絵本「りんごかもしれない」。この作品を手がけたのは絵本作家ヨシタケシンスケさんです。いまヨシタケさんの原画などが並ぶ展覧会が仙台市内で開かれています。ヨシタケさんご本人に展覧会の見どころや作品に込めた思いを伺いました。
『そだてるとおおきないえになるのかもしれない』『なかはメカがぎっしりなのかもしれない』
ひとつのりんごの様々な可能性を見つめる絵本、「りんごかもしれない」。
この作品で2013年にデビューした絵本作家・ヨシタケシンスケさん。頭の中に広がる果てしない妄想やアイデア。クスッと笑える人のクセや仕草などを描き、子供から大人までが夢中になる作品を作り続けています。
そんなヨシタケさんの初の大規模展覧会、その名も『ヨシタケシンスケ展かもしれない』が、仙台市内で開かれています。今回、開幕に合わせて、ヨシタケさん本人に会場の見どころを案内して頂きました。
ヨシタケシンスケさん
「これは「理想の住まい」と描いてあって。カンガルーのポケットに入ってるんですけど、移動してくれるし暖かいしこれ理想的だなと思って」
会場には、絵本の原画や、造形作家として活動していた頃の作品。このほかヨシタケさんが常に持ち歩いている手帳に絵本作家になる前から描きためてきたスケッチの一部およそ2500枚などが展示されています。
ヨシタケシンスケさん
「描いておかなければ忘れてしまうくらいどうでもいいことを、見たり考えたりした時に、それが消えてしまうのがもったいないなというのがあって。すごく貧乏性なので、それを残しておきたい。そうやっている中で、絵本のネタになるというか、これ一冊の絵本だったら良いんじゃないかみたいな。ネタ帳みたいにも結果的になっていて、自分のものの考え方とか、普段どこを見ているのかというのも自分で分かるようになるので、やっていると面白い」
実は会場の中には、宮城に関する「ご当地スケッチ」も…。展覧会に合わせて初めて宮城を訪れたというヨシタケさんが描いたものは…残念ながらお見せできないのですが、ヒントをいただきました。
ヨシタケシンスケさん
「こっち(仙台)に着いて宮城の仙台の人たちがよく行く場所をひとつおすすめされて、そこに行ってからここ(会場)に来たが、そこがちょっと楽しすぎて。ここに到着が遅れてみんなから怒られたというのがあって。その怒られた顛末が書いてあります」
高橋咲良アナウンサー
「先生を夢中にさせた場所が…」
ヨシタケシンスケさん
「あるんです。どこでしょうか。答えは、会場でぜひ。」
開幕初日には多くの家族連れの姿が。ヨシタケさんの作品の世界に、子どもはもちろん、大人も夢中です。
来場者は
「まず絵に惹かれて、かわいいと思って読んでみたら、中身も大人が読んでも楽しい内容で、はまりました」
「子どもたち目線で描かれているかと思いきや、親にささるところがあるのが見てて面白いところ」
幅広い年代に支持されるその理由は…
ヨシタケシンスケさん
「絵本を作る時にひとつ大事にしているところとして、テーマを選ぶ時に、そのテーマは子供だけのものじゃないというか、子供にとっても大人にとっても、おじいちゃんおばあちゃんにとっても、人間という形の生き物にとってずっとついて回る問題かどうか」
例えば、この作品。『ころべばいいのに』。
「きらいな人や、いやなことで、頭がいっぱいになった時」「くつしたをまるめたり」「冷蔵庫のドレッシングをふったり」色々な行動や考え方で向き合いながら、試行錯誤するお話です。
ヨシタケシンスケさん
「あれはなんでできたかというと、僕自身が嫌いな人が4人ぐらいいるんです(笑)。どんな人だって嫌いな人はいるし、身も蓋もないことを面白おかしく考えることで、生きていくことがちょっと楽になるというか。こういうことを言ってもいいよな、こういう考えでもありだよなっていうひとつの選択肢を作りたいという思いはすごくありますね」
そして、大学生と中学生の2人のお子さんを育てるヨシタケさん。お子さんをモデルにした作品もあり、「家庭で起きたことをネタにしていくタイプ」と話します。
そんなヨシタケさんが次に描きたい作品を聞きました。
ヨシタケシンスケさん
「子供たちも独り立ちが目前に迫ってくる中で、自分自身の老いが最近のテーマになってきていて、人間年を取っていくっていうのは、子供にも同じだけ重さを持って必要なテーマでもあるわけですよね。成長する、年を取るという言い方もできますけれど、今後そういう意味では、自分の作る絵本はどんどん辛気臭い内容になっていくんだろうなという予感はあります」
ヨシタケさんが目指すのは「一生楽しめる」絵本です。
ヨシタケシンスケさん
「子供の頃は絵が好きで読んでいる。大人になってお話の本当の意味が分かるみたいな。そうやって人生の中で2回出会うことができる、なかなか珍しいメディアなんですね。だからそういう意味で、全部分かってしまうとつまらないというか、お子さんも興味を失ってしまうので、どこか謎が残るようなものを作れたらいいなと思っています」
ヨシタケさんの絵本は、世代を問わず抱くであろう疑問や悩みの解決へのヒントが、くすっと笑いもありながら散りばめられていて、何度も読み返したくなる魅力があると思いました。
そんなヨシタケさんの世界にひたれる展覧会、『ヨシタケシンスケ展かもしれない』は、JR仙台駅東口の近くにある、「東北福祉大学ギャラリーミニモリ」で11月8日まで開かれています。
