蔵内議長への辞職勧告決議案を緊急動議で採決中止とした自民党福岡県議団。密室で何が起きていたのか?会派で唯一、「動議!」に反対した県議が舞台裏を暴露した。
「動議!」の裏では異例の党議拘束
8月17日、福岡県議会臨時議会。正・副議長のポストを巡る“金銭授受疑惑”を告発した吉松源昭県議(58)が、「県議会のトップである議長がとった行動の数々は、その職責に相応しいと到底、言えるものではありません」と蔵内勇夫議長(72)の議長辞職勧告決議案についての提案理由を述べた。

予想外の展開となったのは、この直後だった。
「動議!動議!」議場に響き渡った動議の声。声を発したのは、蔵内議長の元秘書で、蔵内氏を政治の師と仰ぐ林泰輔県議(51)だった。

議場では、辞職勧告決議案そのものを“潰す”ことが、起立多数で決まり、蔵内議長の議員辞職勧告決議案は、採決中止で不発に終わった。

この緊急動議を機に辞職勧告案そのものを潰してしまうという方針は、どのように決まったのか?

実は、当日、議会開会時間が予定よりも数時間遅れて行われたのだが、その間、自民党県議団は、『緊急動議』の採決に賛成するよう義務付ける『党議拘束』をかけていたのだ。
自民の告発県議が舞台裏を証言
「今までかけたことないのに『党議拘束』とか。今まで1回もないのに」と話すのは、江藤秀之県議(66)。「24年間、(自民党県議団に)おるけど…」と驚きを隠さない。

自民会派の中で唯一、動議に反対した江藤県議は、自らが副議長に就任する際に500万円を幹部に支払ったことを証言している告発者の1人だ。

自民会派では当初、当選2回の若手県議が、臨時議会で辞職勧告に賛成する討論を行う意思を表明していたが、江藤県議によると、若手を中心に10人以上の『賛成者』がいたという。

「(若手県議が)賛成討論するっていうのが分かった時は、『やるな』と思った。例えば1期の半分、2期が全部とか、3期の一部とか、まぁ4期もいた。10人…下手したら14、15人以上いた感覚はあった」と江藤県議は振り返る。

流れ変えた『議長職辞任』明言
福岡県議会で自民党県議団は、過半数を割っている。仮に15人ほどが辞職勧告決議案に賛成した場合、可決される見通しが高まる。

この時、“若手”県議からは、「蔵内議長本人の口から進退を聞きたい」という要望が上っていて、幹部は蔵内議長を説得。臨時議会の直前に開いた、この日3回目の会派総会で、蔵内議長が初めて、議長職の辞任を明言したという。

「蔵内さんは、政治倫理条例案を通すこと。そして、第三者委員会を立ち上げて機能すること。これがあれば、『私はしかるべき時に退任致します』と言われた」と話す江藤県議。

蔵内議長から会派議員への“お詫び”の言葉などはなかった。
その後、1期生が表明していた緊急動議について『党議拘束』を求められたという。臨時議会開会まで10分を切っていた。

「動議は可決されました!」議場に板橋聡副議長の声が響いた。

動議に賛成したのは、自民党の県議のほか、民主県政県議団の議員も半数(20人中10人)が賛成に回っていた。
『隠し子がいる』例え話…いいの?
臨時議会後に開かれた、この日4回目となる自民会派の総会には、40人近い県議たちが集まった。その中で“騒動を起こした張本人”江藤県議に対し、渦中の県議から露骨に詰め寄られる場面があったという。「松尾統章さんが手を挙げられて、録音していた『音声』を『なんで公表したんかな?』と」。

江藤県議は8月5日、当時県議団の会長だった松尾県議からの電話(7月29日)について、「圧力を感じた」と音声を公開していた。

「公表したことが、なぜかと言うと『説明するより公表した方が分かりやすいから』とはっきり言いました、俺も」と江藤県議。

更に「『言いっ放しで言った者勝ちなのか?』ということは言っていた」。

更に「例えばの話だけど、(江藤県議には)『隠し子がいる』。そんなこともバラしていいの?』」と松尾県議から事実無根の“例え話”をされて責め立てられたとも話す。

江藤県議は、「いや、大丈夫です。言ってください。私、(隠し子など)いませんから」と言い返したというが、「(私は)告発者やから…。それをして何になる?“見せしめ”みたいな話だけであって…」とその場のやりとりを思い返して憤る。
この場面について、松尾県議は、「僕は、今回のようなやりとりが、その都度、公になるような状況では、率直な意見交換が難しくなるのではといった思いを伝えたつもり。別につるし上げるつもりも全くなかった」と話した。

松尾県議は、今回のやりとりに対する江藤県議の受け止めを知り、電話で謝罪したという。
自民党県議団分裂し第二会派も…
臨時議会をめぐり、密室で繰り広げられた蔵内議長の辞任表明や緊急動議への党議拘束。そして、吊るし上げともとられかねない松尾県議と江藤県議とのやりとり。江藤県議によると、会派内では今、「『自民党県議団は嫌だ』という県議も出てきている」という。一連の“密室”政治に嫌気がさしている県議も少なくないと思われる。

かつての伸び伸びした良さが失われた今の自民党県議団は、今後、分裂もありえると江藤県議は示唆した。

「第二会派っていうやつね。昔、自民党県議団と自民党議員会ってあったが、そんな感じをもつ人達もいるかもしれない」。
(テレビ西日本)

