国の最も重要な統計調査とされる国勢調査で、富山市が人口を不正に水増し報告していた疑いがあるとして、総務省は29日、複数の富山市職員を統計法違反の疑いで富山県警に告発。水増しが疑われる人数は少なくとも2000人以上にのぼり、組織的な関与が疑われる深刻な事態となっている。なぜ水増しが疑われる事態となったのか——藤井裕久市長は「まったくわかりません」と繰り返した。

速報値と確定値で2936人の差

総務省が29日に発表した2025年国勢調査の確定値によると、富山市の人口は39万9197人だった。
ところが、今年5月に発表された速報値では40万2133人と、確定値より2936人多い数値が公表されていた。この大きな乖離に総務省が「報告数値に誤りがあるのではないか」と指摘。今月に入り、職員を3度にわたって富山市に派遣し、実態の調査を進めてきた。
その結果、総務省は29日、国勢調査に関わった複数の富山市職員を統計法違反の疑いで県警に告発した。
「居住実態なし」の世帯を存在するものとして処理

総務省によると、市の職員は国勢調査の調査員が「居住実態なし」と報告した世帯について、根拠なく存在するものとして扱い、富山市の人口を水増しした疑いがある。
水増しには複数の職員が関与し、その人数は少なくとも2000人以上に上るとされている。組織的に事務処理が行われた可能性もあり、個人の判断にとどまらない問題である可能性が高い。
総務省はこの事態について「国勢調査は国の最も基本的かつ重要な統計調査であり、不適切な処理が行われたことは大変残念」とコメントしている。

県警は29日付けで総務省からの告発状を受理。今後は立件を視野に捜査を進める方針で、捜査関係者は「事案の全容解明に向け、必要な捜査を進める」と話している。市の職員など関係者に対して、任意での事情聴取が行われるとみられる。
市長「残念なことだ」 全員協議会で陳謝

告発を受けた富山市では、すべての市議が出席する全員協議会が開かれ、藤井市長が陳謝した。
「誠に遺憾であり痛恨の極みであります。皆様方には申し訳なく心からお詫び申し上げます」
藤井市長はこのように述べたうえで、全容解明に向けて警察の捜査に全面協力していく方針を示した。
会議では一部の市議から、5年前の国勢調査でも水増しが行われていたのかを問う声も上がった。村上和久市議は「告発文によると5年前の国勢調査でも行われていたと書かれていたが、市は調査するのか」と追及した。

これに対し藤井市長は「警察の捜査が入ることになるのでそれに全面的に協力することで全容を解明してほしい。組織の問題であるので組織の見直し。厳しいがリーダーとして組織の立て直しを図っていきたい」と答えた。
なぜ不正が行われたのか、市長は「まったくわからない」

最大の疑問は、事実とすればなぜ人口を水増しして報告したのか、という点だ。
この問いに対し、藤井市長は「まったくわかりません」と繰り返した。動機や経緯については、現時点で市側からの説明は得られていない。

複数の職員が不正に関与した疑いについては「残念なことだ。事務処理を組織として指示したと疑われかねない。そのあたりも(捜査で)明らかにしてほしい。そのために全面協力する」と述べた。
組織的な指示があったのか、それとも一部の職員による判断だったのか——捜査の進展が注目される。
知事も「誠に遺憾」

告発を受け、新田知事は「調査結果に対する信頼はもとより、調査そのものに対する信頼を損なうと受け止めている。誠に遺憾」とコメントした。
国勢調査の結果は、国や自治体が行政施策を立案するうえでの基礎データとなる。人口の正確な把握は、予算配分や各種行政サービスの設計にも直結する重要な情報だ。富山市による不正が行われたとすれば、そうした統計への信頼そのものを揺るがすことになる。
(富山テレビ放送)

