国連総会での22日の演説で、高市早苗総理が国連憲章に今も残る「旧敵国条項」の削除を要求したのは、大変良かった。
だが残念ながら敵国条項の削除は困難だ。たとえ総会で削除を決めても、安全保障理事会の常任理事国である中国とロシアが現状では拒否権を行使する可能性が高いからだ。
ちなみに日本以外の「旧敵国」はドイツ、イタリア、ルーマニア、ハンガリー、ブルガリア、フィンランドとされる。
安保理の改革についてはこれまで外務官僚からさんざんレクを受けて耳にタコができていたのだが、高市総理の「安保理の現在の構図は1945年当時の国際情勢を反映したものであり、現代の国際社会を真に反映した構造へと変革することが急務」という言葉には、初めてなるほどと思った。
高市演説に対し中国外務省の報道官は会見で「(敵国条項は)現在もなお重要な現実的意義がある。中国は日本に対し、歴史を鑑とし、深く反省し、実際の行動によってアジア近隣諸国と国際社会の信頼を得るよう促す」と反論した。
東シナ海や南シナ海、台湾海峡周辺において軍事力を用いて力による現状変更の試みをあれだけ強めておいて「どの口が言うのか」と思うが、中国のこうした「宣伝戦」は決して揺らぐことはない。
中国が「敵国条項」を持ち出すようになったのは昨年の高市総理の台湾有事発言からで、在日中国大使館がX(旧ツイッター)に「(旧敵国が)侵略政策に向けた行動を取れば直接軍事行動を取る権利を有する」と投稿した。
毎年300億円以上を国連に払う日本
アメリカのドナルド・トランプ大統領が行った演説では国連の活動について「極左的な考えの押し付けをやめなければならない」と批判したが、トランプ政権でのアメリカの国連への分担金の未納は2000億円以上に上っている。
ちなみに日本は安保理の常任理事国でもなく、「敵国」呼ばわりされているのに年間367億円(アメリカ、中国に次いで3位)を言われた通り正直に払っている。これは正直を超えて、その上に2文字がつく「○○正直」というものではないだろうか。
ウクライナへの侵略をやめないロシアのラブロフ外相は国連演説で「日本は軍国主義の道を歩んでいる」として安保理の常任理事国入りに反対した。ロシアの分担金は日本の3分の1以下で100億円程度。
本当にこんな組織に我々は毎年300億円以上払って、居続ける必要があるのか。
演説で高市総理はトランプ政権が圧力を強めるICC(国際刑事裁判所)への「一貫した支持」を表明したが、アメリカが赤根智子所長を制裁対象に加えたことには触れなかった。
この問題は日米首脳会談でも取り上げられ「率直にやり取りを行った」ということだが詳細は明らかにされなかった。
アメリカの赤根氏への制裁について強く抗議しない高市首相に対し「弱腰」との批判が強いのだが一つ疑問がある。
ICCは、アメリカによるアフガニスタン派兵を戦争犯罪の疑いがあるとして捜査したが、中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害は訴えが出ているにもかかわらず、「制度上できない」として何も口を出さない。
これは、非加盟の中国国内が対象の話なので、内政干渉を防ぐための「やむを得ない制度」だということだが、アメリカにとってのアフガン派兵は911テロで本土を攻撃されたことに対する反撃であり、テロとの戦いという位置付けである。
それを犯罪呼ばわりされ中国の人権侵害を「制度上できない」と放置していることにトランプ氏が怒っていることは理解できる。
ICCの「制度」を変えることができないのか、そういう議論をするのが先で、ただ「弱腰」と騒いでも事態は進展しないのではないか。
日本も「分担金払わない」としてみては
日本が「○○正直」に国連や国際機関に金だけ出しておとなしくしてるのかというと、必ずしもそうではない。
2024年に国連の女子差別撤廃委員会が日本に対し「男系男子」による皇位継承を定める皇室典範の改正を勧告するというとんでもないことをやらかしたことがある。
この時、日本政府は「国家の基本に関わる事項であり委員会が取り上げるのは適当ではない」と反発して削除を要求したが、委員会が従わなかったので、委員会への拠出金の配分をやめ、訪日プログラムも中止させた。
ちなみにこれを行ったのは石破茂政権である。やればできるのだ。
高市総理は敵国条項の削除と安保理改革については「やらないなら分担金は払わない」などとアメリカ並みのおどしをかけた方がいいのではないか。同じ「敵国」扱いのドイツやイタリアなどと連携してはどうか。
こうした強硬論に対し「分担金を払わなかったりポストを諦めれば中国に取られてしまう」という反論があるわけだが、国連をはじめとしたこうした国際機関のあり方については今後日本でも不満の声が上がってくると思う。高市総理のリーダーシップに期待する。
【執筆:フジテレビ客員解説委員 平井文夫】

