでした」という口頭謝罪はあったのですが、“何が医療過誤なのか”というのは具体的に(病院側が)述べていません。文書提出は拒まれました。ICUの看護師に対して「患者家族に事故のことは言うな」というかん口令が敷かれている。
一方、私たちの取材に対し、病院側は「現在、院内、院外にて調査継続中のため、現時点での回答は控えさせていただきます」と文書で回答しました。
父親:
奇跡が起こって、自発呼吸が戻って、目がまばたきするようになっているとか願っているんですけど、なかなかまだ、そこまではないですね。
群馬県警は業務上過失傷害の疑いを視野に捜査しているとみられ、病院関係者から事情を聴いています。
スタジオには、取材をした調査報道統括部の弓削いく子記者です。
―― 患者さんご家族にとっては、医療に頼るしかないという中で、情報がないのは苦しいですよね。
調査報道統括部・弓削いく子記者:
そうですね。院内で何があったのかというのをまとめた調査報告書は、外部の委員が入るために、完成するまでに1年とか2年、かかるんですね。再発防止が目的ですから、時間をかけることも大事なんです。
ただ、何が起きたのか早く知りたいというのは、患者側としては当然の気持ちですよね。医療機関側のコミュニケーションが、今回足りていないのかなというふうに感じました。
