44人の命が奪われた新宿・歌舞伎町火災からまもなく25年。多くの犠牲者が出た背景には、ビルの避難経路に問題があった。今回私たちは、この火災をきっかけに発足した専門部隊に独自密着し、25年経った歌舞伎町で、火災対策は取られているのか取材した。
歌舞伎町火災から25年 今も癒えない遺族の悲しみ
「ストレッチャー、ストレッチャー」

「道路の確保にご協力ください。救助作業の妨げとなっております」
国内有数の歓楽街、東京・歌舞伎町で発生したビル火災。

記者リポート(2001年9月1日):
続々と屋上から人が運び出されていますが、その生存については今のところ分かっていません。

消防車など100台以上が救助に当たったものの、44人の命が犠牲となった火災からまもなく25年。

娘2人を亡くした植田安子さん:
25年経とうが、どんな形であれ(娘たちに)生きていてほしかったというのは今でもある。
遺族が抱える癒えることのない深い傷。
あの日の悲劇を繰り返さないため、現在歌舞伎町で日夜行われているのが…。
査察隊:
ここも物ありますね、かなり。

歌舞伎町ビル火災を教訓とし、東京消防庁に発足した新宿消防署機動査察隊。今回FNNは、その活動の一部始終を単独取材。
査察隊:
避難経路の障害になるんですよ、あのゴミが。なので…
従業員:
今対応できないんで、後ほどでいいですか?
査察隊:
ちょっと我々も急いで(荷物を)どかしてもらわないといけないので、手を空けてもらえますか。

火災を未然に防ぐために奮闘する隊員たちの活動を取材した。
44人犠牲の未曽有の火災 避難経路を塞いだ障害物
2001年9月1日、防災の日の午前1時ごろ。

「やじ馬の人は向こう行って!ほら向こう行きなさい!」

目撃者(2001年9月1日):
ものすごい勢いで煙が出てたんで、たぶん爆発だと思うんですけど。周りの人もガスだとか爆発だとかずっと言ってたので。

消防隊員(2001年9月1日):
現在3階部分が火元ではないかとみて、今、消防で消火活動を実施中です。
(Q.取り残されている人は中にいますか?)まだ分からない。客が何人いたかはまだ分からない。

現場は飲食店や麻雀ゲーム店が入る、地下2階・地上4階建ての雑居ビル。

火災は3階のエレベーターホール付近で発生し、煙と熱が階段を伝って瞬く間に4階へと流れ込んでいった。当時消防団員として救助活動にあたり、今も新宿で活動を続ける上林俊雄さん(56)は、当時の状況をこう語る。

東京・新宿区消防団 第一分団・上林俊雄さん:
消防車と救急車が道をふさいでいまして、ここに救急車が何台も待機していまして、救急車も中に入れないので、地面にホースがクモの巣のように延びていました。

救助隊はビルの中にいた44人を搬送。しかし、全員の死亡が確認された。
警視庁は何者かが火を放った疑いがあるとみて捜査を続けているものの、今も未解決のままだ。
なぜ被害はこれほどまでに拡大したのだろうか。ビルの中で消防隊員たちの行く手を阻んだのが…。

東京・新宿区消防団 第一分団・上林俊雄さん:
消防隊が入れなかった。階段に店の従業員のロッカーだとか、もう階段が通れない状態で荷物が置いてあって。

立ち塞いでいたのは、避難経路に置かれた障害物だった。救助隊が突入したビルの階段には、衣装ケースや段ボールなどの荷物が積み重なり、激しい炎を上げていたという。

記者リポート(2001年9月1日):
こちらご覧ください。火災現場から出てきたと思われます、これロッカーでしょうか。黒く焼け焦げています。形も変形しています。
階段に置かれていたものが延焼を拡大させ、避難や救助活動に影響を及ぼしたとされている。
“悲劇を二度と起こさない”火災を教訓に「機動査察隊」
この火災の教訓から発足したのが、東京消防庁新宿消防署機動査察隊。悲劇を二度と起こさないよう、2019年に新設された部隊だ。

365日・24時間体制で、専門知識を持つ職員が歌舞伎町エリアの建物を訪ね、避難経路に問題がないかなど抜き打ちチェックを行っているという。
午後9時前。この日2人が訪れたのは、飲食店が軒を連ねる雑居ビル。
階段で目的の店へと向かうと、通路には…。
査察隊:
ここも物ありますね、かなり。

店の前には、段ボールやプラスチックのバケツなどが無造作に置かれていた。
査察隊:
こんにちは。
店員:
はい。
査察隊:
すみません、新宿消防署なんですけど。

査察隊が注意すると、指示に従い、外に置いてあった荷物を店内へと運び入れた。しかし、すべての店が査察隊の指示に素直に応じるわけではなかった。別の店舗では…。
査察隊:
ゴミがありますね。

幅の狭い階段にはゴミが放置されていて、避難の妨げになるだけでなく、放火のリスクにもつながる。

査察隊:
すみません、新宿消防署なんですけど。1階にゴミ出されてるのってこちらのテナントですか?階段のところにゴミ置かれてないですか?
従業員:
営業後にお願いしていいですか?20時で。

査察隊:
いや、我々も、あの避難経路の障害になるんですよ、あのゴミが。なので…。
従業員:
今対応できないんで、後ほどでいいですか?

査察隊:
ちょっと我々も急いでどかしてもらわないといけないので、手を空けてもらえますか。

新宿消防署 機動査察隊・大堀寛泰消防司令補:
(店側は)片付けるのは猶予をくださいという感じではあります。ただうちとしてはダメですと言うだけです。
いつ起こるか分からない火災に備え、リスクとなる場所を見つければ、その場で改善を求める。

新宿消防署 機動査察隊・大堀寛泰消防司令補:
(歌舞伎町ビル)あの火災がなければ、私たちも今こうやって機動査察隊という形でいることもない。こういった形で私たちが指導していくことで、同じような火災が起こらないのであれば、引き続き継続して、強く指導していきたいなと思っています。
安全な避難経路が命を守る。その思いは遺族も同じだ。
火災で2人の娘を失った植田安子さん。

娘2人を亡くした植田安子さん:
事故の後にビルの中を案内してもらったのね。階段の途中まで来た時にね、色んな物が置いてあったらまず(逃げるのは)無理だなというのは感じたの。人の命よりも利益を優先しているようなところが、私から言わせれば歌舞伎町には多いと思うの。だけど人がいてこその利益でしょ。人の命ほど大切なものはないと思っている。
(「イット!」8月27日放送より)

