生成AIの発展により、本人の許可なく声を再現し、利用できる時代となった。新たな表現の可能性が広がる一方で、声優やアナウンサーなど「声」を職業とする人々の間では権利侵害への懸念が高まっている。「声の権利」はどう守られるべきなのか。最前線の現場から、その可能性と課題に迫った。
著名人の「声」使用 SNSに多数存在
「海の境目には絶対行くな」
これは、俳優で声優の津田健次郎さんの声をAIで生成した動画。「TikTok」で多数公開されており、津田さんの声質だけではなく、しゃべり方までよく似せている。

津田さんは去年11月、TikTokの運営会社に対し、「声の権利」が侵害されているとして、動画の削除を求める訴えを東京地裁に起こした。訴状によると、こうした動画は188本以上にのぼり、投稿者は月50万〜75万円の収益を上げたとしている。

そこで私たちがネット上を調べると、津田さんの他にも、声の権利などを侵している生成AI動画が数多く見つかった。
田中角栄元総理や松下幸之助さん、所ジョージさんなどのものとする名言の動画が大量に生成・公開されている中、目に付いたのが、100万回以上再生されている動画。
美輪明宏さんの声:
あなた夜中にふと目が覚めることはないかしら?あなたの奥底に眠る魂がね、どうしてもあなたに今伝えなければならないことがあって、必死に扉をノックしている状態なのよ。
今年亡くなった歌手・美輪明宏さんの顔とともに、過去の名言を紹介するような動画だ。美輪さんの事務所に確認したところ、偽物と判明した。

美輪さんの事務所:
懸念しているのは、生成された声であっても、本物の声だと信じてしまう人が少なくないことです。何より故人への冒涜だと感じます。
懸念抱える声優ら
AIによる声の無断利用に特に危機感を強めているのが声に魂を込めて仕事をしている声優たちだ。
取材に応じたのは、となりのトトロのメイちゃんや、デジモンのアグモンなどで知られる坂本千夏さんと、ちびまるこちゃんの友蔵おじいちゃん役などで知られる島田敏さん。

ドラゴンボールでブロリー役も務める島田さんは、動画に自分の声を無断で利用されていた。
島田敏さん・ドラゴンボールのブロリーにAdo歌わせてみた動画:
はぁ?うっせぇ うっせぇ うっせぇわ。あなたが思うより健康です。
動画を見た島田さんは、「脅威ですよね。言ってもいない言葉を作って、面白がってネットにあげてまして、それで、収益を図るなんていうのは、それはやっぱり違うでしょうと思うんですよね」と話した。

こうした無断利用が疑われるコンテンツの数は1000件以上とされる。
坂本千夏さん:
どんどん恐怖になってきますね。

