業界の最前線や世界に挑む企業や人にスポットを当てる「山陰のリーダーズ」。
今回は、全国の高齢者施設の「食」を支える松江市の企業。
ニッチな業界でトップランナーを目指すユニーク経営ビジョンに迫ります。
入所者:
いつもおいしい。感謝、感謝。
高齢者に「食」で笑顔を。
新入社員・石黒さん:
40歳、新入社員です。
働く人材も多彩です。
モルツウェル・野津積社長:
誰も排除しない考え方。まずは受け入れる。日本一を目指していく。
壮大なビジョンを支えるのは独自の組織論です。
松江市のサービス付き高齢者向け住宅。
入所者にとって楽しみなのが毎日の食事です。
入所者:
「全部いいですわ」
「味付けが濃ゆくなくて、体にも良い」
約60人分を用意する調理場のスタッフはわずか2人。
ここではご飯とみそ汁だけを調理、配送された調理済みの主菜や副菜を盛り付けていきます。
この食事を届けているのが、松江市の「モルツウェル」です。
モルツウェル 厨房推進室・橋本真一課長:
『真空調理』という製法で製造しているので、安全性は抜群。
下ごしらえした食材と調味料を袋に入れ、真空状態にして加熱する「真空調理」は加熱後、食材に人の手が触れることがなく、食中毒のリスクを限りなくゼロにできるといいます。
また、「冷蔵」されて届くため、施設での調理は不要。
解凍の手間もありません。
福祉や介護の現場でも深刻な人手不足が続く中、このサービスを導入する施設は全国で約450か所に上ります。
モルツウェル・野津積社長:
ここは工場の建設予定地。第2工場で4万食、第3工場で3万食をイメージしている。
民間の調査によると、高齢者施設や病院、在宅向けをあわせた配食サービスの市場規模は2024年度、2兆4096億円で、今後さらに拡大する見通しです。
現在、1日約3万食を提供するモルツウェルはこれを追い風に、松江市に工場を増設。
2027年春以降、生産能力を3倍以上に引き上げる計画です。
約150人の従業員を率いる野津積さん。
今期の売上は前年に比べ約15%増の28億円を見込んでいます。
これを2年後には50億円超え、6年後には100億円超えまで引き上げる目標を掲げています。
野津さんは現在59歳、1996年、松江市で起業。
持ち帰り弁当チェーンのオーナーとして店を開きました。
今では当たり前となった弁当の宅配サービスを独自に始めるなど、創業2年目で月商1300万円を達成、そのチェーンで「売上日本一」にも輝きました。
しかし、その後、売上は徐々に低迷、巻き返しをはかろうと2004年に始めたのが
現在のサービスの前身となる高齢者向けの宅配弁当サービス。
シニア世代の需要に目を付けました。
世の中でまだ馴染みがないサービス、
創業当初は資金繰りにも苦労したといいます。
モルツウェル・野津積社長:
4年連続、債務超過。子どもの貯金通帳も崩した。『これは無理だな』とどの枝で首を吊ろうかと本気で考えた。
そんな苦しい時期を経験して、野津さんが今も大切にしているのが…。
モルツウェル・野津積社長:
商売は難しい、神頼みは大事ということです。
その後、願いが通じたのか、高齢者向けの配食サービスは時代を先取りする形に。
ニーズを的確に捉えたことで、現在のサービスへ進化させることができました。
野津さんが描く成長戦略を支えるのが、多様な人材です。
障害者の積極的な雇用に取り組むほか、様々な「異業種」経験者も迎えています。
Q.前職は?
施設の厨房を担当する64歳女性社員:
「医療事務です」
「5年です。やりがいがある、楽しい」
さらに…。
新入社員・石黒秀朗さん:
埼玉県川越市から移住してきた石黒秀朗といいます。
この春、入社したのは「40歳の新卒社員」。
埼玉県出身の石黒秀朗さん。
12年浪人して入った大学で留年と休学を重ねた後、東京の就職イベントで野津さんと偶然出会い、「新卒」として採用されました。
人材確保のため、就活イベントにも積極的に足を運ぶという野津さんには、大切にしている”組織論”がありました。
モルツウェル・野津積社長:
黒子になるということ、リーダーシップをとっていくのはすてきなことだけど、僕はどちらかというと自立型組織。自分で決めたことは愚痴が言えない、失敗してもこう変えて頑張るという気持ちになる。
目指すのは、社員が自ら考え、動く”自律型組織”。
その先に、社会も社員も幸せな世界があると信じています。
モルツウェル・野津積社長:
365日見えないところでずっと支え続けるというか、何気ない幸せな生活を支えるのがとても素敵に思えるし、僕たちもそれを意識しながら今の事業を組み立てていることは間違いない。
野津さんは足元をしっかり見つめながら、業界のトップを目指し、走りつづけます。
